表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

第六話裏: 鋼鉄の墓標

名前 ヨシフスターリン

年齢 40代後半

所属 コミューン(鋼鉄の槌鎌・最高指揮官)

異能 【大粛清グレート・パージ

能力説明 自身の周囲に、外部の物理法則や異能を一切遮断する「絶対統治領域」を展開する。この領域内ではスターリンの言葉が「唯一の法」となり、逆らう者は物理的な重圧や、精神的な「純化」を受けることになる。

好きな事 パイプ、統計学、地図の塗り替え、静寂

嫌いな事 異分子、裏切り、不確実な未来、無秩序な自由

史実紹介 20世紀ソビエト連邦の最高指導者。強力な権限を握り、急速な工業化と集団化を推進。一方で大規模な「大粛清」を行い、多くの政敵や市民を弾圧・処刑したとされる。


地下水道の泥水は、鉄と腐敗の味がした。 エリザベートの執着から逃れ、フリードリヒが辿り着いたのは、工場区の真下に広がる巨大な廃棄処理施設――通称『墓標グラーブ』だった。


「……ハァ、ハァ……。ここも、地獄か」


フリードリヒは壁に手をつき、肺を焼くような煤煙にせた。 頭上からは、絶え間なく「ガシャン、ガシャン」という重機的な音が響いている。それは、地上の「祭典」で不要と判断された人間たちが、文字通り「資源」へと解体される音だった。


「誰だ。……許可なく、私の『書庫』に踏み込む者は」


暗闇の奥から、重厚なブーツの音が近づいてきた。 現れたのは、灰色の外套を羽織り、短く刈り込んだ髪に鋭い眼光を宿した男。その指先には、常に紫煙を燻らせる古びたパイプが握られている。


ヨシフ・スターリン。コミューン実行部隊の頂点であり、都市の「不純物」を物理的に消去する掃除役だ。


「……フリードリヒ・ニーチェ。お前がレヴィアタンで何をしたかは聞いている。だが、ここでは『価値の否定』などという贅沢は許されない」


「贅沢だと? ……笑わせるな。俺はただ、ゴミをゴミと呼んでいるだけだ。お前も、その椅子も、この腐った街もな」


フリードリヒは、震える手で自身の「否定」を練り上げる。 しかし、スターリンがパイプを一口吸い、煙を吐き出した瞬間、周囲の空間が「凍りついた」。


異能――【大粛清グレート・パージ】。


フリードリヒの視界から、アクロポリスの景色が消えた。 そこは、冷たい吹雪が吹き荒れる、どこまでも続くシベリアの荒野のような閉鎖空間。スターリンが「不純」と断じた要素を一切排除したこの領域内では、あらゆる外部の理屈――神の死も、個人の意志も、その有効性を剥奪される。


「ここでは、私が唯一の現実だ。お前の虚無も、私の許可なく存在することはできない」


スターリンが手をかざすと、地面から無数の鋼鉄の鎖が飛び出し、フリードリヒの四肢を縛り上げた。 【神は死んだ】を発動しようとしても、スターリンの意志が「壁」となってフリードリヒの精神を押し戻す。個の否定を、組織という名の巨大な「断罪」が呑み込んでいく。


「ぐ、あぁ……っ!」


「お前は、少し『純化』が必要だな。エリザベートが欲しがるのも分かる。これほどの強力な『否定』は、組織に取り込めば最強の『粛清の刃』となる」


スターリンは、苦悶するフリードリヒの前に屈み込み、冷たい目で彼を見下ろした。 彼にとって、人間は魂を持つ存在ではない。目的に合わせて加工されるべき「素材」に過ぎないのだ。


「……俺を、飼えると思うな。……俺は、誰の、道具にも……」


「それは私が決めることだ。お前という『個』を消し、その能力だけを抽出する。……それがコミューンの等価交換だ」


フリードリヒの意識が、極寒の静寂の中に沈んでいく。 否定することさえ許されない、絶対的な「管理」。 彼は、かつてレヴィアタンで味わった「無関心な搾取」よりもさらに深い、「組織による魂の収奪」という最悪の地獄に直面していた。


遠のく意識の中で、フリードリヒは泥水を噛み締めながら、皮肉にもかつて自分を捨てた世界の「無秩序な自由」を渇望していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ