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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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正吉は駒姫を無事に見つけたようだった。


駒姫は勘助を見た途端、酷い傷だと言い、治癒の力で傷を治した。


一郎の供養がしたいからと勘助は一人にさせてもらう。


手で穴を堀り、一郎の焦げた遺体を土に埋めてやった。これで肉体は土に返り、また新しい命を育み、魂は三途の川を渡り、あの世へと向かうだろう。


手についた土を払うと、乾いた土の匂いが漂った。


伊与や神刀の一族の魂を解放するためとはいえ、立ちはだかった一郎の命をこの手で奪った。神刀のことを教えてくれて、伊与に出会わせてくれて、一緒に食卓を囲んだ育ての親を殺したのだ。


そう思うと、漂う土の匂いに血の鉄臭さも混ざっているように感じる。


本当はこのような結末を迎えたくなかった。できることなら、また食卓を囲みたかった。


陽だまりが降り注ぐ中で木陰になっている一郎の墓に、勘助は目を閉じて手を合わせる。一郎はもう何も応えなかった。静寂だけが辺りに広がっている。


どれくらいそうしていただろうか。すっかり辺りは暗くなっていた。


後ろから足音が聞こえた。気配もする。


振り返ると、駒姫と正吉がいた。


「全て終わったんだな」


「いや、まだ一つ残っている」


勘助は駒姫に頭を下げた。


「姫様、お願いです。神刀に封じ込められた魂を全て解放してください」


勘助は神刀の一族の成り立ちを語り始めた。一族に終止符を打つ判断をするためにはそれを知っておくことが必要だと思ったから。


その昔、村を治める代官がいた。その代官は村人に重税を課し、不当に私腹を肥やしていた。あまりの重税に村人はその日に食べ物にも困っていたそうだ。


もうこのまま皆死ぬしかないと諦めていたところで、一人の僧が村へとやってきた。旅をしていて、食べ物を分けてくれないかとのことだった。


村人は代官の重税のせいで食べ物がなく、村人全員飢え死に寸前だということを説明した。


それは可哀想だと僧は一つの提案をした。神の力を持った刀の作り方を教えるから、それで代官を殺してしまいなさい。ただ、この刀は使用者の一番大切な者の心臓を刀で貫く必要がある。そうして、できあがった刀は使用者にしか扱えない。生贄になった者は魂を刀に捕らわれる。このことを聞いてどうするかを一晩考えなさい。


村人達はこの提案に悩んだ。受けるかどうかではなく、誰を犠牲にするかをである。もう村人達に選択の余地はなかったのだ。


話し合いの末にある若い夫婦に白羽の矢が立った。若い夫婦は僧に刀の作り方を教わり、妻を生け贄にした。その刀を持って夫は代官を滅ぼした。倉庫に貯蔵されていた食べ物を解放し、村人は飢えから救われた。


その報復として、あらゆる組織が攻めてきたが、全て返り討ちにした。いつしか村を脅かすものは誰もいなくなった。


それ以後、神刀の作り方は一子相伝で受け継がれていった。それは血筋による継承ではなく、現当主が見込んだ者に継承していく方式であった。


村は神刀の在り方に反対をし始めた。しかし、絶やしてはならないと一族は村を離れ、隠れ里で脈々と受け継ぐようになった。今もそれは受け継がれている。


勘助の語りに二人とも目を反らさなかった。


駒姫の目から涙が何滴も何滴も地面に落ちる。それを拭わずに駒姫は勘助を見つめた。


「……わかりました。それは治癒者としての責務だと思います」

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