前へ目次 次へ 30/41 29 義信が襖を閉めたその瞬間、部屋の中で於富の方が咳き込んだ。薄い命の気配が襖の向こうで揺れていた。 義信は肩を震わせ、立ち尽くしている。刀に触れたまま、力が抜けたようだった。 義信は駒姫に背を向けながら言った。 「許せとは言わない。それは一生消えないからな。ただ、月川城には私が責任を持って送り届ける」 義信は襖を凝視していた。 駒姫はその背中をただじっと見つめていた。 城主としての責務と息子としての迷いが揺れているように感じた。