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第32話:モミジ


「……ふわぁ」


 昨夜も俺は頑張った。疼く性欲を抑えて、ルイとタマモと一緒に寝た。もちろん此処で言う「寝た」は睡眠をしたに相違ない。俺に抱き着いて寝るルイとタマモは少し可愛らしいがぶっちゃけアイドルとしてはどうなのかという話にもなり。


「…………うぅん……マアジ」


 タマモは俺の夢を見ているのか。俺の名を呼ぶ。


「……モミジ」


 で、ルイは俺ではない名前を呼ぶ。


 モミジ。


 そんなオメガターカイトのメンバーはいなかったはずだが。別の知り合いの夢を見ているのか。まさか男だったり? いやだわー。そういう妄想。


「じゃ。飯でも作るか」


 朝食を作るのも俺の仕事だ。


「で、お前らは今日も仕事か?」


「だぞ」


「…………ですね」


 フレンチトーストとコンソメスープ。添えるようにサラダ。今日の朝食はそれだけだ。


「マアジもフェス来るよね?」


「まぁそうだな。行かない理由もないし」


 オメガターカイトの推しであることも事実だ。杏子には未だ感情の整理がついていないが。


「杏子のこと考えてるぞ?」


「まぁ色々とな」


 考えないわけもなく。


「じゃあどうやったらマアジは忘れるぞ?」


「さー。どうなんだろうな」


 特に忘れていい事とは割り切れず。


「…………エッチすれば忘れるのでは?」


「あ。タマモ。いい考えだぞ」


「却下」


 俺にはそんな責任は負えない。


「本当にモーホーじゃないのよね?」


「俺のパソコンデータを見るか?」


「見る!」


 まぁ見せないんですけどねー。


「…………ライバルも増えましたし」


「サヨリ姉について言ってるなら杞憂だぞ」


「…………あの人。……マアジを好きすぎませんか?」


「基本的に惚れっぽいんだよ。俺はサヨリ姉の毒を克服する今現在唯一の存在だから構われているってだけ」


「そもそも何でマアジはミストルテインを?」


「さあ。その時の記憶が俺には無い」


 まさか神経毒を飲んだわけもなく。


「…………佐倉財閥……ですか?」


「そう言われてるな」


 佐倉財閥。日本の古流財閥の一つだ。別にだから俺が金持ちだと自慢する気はないが、俺の家が金持ちであることも、あるいは否定の難しい難題だ。


「マアジってお金持ちだぞ?」


「だから否定はせんが。俺じゃなくて家がな」


 そのことを露見する気もないが。


「お金持ちかー」


 お前。玉の輿にでもなる気か?


「ところで」


「何だぞ?」


「ルイの言うモミジって誰だ?」


「どこでそれを……?」


「寝ている時に言っていた」


「あー」


 狼狽える……とは違うが、納得したようにルイは頷いた。


「男の子だぞ」


「それは寝言を言うほど大事な存在か?」


「そうだぞ。モミジはボクの好きな人だった」


「過去形?」


「今はもういないから」


「死んだとか?」


「と、言われているぞ」


「今でも好きだったり」


「かもね」


 ニコッとルイは笑む。


「…………じゃあマアジはあたしに譲ってください」


「ダメだぞ」


「…………何故に?」


「ボクはマアジが好きだから」


 グジュッとフレンチトーストを食むルイだった。


「モミジさんはいいので?」


「よくはないけど……どうしろと」


「…………あたしがマアジを想う。……ルイはモミジさんを想えばいいのでは?」


「それで納得すると思われる方が意外だぞ」


「結局モミジって誰なんだ?」


「誰って言われてもだぞ」


 すでに故人。それはわかる。


「マアジは気にしなくていいぞ」


「いや。気になるから」


「嫉妬だぞ?」


「そうかもな」


「……ふえぇッ?」


 そこで赤面されると、俺としてもどう扱えばいいのか分からんのだが。


「ズルいぞ。それは」


 何が?


「マアジはもうちょっと自分が乙女に与える影響について知るべきだぞ」


「お前はモミジ氏が好きなんだろ?」


「マアジが好き」


 それを今更言うのか。


「例えばマアジがモミジだったりするかもよ?」


「俺が記憶を無くしているのは事実だが」


 ミストルテインを移植される前のことを俺は憶えていない。


「つまりボクはマアジの過去を知っている!」


「はいはい。お疲れ様でしたー」


「もうちょっと付き合ってよー!」


 俺がそのモミジだとして何を言えと。既に記憶もフォーマットされているのに。


「…………マアジもビッチは嫌ですよね?」


「そうだな。積極的なアイドルとかな」


「示威行為をしているくせにー」


 しょうがないだろ。そうでもしないと俺は自己に疼く性欲を処理できない。


「してもいいんだぞ?」


 その態度でファンの前に立つ気か?


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