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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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38

勘助は一郎の神刀を持ち、神社へと向かった。二人も続く。


鳥居をくぐるときは一礼を忘れない。二人もそれに倣った。


本殿についたら、御扉を開ける。そこには数多の神刀を持つ千手観音がいた。


勘助は千手観音に一郎の神刀と己の神刀を持たせた。


「この神刀、一振一振に魂が囚われていて、長い時の間、今も苦しんでいるのね」


駒姫は神刀の前で手を合わせ、頭を垂れた。後ろで勘助と正吉も駒姫に動作を合わせる。勘助は背後に一郎の気配がするような気がした。


「今まで苦痛に耐えて頂き、御苦労様でした……あなた方の献身は決して無駄にはしません……それでは始めるわ」


駒姫の手は淡く優しく光り始めた。


「……ちょっと待って下さい」


「……? どうしたの?」


勘助の制止に駒姫は首をかしげた。手の発光も消える。


伊与は本当に解放されたいのか。


彼女は勘助と共にいることを選んだのだ。成仏させることは彼女の選択を否定することにならないか。


いや、だからといって、伊与を永遠に苦しめていい道理はない。


「……何でもありません。続けて下さい」


「わかったわ」


再び、駒姫の手は淡く優しく光り始めた。


伊与の魂は神刀に間違いなく繋がっている。治癒の力で成仏させたら、この世で勘助達を繋ぐものは何もなくなる。


この世を滅ぼすような力を手放すことには何の未練もない。


だが、伊与と別れをしなければならないのは身を割かれるような想いである。だが、このまま苦しめるよりもあの世に送ってあげた方が伊与のためになるだろう。


伊与との沢山の思い出が溢れる。どの思い出の伊与も笑顔だった。


勘助は空を見上げる。そこには満天の星が広がっていた。星達は遠くで輝いている。


駒姫は千手観音の胸に手を当てた。手の光は千手観音を伝って、歴代の神刀へと届く。


続けていると、神刀から黒い煙が吹き出した。黒い煙の底から徐々に黒い炎が燃え上がる。それは蛇の舌のように暴れ、勢い良く吹き出した。


黒い炎がヤマタノオロチのように駒姫に襲いかかる。


駒姫は怯むことなく、千手観音を通して神刀に光を浴びせ続けた。


勘助は刀を抜き、駒姫を守ろうとした。


「大丈夫よ」


駒姫は勘助を声で制した。


勘助が動きを止めたと同時に黒い炎も動きを止め、黒い煙を上げて消えてしまった。


一振の神刀から蛍のように淡く光る球体が抜け出て、天へと昇っていく。その途端に神刀はひび割れ、粉々にくだけ散る。


一振、また一振と淡く光る球体が抜け出て、天へと昇っていく。いつの間にか、沢山の淡く光る球体が天へと昇っていっていた。


安らかにお眠りください。


勘助は手を合わせ目を閉じて、冥福を祈る。


しばらくそうしていると、辺りの雰囲気が変わっていた。違和感を覚え、目を開ける。


開けた目は見開かれた。目の前に伊与がいたからである。あの日と変わらない優しい目で勘助に笑いかけていた。


伝えたいことが溢れすぎて、それを言葉に変換することができない。今しかないのに。今、この場でしか伝えられないのに。


「ちゃんと聞くよ」


伊与の優しい声が耳に届いた。


「今まで地獄で苦しませ続けてごめん!」


堰を切ったように涙と言葉が流れ出た。


「地獄でお前が苦しんでいることに俺は気が付けなかった。俺はお前に幸せであって欲しい。お前が苦しむのなら、儀式なんかしなかった」


「……謝らないで、一緒に道を選んだんだから。私も貴方に幸せになってほしいから、儀式を受けたんだよ」


勘助は目を伏せた。


「俺はお前を犠牲にして力を手に入れるのでなく、お前を守るために力を振るわなければいけなかったんだ」


「……わかった。輪廻転生を経て、いつかまた一緒になれたら、今度は守ってね」


「俺を許してくれるのか?」


「許すも何も最初から恨んでいないよ。私は貴方を何よりも愛している」


「俺もお前を愛している」


伊与を抱き締めることはできなかった。彼女は半透明なのだから。


「……そろそろ行かなくちゃ」


「もう行くのか」


伊与は答えず、勘助の前に立った。そして、彼の肩にそっと手を回す。抱き締める仕草だけがそこにあった。


「……それでも、本当は怖かった」


消え入りそうな、震えた声だった。

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