第1話 前世の記憶
十五歳の誕生日。
いつもと変わらない朝。
俺ことノア・アーネットは、双子の妹のセラと父の書斎の前で立ち止まった。
「今日くらい怒られないよな?」
「誕生日だしお父様も許してくれるでしょ」
「だよな。それじゃあ、今日こそは何があるのか突き止めるぞ!」
「うんっ!」
今まで何度頼んでも、書斎に入ることだけは一度も許可してもらえたことがない。
俺とセラは何度もこの部屋に入ろうと試みてきた。だが、一度たりとも成功したことはなかった。
でも、今日は行ける気がする!
誕生日なんだから大抵のことは許してくれるだろう。
というわけで、俺とセラはそーっと書斎のドアを開け、中に足を踏み入れる。
今、この家にお父様はいない。が、メイドたちに見られたら確実にお父様の耳に入る。そうなるのを避けるために出来る限り音は出さないようにした。
誕生日だから怒られないとは思いつつも、怒られる可能性はゼロじゃないからね。
「こんな感じなのか」
「難しそうな本ばっかりだね」
書斎というだけあって、本棚には多くの本が並んでいた。
剣術、魔法、学問に至るまで様々な題材の本が。
勉強熱心で真面目な人だからな。少しでも気になったことはすぐに学ぼうとする人なのだ。
そういう性格もあって、このような書斎になったのだろう。
「うーん、特に面白そうなものは何もないな。どうしてこの部屋の中を見せたくなかったんだろう……」
「そうだね。難しそうな本ばっかりでつまんないね」
「何かあると思ったんだけどなぁ」
「残念だけど何もなかったってことで、もう行こうよ」
「そうだな……って、ちょっと待って! 何かあるぞセラ!」
「え……?」
すべての本が綺麗に並んでいるのに、一冊の黒い本だけが少し手前側に飛び出していた。
明らかに怪しい。
その黒い本を本棚から取り出した。
本のタイトルなどは記されていない。表紙には何も書かれていないただの黒い本。
「中、覗いてみる?」
そう問いかけると、セラは何も言わずに緊張した面持ちでコクリ、と頷いた。
この本の中には何かが隠されている。
確証はないが直感的にそう感じ、震える手で一ページ目を開く。
「う……っ、なんだ……っ!?」
視界が白く染まった。
言葉、音、匂い、そして記憶が押し寄せる。
「思い……出した……」
俺は、知っている。
この世界のことを。
そして、『ノア・アーネット』と『セラ・アーネット』がいずれ破滅してしまう運命にあることを。
「……ラビリンス・デスティニー」
前世で、俺が妹と一緒に夢中になって遊んだゲームの名だ。
前世の俺と妹は、学校では虐めを受け、家では両親からの暴言と暴力を浴びせられていた。
そんな日常が続けば当然部屋に引きこもるようになる。
現実から目を逸らすための一番の手段がゲームをすることだった。
毎日、二人で『ラビリンス・デスティニー』という迷宮ファンタジーRPGをプレイしていた。
本当に楽しくて一日中プレイする日もあった。
そして、ゲームのやりすぎで体調を崩した俺と妹は意識が朦朧とする中、何か食べなければと思い、コンビニに向かったのだが、その道中で力尽きて二人とも同時にぶっ倒れたんだ。その結果、転生したんだ。
……二人で一緒に。
つまり、転生後も兄妹になったということだ。
最悪な現実世界を生きてきたから、好きなゲームの世界に転生できたのは素直に嬉しい。だけど、どうして――
「どうしてノアとセラなんだぁぁあああっ!!!」
この世界の俺たち――ノア・アーネットとセラ・アーネットは、原作のストーリーだと主人公やヒロインを虐めたりする悪役兄妹なのだ。
原作ストーリーの二人の末路は、破滅エンドとなっている。
「もしかして、お兄様も思い出した?」
「ああ、ここはラビリンス・デスティニーの世界……なんだな」
「そうみたいだね。もしかしてこの人生も詰んだ?」
原作と同じストーリーを進めば確実に破滅する未来が待っている。
となると、原作と違う道を進めばいいだけなのでは?
つまり、原作のストーリーをガン無視して自分たちらしく楽しめばいいんだ!
でも、念のために強さは欲しいな。自分たちを守るための。
「まだ詰んでないかもしれないぞ」
「本当?」
「原作ストーリーと違う展開になればいいだけだよ。つまり、原作ストーリーガン無視で好きなように生きればいい!」
「おおっ! さすがお兄様! たしかに、前世で虐められた私たちが他人を虐めるわけないし好きなように生きても原作とは違うストーリーを進むことになるねっ!」
「そういうことだ。さすが俺の妹。理解が早い」
「お兄様の妹だから当然っ!」
セラはホッとしたようで安堵した表情で胸をなでおろしていた。
無用な心配をさせてしまったな。
「とりあえず強さは欲しいよな」
「原作と違うストーリーを進むから、何が起こるか分からないもんね」
「ああ、そうだ」
原作と違うストーリーを進む。
つまり、それは俺たちの知らない事が起きる可能性もあると言うわけだ。
「てことは、鍛錬あるのみじゃない?」
「元引きこもりの俺たちにはかなり大変かもしれないけど、大丈夫か?」
「破滅エンドを回避するためならどうってことないよ」
「それもそうだな」
「破滅の運命なんてぶっ壊そ♪」
「ああ、最高のハッピーエンドにしてやろう!」
この瞬間、俺たち双子兄妹の破滅エンド回避計画が始まった。
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*今日は、あと2話投稿予定です。




