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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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そこでは小姓が息を切らしたまま、必死に頭を垂れていた。


「義信様!」


「なんだ。私は今、忙しい」


「大奥様が駒姫と共に今すぐ部屋にくるようにと仰せです」


「急用か!? おい、行くぞ」


義信は一つ息を落ち着けると、鞘に刀を納めた。そして、慌てた様子で部屋を出ていく。


駒姫もそれに従うことにした。


義信が駒姫の心臓を求める理由は於富の方の病を治すためである。それならば、本人と相対すれば、光明が生まれるかもしれない。


義信を追って、部屋に入ると、於富の方が布団の上で座っていた。重病とは思えない程、凛とした佇まいであった。まるでこの部屋だけ雪が降っているかのようである。


これはいつものことかと義信を見ると、目を丸くしていた。どうやら、いつもことではないらしい。


「母上! お座りになられても大丈夫なのですか!?」


「ええ……そのようなことよりも隣の部屋が騒がしかったです。何をしていたのですか?」


義信は子供のような満面の笑みを浮かべた。


「母上、お喜びください! 治癒者を手に入れました。これで病も治りますよ」


於富の方が駒姫の方を向く。その視線に駒姫の体が強張る。


「それで貴女が治癒者ですか?」


駒姫は頷いた。ここで言葉を間違うと、心臓は抜かれてしまうだろう。だが、この場合の正解などわかるはずもない。だからこそ、駒姫はありのままの言葉を紡ぐことにした。


「幸福なことに私には大切な方々がいます。その方々は私を命をかけて守ってくれます。なので、私はその方々を治すためにこれからも生きていたいと思っています」


「おい、違うだろう! 母上のために心臓を捧げるという話だったじゃないか!」


義信から唾が飛んでくるが、駒姫は於富の方を見詰める。於富の方は優しい顔を駒姫に向けた。


「そうですか、そのような方々に出会えたことは人生の宝ですよ。今後も大切にしなさいね」


駒姫は安堵の表情を浮かべた。それはつまり、於富の方は駒姫の心臓を喰らうつもりはないということだった。この先も駒姫は生きられる。


次の瞬間、於富の方の優しい表情は霧散し、鋭い眼が義信を射抜いた。


「義信! 私は貴方をそのように育てたつもりはありませんよ! 隣の部屋での蛮行、全部聞こえていました! なんですか、武士がか弱い女性を追いかけまわして! 恥を知りなさい」


「はい……」


於富の方の剣幕に義信は小さくなるばかりだった。


「私は人様の命を奪ってまで生きたくはありません!」


「母上、そんな……」


義信は於富の方を涙目で見た。まるで子供のようだった。


於富の方は優しい表情になり、子供に言い聞かせるような口調で言った。


「ですが、やり方が間違っていたとはいえ、貴方が私を想ってくれたことは伝わりましたよ。優しく育ってくれた貴方は私の宝です。今後はそのようなことはせず、立派な君主になりなさい」


「母上!」


義信が於富の方に飛び込み、於富の方は受け入れた。二人は抱き合う。於富の方は一つ咳をした。

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