第2話 この世界の街と都市
「帰ったぞー」
お父様の声が響いてきた。
マズい。
書斎にいることがバレてしまう。たぶん怒られないけど、一応早く部屋を出よう。
「セラ、急いで部屋を出るぞ」
「うんっ!」
本を本棚に戻し、急いで書斎を出る。
あの本がきっかけで前世の記憶を思い出したが、あの本が一体何なのか確認するような時間は無さそうだ。
まあ、また機会があれば調べればいいだけだ。
「ただいま~。二人ともちゃんと留守番できたか~?」
「子ども扱いしないでよ。もう十五だよ」
「もうほぼ大人だよっ」
書斎のドアを閉めるのとほぼ同時にお父様が俺たちの前に現われた。が、どうやら書斎に立ち入ったことには気が付いていないようだ。
いつもと変わらず俺とセラのことを小さい子供に接するような口調で話してくる。少しだけ面倒くさい。
いい父親ではあるんだけどね。
「今日の夜は料理長が巨大ケーキと豪勢な料理を振舞ってくれるらしいぞ~」
「「本当!?」」
「ああ、本当だとも」
「「やった!」」
俺とセラは喜びのあまりお父様の前でハイタッチをした。
俺たちの家の料理長の作る料理はどれも美味いのだ。今から待ち遠しすぎて腹が鳴ってしまいそう。
……って、そんなこと言ってる場合じゃない。
目的を見失うな。
そんなことよりも鍛錬だ。そして、そのためには武器がいる。
「セラ。料理よりも武器だ」
「あっ、そうだった!」
セラも完全に料理のことしか頭になくなっていたようで、ハッとした表情をしていた。
「二人とも何をコソコソと話しているんだい? 僕にも聞かせてくれよ~」
セラと顔を見合わせ、コクリ、と頷く。
武器を手に入れるためには別の街に行かなくてはならない。
これがこの世界の面倒な設定の一つ。
この世界は街や都市ごとにそれぞれの特色が強く出る。
例えば、俺たちが暮らしているのは、貴族都市・ノーブレア。
ここには貴族のみが暮らすことを許されている。その他の者たちはこの都市で暮らすことが禁じられている。
さらに、平民の街・ノーマリアという街もある。
そこは平民の街の名の通り、平民のみが暮らしている。
このように街や都市ごとに暮らせる人々を分けてしまうから貴族と平民の間には大きな溝が生まれているのだろう。
とまあ、このように色々な街ごとに強く特色が出ているわけだ。
そして、それはもちろんこの二つ以外にも街や都市はある。
今回、俺とセラが行きたいのは、鍛冶の街・クリエイト。
名の通り、鍛冶師が暮らす街だ。
そこへ行けばどんな武器だって手に入るだろう。
だが、俺たちだけで行くことは出来ないだろうから、お父様に頼るしかないのだ。
「お父様、今日が誕生日の俺たちからお願いがあるんだ」
「なんだい? なんでも言ってごらん?」
「俺たちをクリエイトに連れて行ってほしい!」
「クリエイトかぁ……」
クリエイトの名を出した途端に、お父様の表情が歪んだ。
この街の名を出すということは武器が欲しいと言うことになるから、俺たちの目的を察したのだろう。
お父様は俺とセラのことを大事に育ててきた。だから、武器なんて危ないものを持たせたくないのだろう。
だけど、俺たちも強くならないといつか破滅の運命に抗えなくなってしまうかもしれない。それだけは何としても避けたい。
「ダメ……かな?」
「もしかしてだけど、二人は冒険者を目指しているのかい?」
やはりお父様は正確に察している。
俺たちは冒険者育成学園に入学して冒険者を目指す。まあ、原作でもその学校に入学して主人公や他のメインキャラたちと出会うので、ここで断られるはずはないんだけど。
「うん、冒険者になりたいと思ってるよ」
「そっかぁ。やっぱり、そうだよなぁ。二人とも魔力量多いし、当然そうなるよなぁ」
お父様は頭を抱える仕草をしている。
よほど冒険者にさせたくなかったのだろう。
幼い頃に俺とセラの魔力量を測った際に魔力量が多かった。だから、いずれはこうなると感じていたのだろう。
別に魔力量が少なくても目指すつもりだったけど。
「お願いお父様!」
「私からもお願い!」
俺とセラは二人で頭を下げた。
「うーん…………分かったよ。認めるよ」
「「本当!?」」
「ああ、本当さ。二人には才能があるからね。その才能を腐らせてしまう方が罪の様な気がしたんだよ」
「「ありがとう! お父様!」」
「愛する我が子の頼みだからね……。ただし、無茶は禁物だ。分かったね?」
「「うん、分かった!」」
お父様からの許可を得ることに成功した。
とても残念そうな表情をしていた。
我儘な子で本当に申し訳ない。
「それじゃあ、早速クリエイトに行くかい?」
「「行くぅ!!!」」
「分かった。外に馬車を出しておくから準備してきなさい」
「「はーいっ!」」
自室へ向かいながら、セラと再びハイタッチを交わした。
「これで武器が手に入るね!」
「ああ、俺とセラが冒険者を目指すことも許可してもらえたし、ラッキーだったな」
急いで着替えて、お父様の待つ馬車に乗り込み、鍛冶の街・クリエイトへと向かった。
ゲームでは何度も見たが、実際に行くのは初めてなので俺とセラは心を踊らせ、クリエイトに辿り着くまでずっとソワソワしていた。




