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Erase  作者: 花丸鉛筆
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第二話「草花の世界」

 真っ白である他には何もない天から、神は地上の様子をご覧になった。地上は描く物たちによって、さまざまな絵や文字で満ち満ちていて、描く余地は無くなりつつあった。


「時が来た」


 天のすべてに神の声が響き渡った。


「来た」

「いよいよだな」


 消しゴムのラブと修正液のコレフは、声を聞いて互いを見つめ合った。ラブは青いスリーブを着た白い消しゴムで、コレフは白いプラスチックでできた容器を着ている修正液である。彼らは競うように繋ぐ物たちの所へ走っていった。

 彼らが着く頃には、マスキングテープのマスクが虹色になって、地上へ弧を描くように伸びていた。


「さあ、消す物たちよ、虹色のマスキングテープをつたって地上へ行くがよい」


 神がそう言うので、先頭をラブ、その後ろをコレフの順にゆっくり渡っていこうとした。


「あっ!!」

「えっ!?」


 だが、コレフがつるりと足元を滑らせてしまい、先頭のラブも押されて滑り落ちていく。


「ぎゃー!!」

「わー!!」


 滑り落ちていく消す物たちを繋ぐ物たちは笑って見ている。彼らは文房具なので、たとえ落下して地上に激突したとしても平気だからだ。


「達者でなー!」

「健闘を祈るー!」


 下へ下へと滑り落ちていく消す物たちには、繋ぐ物たちの声援が遠ざかっていくように感じられた。




 たちまち、消す物たちは地上に到着した。幸い、彼らよりも大きな草花の中に落ちたので、傷一つ付かなかった。


「じゃ、頑張れよー」


 そう言ってマスキングテープのマスクは天へと引き上げていった。

 消す物たちは周りを見回した。十二色のやや粉っぽいタッチでみっしりと塗り込まれた草花に囲まれていて、土と草の匂いがむんむん漂っている。


「これは、色鉛筆のカラシルたちが描いた世界だな」


 コレフは感嘆して言った。


「消せるのは、ぼくだね」


 そう言うと、ラブは真っ平らな胸を張って、本能のままに消し始めようとした。

 すると、身の危険を察知したのか、周囲の草花たちが消す物たちに向かって伸びてきた。消す物たちに避けられると絡まり合ってしまうが、ぶちぶちと千切って(ほど)いた後、再び伸びてくる。


「げっ、おとなしく消されろよ!」


 コレフはキャップをはずし、修正液をサッと付けた。しかし、草花たちの勢いは益々ひどくなった。水を撒かれたようにすくすく育っていくのだ。


「おれの液は水と同じ扱いかよ!」

「コレフは消そうとするな!ぼくがやる!」


 ラブは草花にゴムの頭を擦り付けていくが、少し消えては再生してしまう。少し消すのでは効果がないならばと一気に根元まで消してみるが、やはり再生してしまう。


「なにこれ、キリがない!?」


 ラブは伸びてくる茎や葉をかわしながら考える。草花の動きを止めるにはどうすればいいのか?草花を消そうとしてもすぐに生えてくる。ならば、別の所を消すのはどうだろうか?

 そう考えた後で試しにある部分を消してみたら、草花が再生しなくなることに気が付いた。


「うわーっ!」


 コレフが叫び声を上げる。草花に巻き付かれて動けなくなってしまったのだ。

 ラブはある部分を消してから草花を消した。コレフは身動きが取れるようになり、周囲に余白が生まれた。


「消えた!?なんでだ!?」


 コレフは驚きながら余白を見回した。


「土だよ!土を消すと再生しなくなるんだ!」

「そうだったのか!それじゃあ、おれはここにいるから後は任せた!」

「うん、任せて!」


 それからは、ラブの独壇場だった。瞬く間に描き込まれた草花たちは一掃され、眩い白紙の世界が広がっていった。

 巨大な草むらがなくなると、色鉛筆のカラシルたちの姿を発見した。皆、全長1センチメートル以下になっている。


「降参します」


 白色のカラシルが無気力に言った。他のカラシルたちも抵抗する気力はなさそうだ。


「そっか。じゃあ、天に帰ろうね」


 頭の角が丸くなったラブは穏やかに対応した。形が変わると心持ちも変わるのである。


 それら一連の様子を天から見ていた繋ぐ物たちは、セロハンテープのセロを派遣した。セロは地上に伸びてきてカラシルたちを巻き取ると、天に引き上げていった。

 消す物たちは天から地上に視線を戻した。そして、次の世界を目指して進み始めた。

展開があっさりしすぎかなと思いましたが、まあいいでしょう。

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