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神はどこに居るのか?

作者: タチアサ
掲載日:2025/11/01

神はどこに居るのか?


中世ヨーロッパ。神学が支配する時代に、一人の男が「神と は何か」を問い続けた。 彼は神学校で教鞭をとる教師でありながら、次第に神への信 仰を失っていく。 「神は全能なのか」「神は全知なのか」「神の愛は本当に無償な のか」――


理不尽な現実と矛盾する教義への疑念は、やがて“神を探 す”という異端の探求へと変わっていった。

「神は全能の存在である」

本当にそうであろうか?


「神は全知である」

なぜそんな事がわかる


「神の愛は無償であり、普遍である本当か?」


もしそれらが真実なら私は神を信じる事が出来ない


なぜなら神が全能であるならなぜ神は人に欠点を与えた?


神が全知ならなぜ法を犯す人間を想像した?


神の愛が無償であり普遍であるなら

なぜ神はアダムとイヴの罪を許さず

私達に背負わせたのか?


それらは教典の中でそれとなく理由が語られる

だが私は"納得"など出来ない、出来るはずがない

人は一生のほとんどを"苦しみ"の中で生きる

それが神の仕業なら神は非道だ

平民は窃盗を犯せば"死刑"になる事もある

だが神がそうし向けたのなら神は教唆をした事になる

ならば神も罰を受けるべきではないか?

民には多額の税がかか

それらの多くは教会が課した物だ

その税で神父達は神を維持する為に使うと言う

だが実際には教会の人間が至福を肥やしだけだ

もし神がそれを許すなら"神を殺してしまう"

だから私は神を探す事にした


私は本を書き始めた

自分の神を本に残す事にした理由は本に残せば

自分の神は構成に残るからだ

私は他人だけでは無く妻と娘であるエリーザにバレない様に本を書く

バレてしまえば異端にされてしまい捕まるからだ


本は順調に書き進んだ

もっと難航すると思っていたがそんな事は無かった

内容は神は本来人間に干渉せずにただ観ているだけの存在である


これらの内容を私は筆を休ませる事無く書き続けた


ある日酒場で気分良く酔っていた理由は妻の妊娠が発覚したからだ、

家族が増えれば負担は増えるだがそれ以上に嬉しいものがある

私は名も知らぬ男と宗教観が合い、議論が白熱した、その中で私は現在本を書いている事、本の内容を喋った


私は次の日普段通り授業をしに行った

たまたまその日の授業は遠方に泊まり掛けで行くものだった


私が日を跨ぎ帰ると家は無くなっていた

家には焼かれた様な跡が残り焦げ臭かった


遠くから声が聞こえる、旦那さんが異端で家にいた嫁と子供が連れ去られたらしい


あの男だ、あの男が私の行いを教会に報告したのだ

私はフードを深く被り街を出た

生きているのかわからない妻と子供を置いて逃げた

もし神が居るならこんな男を作るだろか?

私だったら作らない


私の手元には私が書いた本が握られている

忌々しい、嗚呼忌々しい、この本の中にいる神によって私の妻と子供は殺された

実際にはそうでは無い、ただそう思う事しか出来なかった


私は歩き何にも無い森に辿り着いた

私は叫んだ、喉が枯れ血が滲み出すほどに叫んだ

神に訴えるように叫んだ

だが神は沈黙した

意味など無い、あるはずがない

私は娘が楽しそうに好きな歌を歌う姿も、妻が鼻歌を歌いながら洗濯する姿もたった数日会わないだけ思い出せなくなっていた

私はそんな自分に絶望した

私は膝を着きその夜は動かなかった

このまま狼や野犬に喰われてしまえばいい

そんな事を願った、だが私は息をしたまま朝を迎えてしまった


40年の時が過ぎた


私の髪は白く染まり、腰を曲げて歩いていた

私は辺境の村で木こりをして暮らしていた

神への信仰は失われていた

なのにあの本を捨てられずにいた

未練たらしく私はあの本を隠し続けていた


私はこの村である少女と出会った

その少女は老体相手に嬉しそうに話しをする変わった子だ


私はよくその子に自分の哲学や神がいない事を話していた

その子はそんな老人の戯言を頷く様に聞いている


そんな"許されない"日常を歩んでいた

だが幸運にも私にも死が迫っている

咳が止まらないのが"肺炎"だ

最近はより酷くなり喉が痛く、水も少量しか飲めなくなり、食事も飲み込めない


そんな事が4日を過ぎようとしていた

毎日私の見舞いに来る村の青年が居た

青年は私の家に来るたびに自分が旅をしていた時の事を話す

男は咳き込む私をよそに旅をしていた時の話を始める


私は話を半分聞き流しながら目を瞑る


「エリーザ・ロゴメスって言う女の旅芸人が居てそいつの歌声が天女の如く美しい声を持っていた」


私は思わず目を開けた

自分の娘と同じ名前で私が遥か昔に捨てた苗字だったからだ

私は男にその人物についてより深く聞こうとした、だが喉が枯れて声が出ない、毎日隙間風の様なか細い息しか出てこない

男はまた来ると言い出て行った


だが私はもう彼には会えない

私は今夜死ぬことが自分でわかって居た

私はそれが本当に自分の娘かどうか確かめる術はない


だが何故だろうか私は高鳴っている

その女の正体が娘だとは限らない

だがその一部の可能性が私を高鳴らせる

「死んでいた感情は産まれたばかりの子供の様に高揚し」

「放棄されていた思考は自分で走り戻ってくる様に加速し続ける」

「枯れていた目には再び雨を降らせた」

私は理解してしまった

これが"奇跡"だと

人の心を動かす

教師だったからわかる、人の心を変えるのは不可能に近いと思わせるほどに難しい

だがこの"奇跡"にはそれが可能である

私の神は蘇った


神は人々の中に平等に存在し

平等に宿って居る

それらには例外は無く

凶悪な犯罪者であろうと

冷酷な支配者にも

存在する

だが神は沈黙を続ける神は人々に言葉では無く

感情で寄り添う

そして無償にして、普遍の愛を与えるのだと

人々はそれを"感動"と呼ぶ


私はベッドの下に隠してあった本を取り書く

震えた手

老いてしまい見えなくなった目

焼ける様に痛い喉

捻れる様に痛む肺

後何時持つかわからない命

どこまで書けるかわからない

だが書かないといけない

残さないと行けない

私の残る物をカス一つ残さずに捧げる


かつての自分の考えを否定する様に狂いながら書き続ける


もうそろそろ日が昇る

空がひまわりの様に染まって居る

限界が来た

終わる日が来た

かつて死は神が作った呪いだと思って居た

だが今はそうは思はない

遠く意識の中で私はこの分厚い本に名前を与える事にした

"神は居た"

そう表紙に書き眠った



数百年後


自由と芸術の時代そう呼ばれた時代

イタリアフィレンツェ共和国トスカーナのヴィンチ村で"まだ"無名の少年が家の床下を調べて居ると分厚い本が出て来た

本の中身は前半無骨な男の様な字、後半は女性の様な丸みを帯びた字で内容も前半と後半で微妙に違って居た、少年はその本に興味を持ち読む事になる


少年の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ

後の芸術家である

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