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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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20

その日はいつもと同じ朝だった。


勘助が目を覚ますと、台所から包丁で菜っ葉を切る音がシャクシャクとした。味噌汁の香りも漂ってくる。


勘助は寝具の麻布を蹴飛ばして起き上がり、香りに引き寄せられて、台所へと向かう。


台所では、伊与が長い黒髪を揺らしながら料理をしていた。窓から朝日に照らされて輝いている。


気配に気が付いたのか、伊与は振り向いた。花が咲いたように微笑む。


「あら、起きたの? おはよう。ご飯、もう少しでできるからちょっと待ってね」


そう言うと、伊与は菜っ葉を切ることを再開した。


その後ろ姿に愛おしさが込み上げてくる。


勘助は伊与の後ろに立つと、お腹に腕を回し抱きつく。柔らかく温い。確かな存在を感じた。


「ちょっと……ご飯作れないでしょう」


伊与は困ったような甘えた声を出した。手に持っていた包丁は既に台に置いているため、満更でもなさそうだ。


勘助は伊与の首筋に鼻を近づけ、匂いを嗅ぐ。伊与の匂いがした。キンモクセイの匂いとも違う、幼い頃からずっと側にあった匂いだった。


「くすぐったいよ......」


伊与は勘助の腕の中で身動ぎをした。


童心を思い出した勘助は伊与の脇に手を突っ込んでくすぐる。


「あはは、やめて~」


伊与は笑い、脇を締めて身をくねらせる。


伊与は子供の頃から、これが苦手だった。あの頃は加減がわからなくて、泣かせてしまったこともあった。泣かせたかったわけではなく、笑わせたかったのだ。しかし、面白いことを言うのは容易ではないため、くすぐって笑わせていた。


あまりやりすぎると可哀想なので、ほどほどでやめる。


「あ~、くすぐったかった……子供の頃から、ずっとこちょこちょされているのに全然慣れないの、なんでなの~」


息も絶え絶えの伊与は労るように自らの脇をさすった。


そんな伊与を勘助はまた抱き締めた。


伊与は結ばれた勘助の手の甲を撫でながら言った。


「今日は儀式の日でしょう。早く準備しないと駄目よ」

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