オルゴールよ! 宇宙(そら)へ届け!
この作品は「なろうラジオ大賞7」参加作品です。
凄まじいGが緩んで私はふわりと浮いた。
無重力だ!
そして私の脳が……ミッション以外のところは徐々に開放されていくのを感じる。
そう! 今の私は、瞑想の縁に立っている。地球の青さを目前にしながら……
◇◇◇◇◇
「狐憑き」と噂されるくらいの豹変だった。
無理もない。
平凡な主婦がそれまでの“日常”をかなぐり捨てて宇宙飛行士になる為の猛勉強を始めたのだから……
当時の私は小学校へ上がったばかりで状況を深くは理解できなかったが、母の豹変を肌身で感じた。
と言うか……目の前から母が居なくなって、母とそっくりな別人が表れた感じだった。
それは父も同じだった様で、間もなく二人は離婚に到りしばらくは父と私の父子家庭となった。
新しい母が来たのは小4の時で、優しい義母のおかげで私は実母を忘れる事ができた。
実母を思いだしたのは彼女が消えて“時の人”になったから。
私は彼女が本当に宇宙飛行士になったとは知らなかった。
日本人女性としては5人目の女性宇宙飛行士では、さして話題にもならなかったし、彼女も旧姓の“鈴木”に戻っていたので、まさか実母とは思わなかった。
その実母が時の人”になったのは、彼女が宇宙ステーションの船外活動中に行方不明になったからだ。どこでどう調べ上げたのか、マスコミが殺到して感想を求められ、私は酷く戸惑った。
実母の事は“過去”として封印していたから……
◇◇◇◇◇
その不審なメールは“迷惑メール”にはならず、リスト上に有った。
いつもならゴミ箱入りにしてしまうのだが、なぜかクリックしてしまう。
「オルゴールアプリへのご招待?」
何これ? と思いつつも見えない力に誘導されて私はクリックを続ける。
「ハッピーバースデー?! 私、誕生日でないのに……誰かと間違われてる?」
曲名は『エリーゼのために』
クリックするとBOXが開き、曲を奏でる。
中身のファイル名は『絵里へ』差出人の名前は実母だった……
そのコメントは
「私がこの世へ送り出した絵里! あなたの前から2度も居なくなった私の事を恨みに思っているでしょう。でももし、その理由を知りたいなら……ファイルを開けて下さい。理由が分かります。そしてあなた自身も新しいあなたへと生まれ変わるでしょう」
◇◇◇◇◇
宇宙空間での活動を無事終えた私は地球から持ちこんだミニオルゴールのゼンマイを回した。
「母さん! 私も真実の深遠をこの目で見たよ」
そのオルゴールが奏でる曲は『エリーゼのために』だった。
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