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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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6/13

5

「亀山兼経様。初めまして、神刀勘助でございます。駒姫様をお守りすること、誠に光栄と思っております」


勘助は月川城の大広間の下段で平伏していた。駒姫護衛着任の謁見をするために正装の直垂を着ている。


「表を上げよ」


上段の兼経の許しを得たため、勘助は着座した。


兼経が視界に入る。太く短い髷は寸分の乱れもなかった。


兼経の後ろの屏風の虎は眼光鋭く、勘助を睨んでいた。


それよりも圧を感じるのは勘助の背後の亀山家家臣達である。明らかに歓迎されていない。居心地が悪かった。


案の定、背後で誰かが立ち上がる気配がした。


勘助は応戦するために神刀の柄に手を掛け、後ろを振り向いた。だが、敵意はあっても、殺意はなかったため、神刀を抜きはしなかった。


「やはり、私は納得がいきません! 余所者にこのような重要なことを任せるのは!」


正吉は勢いよく立ち上がり、兼経に向かって言った。


周囲の家臣は正吉に視線を向けるが、止めようというつもりはないみたいである。


「神刀勘助! 表へ出ろ、仕合だ! お前の刀を俺が見定めてやる!」


周囲の家臣からも異論は出ないようである。


「殿、よろしいのですか?」


小姓が小声で兼経に聞いた。


「それで家臣達が納得するなら、良いのではないのか」


兼経は髭を伸ばしたり整えたりしながら答えた。


「神刀殿もそれで良いだろうか?」


「はい、私も問題ありません」


勘助は了承した。

家中で力が認められるのなら、任務がやりやすくなるからである。


「よし、逃げなかったことは褒めてやる。行くぞ」


正吉は襖を力強く開けた。そのまま大股で大広間を出ていく。


他の家臣達もそれに続く。


勘助はどこに行けばいいか、よくわからなかったが、とりあえず人の流れに乗った。


廊下を歩くと、女中達が何事かと目を見張る。ひそひそと会話する。その数は歩く度に増えていっているような気がした。


一行は中庭へと到着した。


中庭は四角形の砂地になっていて、仕合をするには申し分ない場所だった。


自らの刀を使用しての試合だという。


見物人も城内から集まってきていた。内庭に入りきらずに縦連子窓から覗く者もいるほどの大盛況だった。これを見るために急いで掃除を終わらせてきたと話している女中もいる。女中の情報網、畏るべし。


家臣達はぎゅうぎゅう詰めだが、兼経は中庭内に作られた見物席に座っていた。


隣には空席がある。


勘助と正吉は中庭で見合った。


観客も今か今かと始まるのを待ち望んでいるのが伝わってくる。


宮司が仕合開始の号令をかけようとした時、遠くからでも聞こえる賑やかな声がしてきた。


「姫様、危のうございます!」


「大丈夫、離れて見るもの」


勘助が何者かと声の方を向いた時には家臣達は声のする方に跪いていた。正吉も同様だ。


その女性は艶のある長い黒髪をしていた。あれほどの長さの髪を手入れできるのは裕福な女性の証明である。


女性は勘助の近くまでやってくると、人好きするような笑顔を見せた。


「貴方が私を新しく護衛してくれる御方かしら。名前は何ておっしゃるの?」


「……神刀勘助と申します」


「これからよろしくね、勘助!」


「姫様、まだ決まったわけではありません! 私が腕を見極めてからです」


「そうだったわね。正吉、頑張ってね! 勘助も応援しているわよ!」


勘助はまさか自分も応援してくれるとはと驚いた。おかげで正吉からの鋭い視線が突き刺さる。


「駒、お前の席はここだぞ」


兼経は苦笑しながら隣の席を指差した。


「あら、知っていますわ。ですが、父上、まずは新しく護衛してくれる方に挨拶しなければなりませんわ」


「本当にお転婆だな……だが、そろそろ仕合だ。邪魔にならないようにこちらへ座れ」


「はい、わかりました」


駒姫は足早に見物席へと向かった。その際に黒髪が靡き、甘い香の香りが漂った。


駒姫が着席し、宮司が再び始まりの号令をかけようとする。


仕合が始まろうとしていた。


正吉は周囲に悟られないよう、駒姫に熱視線を送っていた。


勘助はそれを見て、何故正吉が仕合を申し込んだのかを理解した。見ず知らずの奴に想い人の命を任せたくないのだろう。それなら、どのような仕合展開をするかは明確だ。


駒姫の前で正吉に恥をかかせることなく、亀山家に認めてもらうために圧倒的な力を見せつける。

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