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Virtual Re:Link 〜レバニラ炒めを添えて〜  作者: 獬豸
第三章:レバニラでつながる世界
57/60

第57話:ひとり立ち、ふたりの距離

 朝の光が差し込む部屋で、私は静かに配信準備をしていた。

 今日は久しぶりの完全ソロ配信。澪の名前がないサムネイル、澪の声が聞こえないオープニング……そのすべてが、どこか物足りなかった。


 機材チェックのたびに、「これで大丈夫かな」「音ズレしてない?」と、つい澪に話しかけるように独り言を漏らしてしまう。隣にいるのが当たり前だった日々が、もう戻ってこないかもしれないと思うと、心のどこかが空っぽになってしまったような気がした。


 緊張で指先が震える。


「……よし、行こう」


 マイクをオンにし、配信を始める。


「こんばちは〜、橘梨乃です。今日は久しぶりにソロ配信ということで、みなさんとゆっくりお話しできたらなと思ってます」


 チャット欄に「待ってたよ!」「ソロ嬉しい!」という声が並び、少しだけ肩の力が抜けた。


 でも、その中にはこんなコメントもあった。


「澪ちゃんはいないの?」「やっぱりレバニラじゃないと物足りないなぁ」


 わかってた。わかっていたけど、それでも胸がチクリと痛む。


「……今日は私だけで、がんばってみようと思います」


 声がわずかに震えた。


 トークテーマは「最近ハマっているもの」。澪と話していたら絶対脱線していたような話題も、ひとりだと妙に淡々と進んでいく。

 コメントのひとつひとつに丁寧に応えながら、笑顔を絶やさないように気をつける。


 でも、それはどこか「演技」だった。


 配信の中盤、私は視聴者参加型のクイズコーナーを設けた。レバニラに関する豆知識を出題したところ、チャット欄が盛り上がりを見せる。


「さすが、レバニラ姉妹の片割れ!」「この問題は澪ちゃんにも出してほしかった〜!」


 そのコメントが嬉しくて、でも寂しくて、私は笑いながらごまかした。


 配信の後半、私は少しだけ、自分の本音を話した。


「正直言うとね、不安なんです。今まで澪と一緒にいたから、楽しかったし、安心できた。でも、そろそろ自分の力で一歩踏み出さなきゃなって……」


 その瞬間、コメント欄が一気に温かくなる。


「りのちゃん、応援してる!」「澪ちゃんもきっと見てるよ」「レバニラじゃなくても好きだよ」


 涙がにじんだ。画面の向こうに、ちゃんと私を見てくれている人たちがいる。


 エンディングBGMが流れ始めたとき、まさかのコメントが表示された。


「今日のレバニラ、味濃すぎだよ」


 名前は書いてなかった。でも、どこかで見覚えのあるアイコン。


 澪だ。


 一瞬、喉の奥がつまった。


 澪は、私の配信を見てくれていた。


「……それでも、食べてくれてありがとう」


 私は小さくつぶやいて、配信を締めくくった。


 マイクをオフにして、椅子にもたれかかる。

 目を閉じると、澪と一緒に笑っていた数々の記憶がよみがえってくる。


 でも、今はもう一人だ。


 だけど——画面の向こうにいた皆と、そして澪と、どこかでまだつながっている気がして。


 私は、そっと笑った。

カクヨムで投稿しております。

よろしければ読んでいただき、評価していただけるとありがたいです。

https://kakuyomu.jp/works/16818622171293154777

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