第58話:レバニラよ、永遠に
配信から数日後、事務所から一本の連絡が届いた。
「レバニラ姉妹卒業記念のイベント、開催したいって話が来てる」
マネージャーの言葉に、私は思わずスマホを強く握りしめた。
卒業。
その響きに、胸の奥がキュッと締めつけられる。
「……澪ちゃんは、どう言ってるんですか?」
「前向きに検討してるよ。『やるなら派手に』って、彼女らしいな」
電話を切ったあと、私はすぐに澪へメッセージを送った。
《イベント、受けてみようか。最後に、二人でちゃんとやろう》
数分後、画面に短い返信が表示された。
《うん。やろう。ちゃんと、お別れしよう》
お別れ。
でも、その言葉の裏に「終わりじゃない何か」があるような気がして、少しだけ安心した。
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イベント当日。
配信スタジオの楽屋で、私は鏡の前に立っていた。レバニラ姉妹の衣装——あの頃と同じパステルカラーの双子コーデ。
そこへ澪がやってきた。
「似合ってるじゃん。あの頃より大人っぽくなったかも」
「……澪こそ、前よりずっとキラキラしてる」
「そりゃ、ね。ソロでやってると、自然と背伸びしなきゃいけなくなるから」
澪の笑顔には、少しだけ影があった。でも、私のほうも同じだったと思う。
私たちはお互いに、今日を迎えるために、がむしゃらに走ってきた。
配信が始まる。
「みんなー! こんばちは! レバニラ姉妹、最後の……大騒ぎだよっ!」
視聴者数は瞬く間に十万を超え、チャット欄はレバニラスタンプで埋め尽くされた。
企画は盛りだくさん。クイズ、歌枠、思い出トーク、そして——料理。
「ラストレシピ、いきますか!」
私たちは一緒に包丁を握り、炒める。
レバーとニラ、それから二人で開発した特製ソース。
ファンから募ったアイディアを取り入れて、新しいレバニラ炒めが完成した。
「名前は……『レバニラRe:Link』でどう?」
「いいね、それ!」
試食タイム。
一口食べた澪が、目を潤ませて言った。
「……おいしい。泣きそう」
「泣いてるよ、もう」
私も、気づいたら目元が熱くなっていた。
配信の最後、澪がマイクを持って言った。
「今日で、レバニラ姉妹は一区切りです。でも、またいつか、ふたりでレバニラを炒める日が来るかもしれません。そのときは、またみなさんも一緒に食べてください」
私は続けた。
「私たちは変わっていくけど、このレバニラの味だけは、きっと永遠です」
画面の向こうから、大きな拍手とスタンプが降り注いだ。
最後の「おつレバニラ〜!」の挨拶が、涙で滲んでいた。
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