闇に目を凝らす
お読み頂き有難う御座います。
「何か見えたか?」
「……ガラクタとゴミの山しか見えませんね」
くっ、そんな情熱的に見つめられても困るわ。
頑張って見ようにも辛うじて何か……積まれた紙の束は見つけたけど、他のゴミに押し潰されて、見えないし何か分からない。
……動いてるようにも見えるし! チラッと見えたのまさか水!? 何入れてんのあのアホ叔父!
「ゲホッ! 見てるだけで目が乾く! ホコリにやられそう!」
「古代闇魔術の中でホコリ!?」
「綿ボコリも丸ごと詰め込まれてましたよ!
あのオッサン! 何処かを掃除したゴミも丸ごと投げ込んだみたいです!」
「……本当のゴミもなのか」
信じらんねえ、みたいなお顔されてもなあ。この流れでガチのゴミが無い訳ないでしょうに。私だって、御伽噺の魔法のようにキッチリ整理整頓されていて欲しかったわよ。
「そうです。
それに他人のスキルの中って、物を探すのにも息苦しいんですよね」
「故人の親戚の家に、無理に邪魔するようなものか?」
「いえ、違います。気持ちの問題とか勝手が違うとかではないのです。
この中は単なる倉庫じゃ有りません。
下手な装備で乗り込めば、物理的に息が続かないんですよ。私は確かに身内であるせいか、辛うじて中身が見えはしますよ?」
目は滅茶苦茶疲れるけどね……。これ以上続けたら眼精疲労で頭痛まで負う羽目になるわ。片付けも残ってるのに辛すぎる。
「その中から国宝の位置は探れないのか」
「暗いですし、私の目には見える範囲全てゴミなのですってば」
渋いというか苦虫噛み潰したようなお顔なあ。仕方ないけど……。
でも、思い悩む様もとってもイケメンだわ。
くっ、伸び放題の木から溢れる木漏れ日にも光り輝いてやがる。
あー、つい絆されそうなイケメン顔、見てたくない。強い心で拒否するから、お帰り頂きたいわ。無理強いされてるのに心が動きそう……。
「中には、入れないのか?」
「御冗談を。
あの叔父の趣味と惰性で積み込まれたゴミ屋敷ですよ。何の危険があるや分かりません。
金銀財宝どころか、未知の生物の死骸が入っているかも?」
「未知の生物の死骸……」
いや、本当に冗談じゃなくて。
家を出てく前、普通に部屋に生き物の死骸とか有ったらしいのよ。無為な殺戮とか、本当に酷すぎるわ。何処らへんが英雄行為だったのかしら。単なるサイコパスよね。
「例えば今、風穴を開けたから息を吹き返したかもしれませんよ。
まあ、出せるものなら連れてこられては? 何かあっても困るので、私の無事を示して一筆認めて頂けます?」
「……私は古代光魔術の素質が有るのだが」
「えっ、矢鱈光れるあの……」
脅したのに、変な後出しでカウンターとはやるわね。突然の告白止めて頂きたいわ。ビックリしたー。
古代光魔術なんてレア中のレア過ぎて、ボヤッと光れるとしか伝わってない奴じゃないの。古代闇魔術も大概役立たないから、スルーの憂き目だけどさ。
「流石、シュノー家は造詣が深いな。……私の光魔術は、闇魔術と中和が可能なんだ」
「まあ」
成程、それでこの任務に……。とってもお偉いさんそうなのに、こんなド田舎に……。
思わず同情の眼差しを向けてしまったわね。因みにセットで語られがちだけど、特に古代光魔術の使い手と古代闇魔術の使い手に血縁とかは無いわよ。
「時を止める闇と、時を進める光……。私の光魔術でコーティングすれば、この中を探せるのではないだろうか。3分位」
「3分」
無理だろ。
私の留学荷物どころか、箪笥1段ですら片付かんわ。
流石伝わってないだけ有るわ。本当に役立たんのね、古代光魔術……。いや、迷惑かける闇魔術より役立たない光魔術の方がマシかぁ。泣けてくるわ。
「……」
「……やはり、無理だろうか」
「普通のお部屋の失せ物探しが、3分で見つかった覚えはお有りで?」
「無い……」
そうよね。
と言うか、キッチリしてそうな見た目してらっしゃるけど、失せ物探しとかされるのね。
ちょっとキュンとしてしまったわ。
「しかし、古代闇魔術というのは……術者本人が星の瞬きのようだな。しっとりと麗しい」
「……あっ……りがとう御座います?」
詩的な表現でお褒め頂いちゃった。
でも……無限収納の中を必死にガン見する様子でなきゃ、嬉しいんだけれどね……。
主人公ヴィーアはくっ!が脳内口癖です。偶にリアル口調でも出ます。