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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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軍議の後に正吉は勘助の部屋を訪れた。


駒姫が目の前で拐われてから、勘助は自由に動くことができなくなったのだ。護衛という仕事もなくなったわけだし。


あの日、勘助は正吉に問い詰められた。元々は犬井家を裏切り、駒姫を拐うつもりだったのかと。


勘助は「最初はそうだった、でも今は違う」と答えた。


そう答えた途端に正吉から頬を殴られた。これで清算してやるとのことだった。


それから、葬儀での僧の言葉を経て、勘助は犬井家から駒姫を取り戻す準備をしていた。


犬井家は強大である。真正面から突っ込んだら、いくら勘助といえども、駒姫を救えない可能性があった。急く気持ちを抑えて、着実に準備を進めていた。


勘助の強さを知っている者達はそれを裏から支援した。正吉もその内の一人である。


「犬井家は姫を返還する意向とのことだ」


正吉の隣に座り、勘助にそう伝えた。


「そうか……」


勘助は安堵の息を洩らした。己の立場というより、駒姫がまだ生きられるということに対してだ。


神刀の一族の魂を解放して貰える。


勘助は柔らかい声で問い掛けた。


「犬井家で軍でも編成されて送り届けられるのか?」


「いや、神刀一郎が送り届けるみたいだ」


勘助が弾かれたように立ち上がった。


脳裏に鮮明によぎった。


血塗れの部屋の中で倒れている駒姫を。


心臓を手のひらに納めている一郎を。


血生臭さが鼻を刺す。地獄で苦しむ伊与達の手が遠退いていく。


「驚いたな。急にどうした?」


「一郎が姫を無事に送り届けるなんて有り得ない」


「一体どういうことだ?」


「治癒者は神刀を無力化することができるんだ。つまり、治癒者の姫様は神刀の天敵ってことだ。一郎が姫様を生かしておく理由がない」


正吉も焦った様子で立ち上がった。


「おい、不味いじゃないか! 早く何とかしないと!」


「神刀の隠れ里に行く。そこに姫様が連れていかれたはずだから」


「天敵なのにすぐに殺さないのか?」


「一郎の性格上、それはない。殺すとしても、最大限の利益を持ってから殺す。今頃、犬井家以外の大名と姫様の心臓の取引しているんじゃないか」


「なるほど……俺も連れて行ってくれ。頼む」


正吉は頭を下げた。


勘助は一郎の炎のことを思い出した。


溢れんばかりの炎。その炎は十兵衛以外の名だたる者を飲み込んできた。正吉も例外にはならないだろう。


正吉はいい奴だ。正直死なせたくない。いくら勘助といえども、一郎相手では守りきれないだろう。


勘助は首を横に振った。


「駄目だ」


「……お前と戦って、神刀がどれだけの力を持っているかをわかっているつもりだ。正直俺では太刀打ちできないだろう。でも、お前が戦いに集中できるように姫様を守ることはできる! あの時、姫様は重傷の父を助けてくれた。着物が血で汚れるのも構わずに。その時に誓ったんだ、姫様を何としても守ることを。そのために俺は今日まで鍛えてきた」


「……家のことはどうするんだ?」


大名は家内で規則を持つ。どの大名家でも、勝手に外出することは禁じているはずだ。


正吉はそれを侵そうとしている。たとえ、生きて帰れたとしても、最悪切腹となることだってあった。


「覚悟の上だ。規則を守ることよりも姫様を助けることが大切だ」


正吉の目は真っ直ぐ勘助を射貫いた。


ふと思う。もし、勘助が正吉の立場で、救う相手が伊与だったなら。


勘助自身も正吉のように必死に頼み込んでいただろう。


勘助は目を閉じて息を整え、「……わかった」と返した。


「恩に切る。共に姫様を助けよう」


正吉は勘助に手を伸ばした。


「ああ」


勘助は強く握り返した。まるでそこから熱が伝播していくかのようだった。熱風が部屋に吹き込んだ。

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