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元令嬢は無限収納の相続人を辞退したい  作者: 宇和マチカ


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中庭で求愛を

お読み頂き有難う御座います。

 えーと。

 マリーエバー王女様……帰ってこないわね。

 眼の前には、と言うかお隣には銀の髪に青い目のイケメン……。二度とお会い出来ないと思ってたフィールデン次官様。


 ……何だかこう、モゾモゾするわね。二度とお会いしないと思ってたからこう、自棄になったといえ、お、乙女心を暴発させられたというか。


「……顔を上げてくれ、ヴィーア嬢」

「あの……」


 さっきのマリーエバー王女様のお言葉が都合のいい幻聴過ぎて、お顔が見づらいと言うか……。

 滅茶苦茶汗だくで、お近くに寄られると臭いがしないか気が気じゃないと言うか……。動悸と息切れのせいで、鼻が詰まって、顔面が余計汚くなりそうって言うか。


「驚いたと思うんだが、聞いて欲しい」

「はい……。スッカ……スカーレット・カンナのご領主就任おめでとう御座います……」


 こっちは幻聴じゃないわよね。お母様とお姉様と甥御様とご家族仲良く暮らされるのよね。

 ちょっと領地が荒地なのはアレだけど……。きっと、ゴミ屋敷の中身を焼いた後発展するんだわ。出来るだけ早く完遂させなきゃね……。学業の傍ら、ゴミ屋敷のゴミ焼きとか中々ハード過ぎるけど……。バイト代出るかしら。


「本当は、シュノー子爵に領地を返還したいのだが……」

「えっ……!?」


 え、待って。

 荒地スッカン……いやスカーレット・カンナって、元々シュノー子爵家即ちウチの領地だったの!?

 ……マジなの!? 子供の頃に引っ越したからサッパリ覚えてやしない! 小さかったから手放した領地のことは、親に聞こうとも思わなかったし!


「子爵、君のお父上はもっと小さくてささやかながらも川と街道に繋がった所が良いと……」

「そ、そうですか……。父がし、失礼を……」

「いや、そんなことはない。長年ご苦労されたのだ。マリーエバーとも話し合ったから、希望に添えると思う」


 おおい! 何気に何で良いところを強請ってるの!? お父さんも大概図々しいな!! 今度会ったら王族に不敬だろって叱らないと!!


「何故フィールデン次官様がウチの父とお話を?」

「……それは、お会いするだろう?」


 くっ、思わせぶりに頬を染める様が可愛らしいとか、困るわ。

 さっきの幻聴を妄想しちゃうじゃないの! 去れ煩悩! 子爵令嬢になったとしても、王子様には不相応! 身分違いは御法度! 本に載ってるのよ!


「私は5番目の王子で側妃の息子。母の実家も伯爵家で何の旨味もない。マリーエバーを仰ぎ見て暮らすことになるだろう」


 普通にとってもお偉いお立場じゃないのよ。

 それに側妃様であられるお母様のご出身が伯爵家? 子爵より爵位が上じゃない……。私は急に貴族復帰? しても中身がガチ庶民だし……。

 ……物凄くそぐわないわね。妄想も吹き飛ぶレベルで相応しくない。ちょっと古代闇魔術(つかえないまじゅつ)使えるだけだし。


「私にとって、フィールデン次官様がお偉い方には変わりありませんよ」

「親族のせいで爵位を奪われても、逆恨みせず粛々と静かに仕事を見つけ、暮らしてゆく。

 そんな貴族は私が知る限り居ない」


 少し荒れた手が、私の手を握っておられる……。

 え、どうされたの……。これって、私の手に触られる妄想……!? リアルだわ!


「そんな高尚なものでは……」


元々そんなにいい暮らししてなかったっぽいのよね。ウチの一族、欲深でもないし。叔父がイレギュラーなだけで。


「高尚だ。今よりいい生活をという甘言に乗った愚か者の私より、ずっと」

「いえそれは、ご家族が大事だったからでしょう? その……守ってくださるべき方が、お傍に居られなかったのですよね?」


 国王陛下のせいとは大っぴらには言えないけど。

 普通、奥様と子供が困ってたら助けるわよね? 貴族らしく家とか世間体とかの為でもいいわよ、この際。

 王子様でいらっしゃるこの方が、御手を荒らしてまで困難に立ち向かうなんて……。

 平和に見えるこの国で、中々有り得ないことだと思うのよ。


「私の周りに、そんな風に慮ってくれる女性など居なかった」

「そ、そうですか? そんな馬鹿な……」


 見目麗しくお仕事も高位そうだし、実は王子様なんて普通に爆モテなんじゃないのかしら。

 不遇なアナタのことアタクシ超分かってるから! 的媚び媚びレディに囲まれてそうだけど。それが嫌なのかしら。気が合いそうなレディをお選びになればいいのに、贅沢ね。


「何故疑問なんだ」

「何故も何も見目麗しい美丈夫ですし、地位も高くてらっしゃいます。弁えた賢い高位貴族の御婦人に好ましく思われて……っ、あの。近いですけど」

「君にとって、私の容姿は好ましいのだな」


 ……何故前のめりに迫ってこられるの。机を退けてまで寄ってくるのは何故……。

 この方、朴訥でクールなのか押しが強いのかどっちなのかしら。家族愛(父親抜き)が強いのは分かるけど。


「ヴィーア嬢の見目は勿論麗しい。

 だが、その辛抱強さと兼ね備えた他人の為に身を投げ出す献身が危なっかしくて、傍に居たい」


 傍に痛い? え、何が痛い……。

 いや……傍に居たい?


 え、フィールデン次官様が? 

 私の傍に……? 居たいですって?

 ヤバい。他に何かお褒めくださったお言葉が幻聴だと思い込みすぎて、頭からスッポ抜けたわ。


「私を助けてくれたこと、感謝する。

 一生を懸けて貴女を大事にする。好きに勉学に励んでくれ。卒業するまではマリーエバーの頼みも、その内片手間で構わない」

「……いやその、ええ?」


 片手間じゃ駄目でしょうよ。

 え、勉強してもいいの? 私、隣国……というか、国境曖昧な荒地から学校通うの?

 と言うか、婚約って本当なの?


「強引に事を進めてすまない。元来私は、心配症で短気なんだ。

 くれぐれも、逃れられるとは思わないでくれ」


 ……何だか物騒なこと仰ってるわね。……こんな疑問だらけのお話が、夢オチだったらどうしよう。もう一回見たいから二度寝かしら。


「過ごした時間は短いが、私は貴女に惚れ込んでいる。

 ヴィーア、どうかこの求愛に肯定を。縦に首を振るか頷くかハイで応えてくれ」


 まさかの一択。あれ、もっとこう、慎ましい感じの方じゃ無かったっけ。いや、私も猫かぶり……きれてるかは不明だけど。最初はガンガン言っちゃったしな……。


「いやあの、短気は損気ですよ……? よく見てください。眼の前にいるのは、ちょっと古代闇魔術が使えるしがない元貴族な凡人です。

 もっと将来をよくお考えになった方が」

「成程、思わず肯定したくなるように長らく求愛した方がいいと。頑張ろう」

「つ、謹んでお受け致します……」


 ……こんな方だったかしら。

 前向きな光魔術使いなのに、ちょっと闇の気配を感じるわ……。求愛も嬉しいのに、現実感が全く無い……。

 夢オチだったらどうしようかしら。二度寝しかないわね。

 ……そして、フィールデン次官様。早速手が早い。

 でも、体のダルさが取れてる……。古代光魔術効果!? 叔父の闇の魔力を掻き消した!? どうなってんの!?

 他で試そうにも、他の人とキスはしたくないし、されたくない……わ。



因みに、ヴィーアはフィールデン次官様のファーストネームを失念しており、その内怒られます。

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