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第53話:サキュバス


「おにーーさん!」


 ドタドタと寝室から現れたサヤカは顔を真っ赤にしていた。


「おう。起きたか。飯食うか?」


「この鬼畜!」


 えーと。俺何かしたか?


「あそこまで人の感度を上げておいて何もせず放置にゃ!? これが鬼畜でにゃくてにゃに!」


 あー……。


「やっぱりあの夢は共有されているのか……」


 道理でリアリティがあったわけだ。


「サヤポンはサキュバスにゃの! 相手にエッチな夢を見せることができるにゃーよ!」


 サキュバスね。


 相手にエッチな夢を。


「ちなみにそれ。世間に公開してるか?」


「してにゃいけど」


「やめとけよ」


「わかったにゃー」


 話はそれで終わりじゃなかった。


「お、おはよう」


「…………おはようございます」


 さらにルイとタマモも現れる。二人は互いをチラチラと見て、それからむず痒そうにアワアワとしていた。


「どうかしたか?」


 俺は四人分のトーストとポタージュスープ、それから目玉焼きとサラダを用意する。


「えーとー。そのー」


「…………ちょっと。……昨夜は」


「ん?」


 首を傾げつつシャクッとトーストを食む。何かあったんだろうか。


「おにーさん? わかるにゃーよ」


「いやさっぱり」


「あんな女の子をメスに堕とす感度数百倍で! ついでに腕を使用不能にして! しかもオティヌティヌを持ってない女子が三人夢世界に放置されたら! どうにゃるにゃーよ!」


「お、おう」


 思ったより事態が深刻であるらしい。たしかにそれを言われると、俺も想像がついてしまった。


「気持ちよかったか?」


「…………不本意ながら」


 カァッと顔を赤らめて、タマモがそう言った。ワンフォーオール。オールフォーワン。女の子同士でしてしまったのだろう。それも手を使わないで。じゃあどこを使ったのかという議論はセクハラなので言わないとして。


「ていうかいつもあんな倍数で感度上げているぞ?」


「人よりニブチンだからさ。ルイとタマモは知ってるだろ」


「あー」


「…………あー」


 そういうことです。


「にしてもオーバリストがアイドルをねぇ」


「オーバリスト?」


 何ソレ。と三人が尋ねる。


「エッチな夢を見せる異能のこと。サヤカの能力なんだろ?」


「肉体的な接触をしたら、その人の夢に介入できるにゃーよ」


 ああ。それで握手会を。爪牙に掛かったファンにはお悔やみ申し上げたい。


「そういう説明のつかない能力を持つ人間をオーバリストって呼んでいる。佐倉財閥が日本では管理しているんだが」


「あれ? じゃあサヨリさんって」


「ああ、サヨリ姉もオーバリストだ。まぁだからこそって感じなんだが」


「にゃにかマズいにゃ?」


「マズくはないが。日本のオーバリストは佐倉財閥の管轄だから。バレたら回収されるな」


「回収て」


「別に酷いことをされるわけじゃないが、ちょっと脳波とか肉体機能を調べられたりするな」


「にゃー」


「なわけで、あんまり好き勝手やってると財閥に回収されるぞという忠告なわけだ。危機的な状況ではないんだが、やっぱりこう自由主義とは相反するからな」


「じゃあマアジも?」


 そこが難しいんだが。俺は人為的に開発されたオーバリスト。天然物ではない。もうちょっと正確にいうとオーバリストを科学技術で作り出す実験の産物と言える。もちろんそんなことを此処で言っても引かれるので言わないのだが。


「おにーさん。ニブチンにゃのにゃ?」


「色んな意味でな」


 シャクリとトーストを食む。


「さて、じゃあ」


 御馳走様でした。


 俺は四人分の皿を洗って、それからシャワーを浴びる。今日はオメガターカイトのダンスパートの練習らしい。一回学校に行ってから、三人は放課後集まるらしい。


「とすると、杏子とも……」


「まぁ」


「…………はい」


「杏子お姉ちゃんと何かあったのにゃ?」


 何も無いとは決して言えないのだが。


「にゃー?」


「とにかく。不安にだけはさせるなよ?」


「もう遅いと思うぞ」


「…………微力を尽くします」


 杏子だって悪意があってやったわけじゃない。俺を独占したかっただけだ。もちろんそのやり方を間違えていることは俺も否定しないが、決して俺を攻撃したかったわけじゃないのだ。


「それでマアジは納得できるぞ?」


「否定するよりよほどいい」


「むぅ」


「杏子お姉ちゃんと何かあったのにゃ?」


「お前には教えない」


「にゃんで!」


 フシャーと猫の威嚇をするサヤカだが、多分コイツは空気を読めない。俺と杏子の間に在る確執を知ったら、率直に言ってしまうだろう。そうすると俺とルイとタマモの関係がバレてしまう。


「教えて。おにーさん。エッチな夢でお尻でさせてあげるから♡」


 まぁ。なんていうか。俺って女の子から見て癖を歪ませている男に見えるのだろうか?


「とにかく杏子に攻撃するなよ?」


「したいけど」


「…………難しいことを仰います」


 本気でマズいぞ。俺ってサークルクラッシャー? いやアイドルグループをサークルに例えていいものかは俺にもわからんのだが。


「じゃあ今日もおにーさんとはエッチな夢を」


「お前は自重しろよ」


 俺としてもオーバリストの扱いには慎重になってしまう。そうじゃなくても一般的にオーバリストの立ち位置はまだ決まっていないというのに。


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