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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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湯気が立ち込め、鉄臭い臭気が鼻を刺す。臭いの元の池は血のような色をしていて、燃えていた。粘性が高いようで、泡が沸き立っていた。まるで溶岩のようだった。見渡す限り、岸はない。


その池の中で数多の悲鳴が響く。


「助けてくれ!」


「苦しい!」


「熱い!」


沢山の人が溺れていた。手を天に伸ばしてもがくが、足を引っ張られているかのように沈んでいく。


更には池の火の熱さにも苦しんでいるようである。


まるで水責めと火責めを同時に受けているようだった。


そのような中に見知った顔を見つけた。思わず、駆け寄ろうとするが、体が動かない。


「伊与!」


勘助は喉が千切れそうなほどに叫んだ。伊与も池の中で焼かれて溺れていたのである。


彼女が勘助に気が付く様子はない。ただただ苦悶の表情を浮かべていた。


血のように赤い池は燃え、泡立ち、唸っている。


「伊与! 伊与! 伊与!」


勘助は声のある限り叫ぶ。何度も何度も何度も。


それでも、伊与が勘助に気付く様子はなかった。


必死に叫んでいたら、いつの間にか葬儀の広間に戻ってきた。


読経の声は何も変わらず続いている。


「伊与! 伊与はどこだ!?」


勘助は周囲を見渡したが、伊与の姿はどこにもなかった。


「伊与さんは血の池地獄で苦しんでいますよ」


「嘘をつくな! お前が見せた幻覚だろう!」


「貴殿が疑うことは勝手ですが、先程の光景は紛れもない事実です。血の池地獄の炎に見覚えがないですか。貴殿が神刀と呼ぶものから出る炎と同じじゃないですか?」


勘助は神刀の見慣れた炎を思い浮かべる。確かにそうだった、反論の余地はない。


僧は続ける。


「それに伊与さんは親しい間柄の貴殿から見ても、本物でしたでしょう。再現できるとしたら、私は幻術師としてとんでもない才覚ですね」


本当は勘助にもわかっていた。紛れもなく伊与本人だということを。誰よりも伊与を愛しているからこそ、見間違えることはない。


ただ、認めたくなかったのだ。伊与が血の池地獄で苦しみ続けているということを。


勘助の手が震えている。


神刀はわずかに熱を帯びていた。


「……何故、伊与は血の池地獄で苦しまなければならないのですか?」


「地獄呼びは愛する者の魂を地獄に生贄として捧げる代わりに地獄の炎を使えるようになるという、鬼との契約です。この契約はいつでも使える状態にするというものなので、貴殿が炎を使わなくても関係なく発生しています。この儀式の一番の問題は生贄にされた者の苦しみは永遠に続くというものです。つまり、貴殿が死んでも、彼女はずっと地獄で苦しみ続けるのです。彼女だけじゃない。今まで儀式で生贄になった貴殿の一族の面々も苦しみ続けています」


勘助は己の中の全てが崩れていくのを感じた。


「使える炎の質や量は愛する者との絆で決まります。貴殿の炎は大きく上質です。さぞや、絆が深いのだろう。だからこそ、このような苦しみを抱いていても、彼女は耐え忍んでいる。全ては貴殿の為です」


勘助の目に涙が溢れた。伊与からの献身を感じると共に己を恥じた。


「貴殿はこのまま彼女を見捨てるのでしょうか?」

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