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元令嬢は無限収納の相続人を辞退したい  作者: 宇和マチカ


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緋の花の城

お読み頂き有難う御座います。

「それで、早速だけれど……。

 何故、貴女の叔父は英雄になったのか知っている?」

「縁を切られましたので……。興味がなかったのも有りますが、存じ上げません」


 折角平和になったウチには、強欲ゴミ屋敷野郎にお戻り頂きたく無いもんね……。普通に不愉快だし。

 まあ、没落してから普通に一族は各々バラバラに暮らすことになったんたけど。

 しかし、大きなお城で、美しい中庭で美形兄妹とテーブルを囲む……。お庭には、赤いカンナが沢山咲いてるわね。お金掛かってるんでしょうね……。

 こんなシチュエーション、本でしか見たこともなくて、顔とありとあらゆる関節から変な汗が滴りそうよ。

 くっ、また借り物の服を汚してしまう……。


「第一王子が気に入ったのよ。見た目で判断するだけのくだらない男でね。側妃の息子よ」


 一体何を気に入ったのかしら……。叔父の良さげな面なんて、ゴミ屋敷な無限収納くらいしかないけど。


「第一王子様のお気に召したのは、古代闇魔術でしょうか?

 あの借りパクやろ……コソドロ気質に、荷物持ちは向かないでしょうが……」

「くだらないお忍び中の第一王子を助けたらしいの。

 そして、愚かにも見た目で英雄だ英雄だと持て囃した」


 ……えー意外。

 叔父って、王子様に認められるようなバトルに耐えられる戦闘能力有ったのね。トコトン腕っ節の弱いウチの一族には珍しいわ。まあ、どうでもいいけどね……。


「第一王子様が、叔父の容貌を英雄らしいとご判断を……? 

 失礼ですが、そんな凛々しい顔でもないかと……」


 遭ったこと多分無いから予想だけど、あのキーキーの娘の顔からしてウチの一族顔よね。

 どう英雄だと持て囃したのかしら。やはり詐欺行為? 


「背中と瞼の古傷を見せてきたらしいわ。歴戦の英雄の証拠だって」


 うわ、よりによってそれ!?

 それ聞いたことあるやつー。お父さんの駄目叔父愚痴コレクションの中でも、上位のやつじゃないのよ!


「背中と瞼の傷……。それは歴戦ではなく……。

 幼い時に不摂生と不衛生で出来たオデキが破裂して出来た傷なんですよね……」

「……」


 フィールデン次官様とマリーエバー王女様って、似ておられないなと思ったけど。ドン引きのお顔が若干似てるわね。


「アホらしい理由なのに治療費が嵩んだと、父が嘆いておりました」

「……世渡りの方法全て胡散臭い男ね」

「はい、クズなので……」


 多分そんなテキトーな嘘で、他の人や王族を騙して色々借りパクしたんでしょうね……。

 嫌だなー。隣国の国宝の匂い袋とオルゴールボックスも探すの嫌だなー。


「その下衆が集めた無限収納だけど」

「はい」

「ヴィーア嬢は、中身を出せるのよね」

「あ、はい。……体調が回復致しましたら」

「やはり、無理をしていたのだな」


 おお、フィールデン次官様が私を心配してくださっているわ……。

 申し訳無いんだけど、未だ纏わりつく叔父の魔力が気持ち悪いのよね……。

 うう、仕方ないとは言え、叔父の無限収納なんかとくっつけなきゃ良かった。あんな気持ち悪い魔力持ちだもんな……。本人と遭わずに済んで何よりよ。


「フィールデン次官様も、昨日はご協力有難う御座いました」

「無理を言ったのは此方だ。しかし、あんなに効果覿面だとはな……」

「そう言えば、どうやってあのゴミ共を誘き寄せたの?」


 マリーエバー王女様は、ちょいちょいお口が悪いわね。まあ、あのキーキー母娘と御一行様は好かれるタイプじゃ全く無いけど。


「はい。古代光魔術を中に詰め込まれているゴミに込めてくださいますよう、フィールデン次官様にお頼みしました」

「成程ね」

「上手く中に入れさえすれば、良かったんですが」


 あんなに簡単に入るとは……。警戒心とかゼロすぎて、本当に側妃だったのかしら。よく王宮のアレやコレや的な権謀術数の中に居たわね。


「まあ、ゴミは出したら燃やせばいいだけね」

「はあ……」


 お、思い切りが良いな……。いえまあ、私にも異論は無いけど。


「それで、本題だけど」


 ……くっ、来たか。

 私には叔父の無限収納の中身を全部出せってことよね。

 空っぽの無限収納をお求めだもの。

 さっき窓から見えた荒地スッカンにバラ撒いて燃やせってことよね……。ちょっとずつやらないと体力持たないし、異臭に耐えられるかなあ……。

 それこそ匂い袋でも必用よね……。強烈な臭い消し……。


「お兄様に、このスカーレット・カンナ城を拠点にこの荒地スカーレット・カンナを領地としてお治め頂くの。

 貴女の父君ダントン・シュノー元子爵令息には子爵として復帰して貰って……。

 ヴィーア嬢はシュノー子爵令嬢として……取り敢えず婚約ね」


 へー。スカーレット・カンナ城ってこのお城の名前なのね……。確かに中庭オンリーだけど、カンナの花が咲いてるもん。

 んん? スカーレット・カンナ……スカーレット……カンナ……スッカン……。

 ……そんな豪勢な正式名称だったの、荒地スッカン。今回は、名は体を表さないみたい。

 それにしても、酷い悪意を込めた略し方ね……。流石縁起悪い土地……。


 ……って、ちょっと待って。

 え、え、え……。今何て言われたの私!?

 お父さんが子爵!? え、取り敢えず、何!? 聞き間違い待った無しだけど、何だって!?

 ……疲れが難聴というか、幻聴に……!?


「堅実な末路に到れるよう頑張って、お兄様」

「え……」


 ちょ、ちょっと……。狼狽えてたらマリーエバー王女様、庭の奥へ行っちゃった……。

略されて酷い名前になってましたが、古代都市(現荒地)の名前はスカーレット・カンナでした。


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