表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

さらなる借り物

お読み頂き有難う御座います。

「……」


 いやあ……。色々有ったわねえ。

 疎遠真っ只中で絶縁してる叔父のゴミ屋敷遺産とか、他人より絆の薄い王族とか……。知りたくなかったわ。


 でも風薫る今日、私ことヴィーアは留学出来ました。

 だからテンション低めだけど、強引に意気揚々と入学式も終わり、寮に入ろうとしたのよ。

 直ぐ其処の、新しい寮! 私もピカピカの新入生だものね!

 心を切り替えて……切り替え……。


 ……フィールデン次官様、大丈夫かしら。ご家族を救う為に私の元へいらしたのに、何も出来ず……。最初は早く逃げたいと思ったのに、あまりにもあんまりで……。

 心に頑固なシミが残ったよう。


「ヴィーア・シュノーさん」


 折角寮に入ろうとしたのに。何かしら。

 振り向いた後にいたのは、緑の服の顰め面の中年男性だったわ。あの制服は……先生かしら。私のクラスの受け持ち担任の先生では無いわよね。


「予定が変わってね。国境近く荒地スッカンのチャーリー・デコイ寮に監督生として入って貰うよ」


 ちょっと待ってよ。何でよ。

 安堵と不安を織り交ぜたうら若き新入生に、寝耳に水をぶっかけられて良いの!?

 え、何? 私が何をしたって言うの。新しい寮よって、合格通知にも手続き書類書いてあるのに!!


「え? あの、聞き間違いでしょうか。学園近くのネテテ・モツーク寮ですよね!? 此処に! 書いてあります!」

「……君の輝かしい3位の成績を、チャーリー・デコイ寮で生かしてくれたまえ」

「監督生!? 新入生でですか!? 普通最高学年ですよね!? 入ったばかりのペーペーに何の監督権が!?」

「き、君の祖国から、優秀だと聞いているよ」


 ふ、ふ、ふ……ふざけんなあああ!

 ぜ、絶対横槍入れたでしょ! ウチの国から!

 ……ま、間違いない。あの金切り声(13)とワガママ王女(8)辺りの仕業だわ! もしくはその取り巻き!!

 ……フィールデン次官様はどうなってしまったのよ……!? 折角逃がして頂いたのに!

 まさか牢屋にお入りになってないわよね!? 王子様を投獄なんて非常識な……!

 ああ、でも国宝が無限収納(ゴミやしき)にあるって時点で非常識!


「考古学的課外学習も希望だとか」


 悩んでたら、先生の話も変な方向へ行ってる!?


「ちょ、え、はあ!?

 し、してませんけど!? 全く校外も課外も要りません! お外は危険なので、安心安全が守られた屋内学習しか希望してません!」

「た、単位は考慮しよう」

「こっ、困ります! 単位は自ずから勉強して取りたいのです!」

「我が国に関する……貴重品が出れば、金一封も進呈する。励んでくれ。本当に、真摯に頼む」

「……」


 貴重品ー!?

 そ、そっちが狙いか!!

 まさかの! 隣国も何かを叔父にパクられたパターンなの!? どうして!? クズなのに何なのよ、そのアホみたいに高貴な交友関係!

 大体、何処もかしこもセキュリティガバガバ過ぎじゃない!? もっと、己や国の持ち物を大事にして! ホイホイとパクられたくない物を貸すな! アレに貸すなら、穴あき靴下くらいにしといてよ!


「……それは燃える国宝ですか? 燃えない国宝ですか?」

「も……もう絶滅しかけの希少な薬草と花を詰めたいい香りの匂い袋、らしい……」


 くっ……。も、燃えない国宝が以下略……。

 何でそんなメルヘンな物を国宝にするのよ……。しかも有機物じゃないのおお。ドロっと以下略じゃないのおお! 布物も怪しいけど、中身が草って時点でもうデッドエンド……!

 ああ、見つけたくない……。匂い袋なんて受け継がずに個人消費した上、燃えるゴミにして!


「あと……」

「後!?」

「木製のオルゴールボックス……。楽譜カードごと……」


 燃えない物を貸すという発想が、何故ないの。袋も調度品も信用ない他人に二度と貸すなってのよ……。


 くっ、また焼き払えない国宝が増えた……。

 産まれた国の国宝(ドレスとヴェール)の時点で無理だったけど……。

 と言うか、ドレスにヴェールに匂い袋にオルゴールとか、何処の乙女グッズよ。国宝ならもっと頑強で強そうな燃えない物にして!


「それと、コレを……」


 ……あからさまにお高そうなお手紙を渡されてしまったわ……。

 罠の気配しかしない……。


「……私、バトル技能はからっきしで、魔術も武術も心得が全く無いんだけど……」


 囚われのフィールデン次官様の命が惜しければ、みたいなのだったらどうしよう。

 ああ、どうか。ゴミみたいな理由で、ゴミ屋敷に投げ込まれた国宝のせいであの方に害が及びませんように。

 彼が無事でありますように。


 ……ちょっと古代闇魔術を使った姿を褒められたからって、絆されてしまったのかしら。

 いえ、私は落ちぶれた貴族。お偉いさんに心を許してはならないわ。

 そう思うのに……。

 私を助けてくれたのよね。あのキンキン声の従妹から。

 ……騙そうとしていたのに、良心の呵責に囚われてしまわれた。私を褒めてくれたのよね。


 ……恐る恐る手紙を開くと、破るか棄てるか叩き返したくなる内容だったわ。

 ……どうやったら、煮え湯を飲ませる事が出来るのかしら。

 そういう考えすら浮かんでくる。


 そうだ。良いことを思いついた。

 古代闇魔術をお望みなのだから、古代闇魔術をお見舞いしてやればいいのよね。




ゴミ屋敷メーカーにして借りパクの達人、英雄マロロ。

親戚に居て欲しくない男No.1です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ