フェードアウトしたい秘密
お読み頂き有難う御座います。
気の毒なくらい落ち込んだお顔で、フィールデン次官様がお話しくださったのよね。
……くっ、動かれる度、椅子がガタンガタンしてるのが気が散る……。もっと良いのをお貸しすれば良かったわ。
「その、……姉が、いて」
「は、はい」
「英雄マロロ殿の妻のひとり……だった」
「お、お姉様が重婚被害者でしたか!?」
類稀なるイケメンであるフィールデン次官様のお姉様ということは、滅茶苦茶とんでもない美女なのでは。
……なのに、美女の夫が、あの叔父!?
会ったことあるかもだけど、顔は覚えてないわ。お父さんも、顔についてはコメントなかったから大した顔じゃないわ。でもワンチャン、ウチの一族らしい顔でなくとも……汚部屋メーカーなスカで根性カスでコソドロ系ダメンズなのに……。
叔父の重婚なんて、お金目当てのマダムを騙したとかだと思っていたのに……。それも重罪だけど、美女を誑かす才能なんて無いでしょ!
一体、何をどうして美女と結婚して、ハーレムを築けたの……。洗脳? でも、魅了系のスキルって火属性じゃなかったっけ……。
兎に角重婚は罪だから、どうやって法の目を掻い潜れたの……。火属性の素質も無いのに細かいことなんて出来そうにないのに……。
「フィールデン次官様……」
「貴族から離れていて事情に疎い貴女に黙っていて、申し開きもない……」
「ええと……さっきのごうと……乱入してこようとした子は」
「……マロロ殿は、重婚していて……」
「え、ええ」
あの金切り声キンキンが多分血縁上の従姉妹なんでしょうね。とってもかなり滅茶苦茶嫌だけど。まあ、縁切ってるからド他人ね。ミックスジュースと牛乳くらい別物で薄い関係だわ。
「俺の父は重婚が、許されていて」
「え」
重婚が許されている……。重婚を許される方なんて、この国にひとりしかいなくて……。
目眩してきた。
あの金切り声が言ってた、パワーワードのひとつ。
お金無しの王子様。
それは、比喩ではなく……。
「父の妻のひとりが、マロロ殿とその……通じてしまって」
「は、はああ!?」
ちょ、ちょっと……!
「お待ち下さい、フィールデン次官様! まさか、貴方の父上様はこの国で最も尊き方で……。
叔父がその奥方様を寝取っ……横恋慕して、貴方の姉君とも婚姻を仄めかして詐欺……男女の仲に」
「話が早くて、助かる……」
疲れと混乱でぶっ倒れそう……。狼狽えて足ちょっと机で打ったわ。痛い……。痛みで頭が冴えたけど。
つまり、国王陛下の奥方様……お妃様のおひとりと、フィールデン次官様のお姉様を侍らせたと!
そして、恐らく。
フィールデン次官様のお姉様は、王女様であらせられる……。
義理の母娘を……重婚ハーレムに入れたの!? 下衆ううう!
……しかし吐きそうな事実だけど納得。成程。そりゃ英雄でも何でも問答無用で極刑だわー。
縁を切って? 切られておいて良かったとしか言いようがない。シュノー家諸共断絶される所だったとは?
でも我がシュノー家はド田舎に散らばりド庶民化してるのと、身内が醜聞過ぎて構う余地が無くて……でも、国宝のことも有るしで、見逃されたのかしら。
お、恐ろしい……。闇深すぎて深く考えると気を失いそうだわ。古代闇魔術使いだけど、そういう闇とは縁遠いのよ! いや、闇でジャンル分けするのもどうかと思うけど!
「それで、あの金切り声を発していた失礼な方は」
「……父の、妻のひとりと叔父殿の……の娘で、キーキビーという」
おお。本当に金切り声みたいな名前だった……。名は体を表すってリアルなのね。初めて知った。
「お姉様に、お子様は」
「姉には息子が。貴女の従兄弟ということになる」
「王子、とは……」
「……姉と俺は、叔父殿の妻となったキーキーリ妃とは他の側妃の子で……」
王の側妃が叔父の妻のひとり……。と言うか、側妃様の名前まで似ててややこしくて喧しいな。名は体を以下略なのね、きっと。
フィールデン次官様も王子様でいらっしゃるのよね。この流れだと。義理の母娘に叔父が手を出したというショッキング醜聞で薄れてたけど。
「王子様であらせられる……のですね」
「薄い薄い継承権だが、一応……」
ひいい……。
偉そうじゃなくて、とんでもなくお偉かったのね。どうしよう、不敬罪……!
現国王の側妃は8人居るそうです。夫婦仲もお妃様同士もテンプレギスギスです。