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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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犬井軍の本陣で義信は扇子を開け閉めしていた。傍らには一郎が立っている。


伝令が義信の元へ駆け寄ってきた。


「十兵衛様からの伝言です。月川城に潜入した神刀が裏切り、東門を守っていました。私が道を切り開きます」


「そうか、報告ご苦労。下がっていいぞ」


「はっ!」


伝令が走り去ると、すぐに別の伝令が義信の元へ駆け寄ってきた。


「報告します。多田十兵衛様、討死。神刀に一刀両断されたとのこと」


本陣内がざわめいた。


「あの十兵衛殿がやられるとは……」


義信のこめかみがひくひくと動いている。


更に別の伝令が義信の元へ駆け寄ってきた。


「報告します。十兵衛様の討ち死により、東門総崩れ。それ以外の門も戦況不利」


義信は扇をへし折った。


その様子を見て、伝令の二人は視線をそらした。


「……そうか。二人ともご苦労だった。下がっていいぞ」


「はっ!」


伝令の二人はいつもよりも速く走り去った。


義信は一郎を睨んだ。


「この落とし前をどうつけるつもりだ? 潜入した神刀は裏切り、そのせいで十兵衛を失ったばかりか、戦況も不利になった」


「……まさか勘助が裏切るとは思いもしませんでした。こちらの落ち度です」


一郎は頭を下げた。地面を見ながら頭を巡らせる。


任務が果たせなくて信用を失ったのは腹立たしい。先祖代々積み重ねてきたものを崩し、泥を塗ったのだから。


だが、それ以上に裏切りが腹立たしい。裏切るということは、三百年の歴史がある神刀の一族より惹かれるものがあったということだ。それはあってはならない。神刀は軽んじられてはいけないのだ。そうでないと、刀に魂を封じ込められた者達の想いが無念だ。


それに今まで勘助を育て、共に過ごしてきた時間が大切ではなかったと言われているように思えた。


一郎は顔を上げて、刀のように鋭い視線で義信を貫いた。醸し出される雰囲気は抜き身の刀である。


義信は若干のけ反った。


「軍を退却させて下さい。夜、城に潜入して駒姫を拐ってきます」

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