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第93話:ちょっと過去のこと2


「……ッ……ひぐ……ぅう」


「…………ほわぁ」


 で、映画を見たのだが。名探偵納言。さすが毎年クオリティの高い作品を作る大御所で。起承転結がはっきりしながら、最後まで飽きさせないギミックを次から次へと。そして最後になぞが明らかになり、人間ドラマでクライマックス。


「感動したぞぅ……」


 元々感性が鋭敏なのだろう。ルイは感涙していた。その隣でタマモが呆然としている。こっちも泣いてはいないが、作品の質の高さに茫然とはしているらしい。俺としても誘った甲斐があるというものだ。


「面白かったな」


「超イケ」


「…………チャイルドが素敵でした」


 なわけで、オレンジジュースを飲みながら、次のエンタメへ。庵宿区はデートスポットとしても有名で、デートに必要な場所は色々と揃っている。さて、ではどうするかという話で。まずは予約したランチの店に行く。ハンバーグ店だが、超絶人気。なので俺は予約をしていた。


「すいません。予約していた佐倉なんですけど」


「あぁ、はいはい。佐倉様。個室をご用意しております」


「ハンバーグ屋さんだぞ?」


「最近SNSで流行ってるから来てみたかったんだ。ハンバーグ専門店。もちろん俺の奢りだから二百グラムでも三百グラムでも好きに頼んでいいぞ」


「百五十グラムで」


「…………同じく」


「遠慮しなくていいのに」


「そう言う問題じゃないぞ」


「…………右に同じ」


 さいか。俺はハンバーグ定食の二百グラムを頼んだ。二人は定食で百五十グラム。しめて五千円をちょっと超えるくらいだ。


「おお、美味いな」


「口の中でほどけるように消えていくぞ」


「…………また肉汁が良い味をしていまして」


 しばらくうまうまと食べる。食後はデザートにケーキとアイスのセット。それもスマホで写真を撮って、グーゴルにアップする予定だ。飯を食ったし、映画も見たし。


「解散?」


「もうちょっと付き合え」


 そして店員さんに電話でタクシーを呼ぶように伝え、店の前にタクシーを呼びつける。三人で乗って、そのまま庵宿区を縦断。今度はエンターテイメントパークに来ていた。すっげー分かりやすい表現をすると水族館。


「おー」


 ルイが目をキラキラさせている。フレームの太い眼鏡の奥で、キラキラしているのは見て取れた。


「…………なんで水族館です?」


「いやー。最近見た百合アニメで水族館に行くシーンがあって」


「さかなー」


 で、それを視聴していたルイが、両手を合わせて前に突き出し、片足を後ろに突き出した。うん。それそれ。


「ああ、リコ〇コ」


「それそれ」


 なわけで水族館もありかなーと。


「…………では参りましょう」


 するっと俺の腕に抱き着いて彼女面をするタマモ。ルイは目をキラキラさせて、興味が水族館に移っていた。俺はと言えば三人分のパスポートを買って、そのまま入館。一応結構持ってきたが、最近の決済はキャッシュレスなので財布の出番はそんなにない。


「チンアナゴ見ようだぞ」


「あー。作中でやってたな」


「…………あたしはペンギンが見たいです」


「それもいいな」


 両方回るとして。


「…………マアジは何処に行きたいですか」


「タツノオトシゴを見たい」


 特異性で言えばかなり上ランクの魚。


「まぁクラゲとかも見ごたえあるだろうし、順番に回っていくか」


「チンアナゴ~」


 で、リコリ〇をヘビロテしていたルイがチンアナゴにテンション爆上げだった。こいつが最も楽しんでいるな。


「…………あ……タツノオトシゴですよ」


 で、今度はタマモが目ざとく気付く。水槽にタツノオトシゴが保護されており、何やら魚らしくない軌道で泳いでいた。


「…………へー。……オスが妊娠するんですね」


「妊娠っていうか。子ども預かって産ませるんだが」


「…………いわゆるメス堕ち?」


 それもちょっと違うような。


「…………マアジは子供産みたいとか思います?」


「あんまりメス堕ちはしたくねーな」


「ボクが写生できたらなー」


 多分ルイの発言は変換する漢字を間違えているのだが、ここでツッコむのは野暮だろう。


「マアジを犯して孕ませたいぞ」


「やれるもんならやってみろ」


「じゃあペニバン買う?」


「せめてそういうネタ系は人のいないところでオナシャス」


「妊娠願望は無いんですか?」


「あんまり女性の肉体に憧れはないな。まぁ男だから女性孕ませて喜んでいるという時点で有難みが無いんだが」


「孕ませてくれてもいいんだぞ?」


「…………マアジとの子供なら幸せでしょうね」


「言っている意味は分からんじゃないが」


「最近は子宮の移植手術も可能だのどうのこうの」


 まだ現実味はないがな。


「マアジも孕んでくれていいんだぞ? 一生幸せにするから」


「そういうのはシュワルツェネッガーを相手にしてくれ」


「なんで?」


 あー。このネタが通じないのか。


「次はペンギンだな。俺としてはウミガメとか見たいが」


「川のカメはちょっと引くけど、ウミガメって可愛いイメージあるボクって異端?」


「いや。気持ちはわかるぞ」


 なんか雄大に海を泳いでいると亀スゲーってなるけど、川にいると寄生虫とかに纏わりつかれてそうで怖い。


「…………マアジ」


「どした? キスでもするか?」


「…………ペンギンショーが」


 それは見らねば。というわけでペンギンショーに急ぐ俺たち。


「やっぱり俺たちのペンギンみたいに仲睦まじい夫婦になりたいよな」


「間違いないね」


「…………仲良し夫婦でいましょうね」


 この際どっちと婚姻するのかとかは野暮なので言わないとして。それでも水族館の催し物は楽しめた。海の生物って見ているだけでテンション上がるからお得だよな。クラゲコーナーも可愛いクラゲが沢山だったし。何より光るクラゲがイルミネーションっぽかった。


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