第九話:レバニラ姉妹、試される絆
「レバニラ姉妹、崩壊の危機!?」
その言葉が頭の中でぐるぐると渦を巻く。
澪の前ではなんとか笑顔を作ってみせたものの、胸の奥に引っかかるモヤモヤは消えなかった。
深夜、ベッドに横になりながらスマホを手に取る。
DMの画面を開くと、また新しいメッセージが届いていた。
『お前一人じゃ何もできないくせに』
『白崎澪がいなかったら即消えるVtuber(笑)』
無視しよう、気にしないようにしよう。そう思っていても、言葉は心に棘のように刺さる。
——やっぱり、私ってそういう存在なのかな。
レバニラ企画が成功しても、単独配信は澪ほど盛り上がらない。私だけの力で何かを成し遂げたことなんて、あっただろうか。
考えれば考えるほど、自信がなくなっていく。
そして、私はある決意をする。
翌日——。
「橘ちゃん、今日の配信、何するの?」
明るく聞いてくる澪に、私は少し間を置いて答えた。
「……一人でやろうと思う」
「えっ?」
「最近、ずっとコラボ続きだったし……たまには私だけの配信をしたいなって」
澪の表情が一瞬驚いたように揺らいだが、すぐに優しく微笑んだ。
「そっか、それなら応援するよ! どんな配信にするの?」
「えっと……雑談メインで、みんなとゆっくり話そうかなって」
「いいね! 橘ちゃんのこと、ちゃんと見てくれてるリスナーさんもたくさんいるし、きっと楽しい配信になるよ!」
澪はそう言ってくれたけど、私の胸の奥には不安が渦巻いていた。
——本当に、私だけで楽しませられるのかな。
夜になり、配信が始まる。
「こんばちわ〜! 今日は久しぶりに単独配信です!」
開始早々、チャット欄には温かいコメントが流れていく。
「ソロ配信待ってたよ!」「橘ちゃんの雑談大好き!」
だけど、その中にいくつかの否定的なコメントが混じる。
「やっぱり澪ちゃんいないとつまんない」「トーク微妙だな」
目に入れたくなくても、どうしても気になってしまう。
でも、私は負けたくなかった。
「えっとね、最近ちょっと考えてたんだけど……私、もっと自分の力をつけたいなって思ってて」
自分の想いを正直に話す。
「もちろん、澪と一緒にいるのは楽しいし、大好き。でも、私自身の魅力をもっと知ってもらえるように頑張りたいんだ」
そう言うと、チャット欄に温かい言葉が増えていった。
「応援してる!」「橘ちゃんらしく頑張って!」
——ああ、そうだ。
私を見てくれている人は、ちゃんといる。
配信が終わった後、スマホを確認すると澪からメッセージが届いていた。
『配信お疲れ様! すっごくよかったよ! もっと自信持っていいと思う!』
その言葉を見て、少しだけ心が軽くなった。
そして、私はレバニラ炒めを作ることにした。
自分で切って、炒めて、一人で作ったレバニラ。
ひとくち食べて、思わず笑ってしまった。
「……美味しい」
そうだ、少しずつでいい。私は私なりに、前に進んでいこう。
——次回、『レバニラ姉妹、新たなステージへ!?』
カクヨムで先行投稿しております。
よろしければ読んでいただき、評価していただけるとありがたいです。
https://kakuyomu.jp/works/16818622171293154777