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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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3

「神刀の一族が我らに与してくれるとは。まさに百人力とはこのことだ」


金鶴城の城主の犬井義信は金の扇子で顔を扇いだ。

金箔を押した障子の松が聳え立っている。


「亀山家の駒姫を金鶴城まで連れてきて、心臓を捧げさせることに全力を尽くす所存にございます」


神刀の一族の現当主、神刀一郎は頭を下げた。髷ではなく、ただ括られた黒髪が義信の視界に入る。

義信は扇子で口元を隠した。


「良き心掛けだ。前金も受け取れ」


部屋の隅で控えていた小姓が懐から風呂敷を取り出した。風呂敷をほどくと、そこには大判があった。小姓は躊躇することもなく、一郎に大判を渡した。


一郎はそれを仰々しく受け取った。


「有り難き幸せ。必ずや、達成してみせます」


一郎は大判を懐にしまった。


その時に襖が開く。


「殿、お呼びでしょうか?」


多田十兵衛が部屋へと入ってきた。白髪と顔に刻まれた皺と傷は歴戦の年月を感じさせた。


「昔話に花を咲かさせようと思ってな。そなたは昔、神刀と戦ったことあるのだろう?」


十兵衛の顔には酷い火傷の痕があった。それを十兵衛は撫でた。


「あの頃は敵でしたが、今は味方とは。世の中、何があるかはわからぬものですな」


十兵衛の口元に穏やかな笑みが広がる。

それに呼応して、一郎も口元を綻ばせた。


「十兵衛殿は強者であります。我等一族と相対し、生き残った者は一族の三百年の歴史においても数えられる程度です」


「十兵衛の武勇は本当に素晴らしいな」


「恐縮です」


「十兵衛殿と我等一族が手を結べば、どんな困難も打ち砕けることでしょう。駒姫の心臓を必ずや」


「頼もしいのう。それでは、頼んだぞ」


義信がそう言うと、一郎と十兵衛は頭を下げた。

義信以外の全員が部屋を出て、一人になった時に義信は呟いた。


「母上、もう少しの辛抱ですぞ。必ず助けてみせます」


義信は扇子を閉めた。


父親を家臣の謀殺で亡くし、幼くして家督を継いだ。犬井家は莫大な富と領地と金鶴城を擁する大名である。そのような家を纏めあげるのは容易くはない。そのような時に支えてくれたのは母上だけである。


ここで助けられなければ、いつ助けるというのだ。

今こそ助けなければ、武士の名折れである。

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