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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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6

「始め!」


宮司から開始の号令がかけられた。


勘助は伊与の姿を脳裏にはっきりと思い浮かべた。笑っている姿だ。


すると、刀の冷たい鉄が血潮の温みに変わり、一体化したような感覚になる。まるで腕が延びたようである。


勘助は神刀に深紅の炎を纏わせた。それは口内で唾液の分泌を制御するように自由自在である。


見物人の反応はそれぞれだ。

女性や子供などの戦の経験があまりなさそうに見える者は喜び、武士達は顔を強張らせていた。刀に手をかけている者もいた。


彼らはわかっているのだろう。この炎の戦場での脅威が。刀や槍などにより近接で戦うことが多い時代において、この炎は全てを焼き付くす。


見物人に当たってしまうため、炎の斬撃は飛ばせない。見物人に死傷者が出てしまったら、仕合に勝ったとしても、勘助が亀山家に受け入れられることはないだろう。


「うおおおおおお!」


正吉は勘助に迫りくる。炎に怯む様子はまるでない。


正吉は刀を振り下ろした。


勘助は神刀で斬り結ぶ。


鍔の迫り合いになった。


伊与の姿を思い浮かべて、炎の出力を上げる。


会場にどよめきが起きる。


これは見せかけの炎だ。正吉にはできるだけ当たらないように制御している。


正吉は鍔の競り合いを止めて下がった。


それ幸いと、勘助は更に炎の出力を上げた。正吉や見物人に当たらないように天高く燃やす。まるで神刀が延長しているように見えるだろう。


見物人達から悲鳴が上がるのがわかった。


正吉は想い人の前のため、何があろうと絶対に降参しないだろう。


勘助は駒姫に目配せをする。


これ以上、続行してもいいのか。このままだと正吉がどうなるか、わからないぞ。そのような思いを込めた。


「そこまで!」


意図を組んでくれたのか、駒姫は立ち上がり、よく通る声で制止した。


「神刀勘助、貴方の力はよく理解できました。正吉もこのような強大な力の前で怯まずによく戦ってくれました。私は貴方が護衛で誇らしいです」


勘助の力を認め、正吉の自尊心も傷つけない形で収めた。


見物人からは拍手が起きる。


「正吉、あんたは凄いよ!」


「見事な仕合だった!」


正吉は息を大きく吐いた。


「正吉、大丈夫!?」


駒姫は正吉に駆け寄ってきた。


侍女も慌ててついてくる。


「姫様、このくらいかすり傷です!」


正吉の腕は火傷を負っていた。手加減したとはいえ、炎に近づいたのだ。それだけ炎は恐ろしい。


「今、治すわね」


駒姫は正吉の患部に手をかざした。掌から蛍のように優しく淡い光が放たれる。すると、みるみるうちに患部が治っていく。


「はい、治ったわよ」


「おー、ありがとうございます!」


正吉は腕を回転させながら観察し、感嘆した。その様子は少し前まで火傷していたなんて、思えなかった。


勘助は治癒者の力を見るのはこれが初めてだった。なんと優しく穏やかな光なんだろうか。


しかし、いくら心暖まるような光といえど、触れられたら、神刀は無力化されてしまう。それは何としても避けなければならない。


勘助は二人から少し離れた。


駒姫は治癒の力に相応しい優しさも持ち合わせているようだった。


だが、あまり肩入れしてはいけない。勘助は駒姫を拐う任務を請け負っているのだから。


「勘助、お前は凄い。疑って悪かったな。これから、一緒に姫様を守っていこう」


正吉は勘助がとった距離を詰めて、笑顔で手を差し出した。


勘助は遠慮がちにその手を握り返した。


見物人からの拍手も鳴り響いた。


「ええ、これからよろしくね」


駒姫の顔に柔らかな笑みが咲いた。


これは任務だから、あまり肩入れしすぎてはいけない。勘助はそう心で言い聞かせた。

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