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血と愛は同じ赤色をしている  作者: 津崎新


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14

月川城の一室では、駒姫と子供達が身を寄せ合っていた。下の方からは怒声や悲鳴が響いてくる。それらが聞こえる度に駒姫達の塊はより密度を増していく。


「大丈夫よ。みんなで勝利を祈りましょう」


駒姫が子供達を抱き締めながら言った。


戦前に彼女は負傷者を治療すると主張したが、それは危険だと家臣達からの猛反対を受け、部屋の中で子供達といることになった。


「しーしょー……」


弥太郎は不安そうな目で勘助を見た。


彼の母親も戦に出て戦っている。彼女は出陣前に勘助にこう言った。


「武家の妻だということもありますが、弥太郎を守りたいのです。弥太郎のことをお願いします」


母親はそう残すと、薙刀を持って出陣した。


勘助が駒姫や子供達を守ってくれるなら、家臣達は何の心配もなく、戦に専念できるとのことで、勘助は駒姫達の護衛をしている。城内の者は皆、戦いに出ている。


つまり、今が駒姫と弥太郎を拐う絶好の機会である。


その場合の未来を思い描く。


犬井家に届けられた駒姫は心臓を抜かれ、絶命するだろう。つまり、駒姫を拐うということは駒姫を殺すということと同義だ。家臣や市井の者を治療し、子供達を抱き締めている彼女を殺すというのだ。


しかし、そうすれば、任務の遂行が遅れたとはいえ、於富の方の命が助かり、義信も満足するだろう。


神刀の一族の名誉も守られる。一郎の労いの言葉が聞こえてくるようだった。


更に弥太郎を拐って、後継に据える。そうしたら、勘助に弥太郎を託して戦っている母親は悲しむだろう。母親のために強くなりたいと言っていた弥太郎自身も悲しむはずである。母親との間を引き裂いた神刀の一族自体を恨むかもしれない。


だが、後継を喜ぶ一郎の笑顔も見えるのだ。


勘助は駒姫と弥太郎がいるところまで近付いた。


伊与は勘助のことを見て、何を思っているのだろうか。


「しーしょー。しーしょーも怖いの?」


弥太郎は小さな手を勘助に伸ばしていた。小さな体に大きな恐怖を抱えながら、その手を勘助に伸ばしたのだ。


「大丈夫よ、月川城は難攻不落の城だから」


駒姫は真剣な声で言った。心臓を狙われているのは駒姫だというのに。


その時、誰かが走る音が廊下から聞こえた。甲冑の擦れる金属音も鳴っている。


まさか敵か。


勘助は神刀に手を掛ける。


駒姫達はどこか怯えた表情をしていた。


武士が襖を開いた。亀山家の武士だった。


部屋には安堵の息が漏れる。


勘助は神刀から手を離した。


「ご報告! 東門が破られます! 早くお逃げ下さい!」


駒姫の顔から血の気が引いた。


子供達は今にも泣き出しそうだった。


「何故、破られそうなんだ?」


勘助が武士に質問した。


「最初は東門の守備を厚くして、他の門は薄かったんだ。でも、犬井軍は全方向から攻めてきた。東門から人員を他の門に移したら、東門が更に攻め立てられて破られる寸前というわけさ。こうしていられない。早く持ち場に戻らなければ。姫様、お逃げ下さい!」


武士は大慌てで去っていった。


「さあ、皆逃げましょう!」


駒姫が子供達に促す。だが、子供達は動けないようだった。


月川城はもうすぐ落ちる。本拠地を失った亀山家は力が落ち、やがて滅びるだろう。


そうしたら、駒姫と弥太郎はどうなるのだろうか。


ここで逃げ延びたとしても、庇護を失った駒姫はいずれ心臓を抜かれて死んでしまうだろう。


この戦乱の世の中で弥太郎と母親だけで放り出されたら、生きていけないだろう。


それならば、いっそのこと、ここで二人を拐ってしまった方がいいのではないか。そう頭では思っている。だが、体はその通りに動いてくれなかった。


「皆さんはここにいてください。俺が東門を押さえてきます」


勘助は神刀を携えて、部屋から飛び出した。


この力は怯えている子供達を切り裂き、駒姫に心臓を捧げさせるために使うべきではない。


弥太郎を母親と引き離し、後継とするために使うべきではない。


幸福を壊すのが神刀であってはいけないのだ。


伊与が笑っているような気がした。

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