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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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第154話:どちらも彼女じゃないんだが


 うーむ。一応学校側には説明したが、最大限の譲歩は駐車場までだった。何かといえば傭兵派遣会社クールエールの社員だ。今のところ送り迎えの傭兵が車の中で待機して、女性と男性が交代で警戒している。さすがに校舎に入れると目立つというか。学生を不安にさせるので、拝み倒して駐車場までは納得させた。そもそも犯罪組織に狙われている学生を校内に入れることが経営側からしたら有り得ないのだが、そこを拒否するとネットで炎上するだろう。SNSで呟かれようものなら、オメガターカイトのファンがウチの学校をこき下ろす。結果、折衷案として、駐車場で傭兵待機で妥協させた。そのお膳立てをした俺は、そもそも教室でスナイパーライフルに狙われたらと気が気ではなかったが、教室と校庭の関係から遠距離射撃は現実的ではない、とプロにお墨付きをもらっている。


「…………」


 仕方ないのでサバの味噌煮定食を食いながら、今日の昼休みを過ごしていると。


「失礼」


 二人掛けのテーブルの対面に毒島さんが座った。


「…………」


 サバをモグモグ。


「あの、他にも席開いてますが?」


「ここがいいのよ」


「あ、さいですか。じゃあ俺が失礼をば……」


 食べかけのサバの味噌煮定食をお盆ごと持ち上げようとして。


「ここで食べればいいじゃない」


 ギュッと強く毒島さんが俺の足を踏んできた。まさに逆らったら殺すぞとでも言わんばかりに。


「足、痛いんですけど」


「私は心が痛いわ」


 なんか距離感近くねえ? あんな仕打ちをした俺に近づこうとするその度胸は買うが。


「とり天定食か」


「美味しそうでしょ?」


 まぁ俺も好物ではある。


「食べさせてあげましょうか?」


「御遠慮しておく」


「恥ずかしがらなくていいのに」


「そういうのは好きな奴とやれ」


「そうね」


 さらにギュッと足を踏まれる。言っておくが俺にMの気質はそんなにないぞ。全く無いわけじゃないが。


「あなた、好きな人はいるの?」


「いるぞー」


「角夢を庇っていたモノね」


「まぁあれはフグ毒みたいなものだがな」


「臓物を食った私が悪い、と?」


「悪くは無いよ。愚かではあったが」


「そういう意見は斬新ね」


「っていうか、俺と一緒にいていいのか」


「他の人間よりはうるさくないから。雑音は嫌いなのよ。私」


「あの枕詞を使わないだけで、そこまで気に入られてもな」


「で、角夢が好きなんだっけ?」


「いや、まったく」


 俺の声はあっさりと出た。キョトンとしている毒島さん。意外なことを聞いたような。そしてスマホが震える。オーケーマアジ以外はバイブレーション設定にしてあるのだ。


「なんで毒島さんと仲良くしてるの?」


 ゆるキャラが怒っているスタンプとともに、杏子からメッセージが送られてくる。チラリと気配を察すると、クラスメイトと食事している杏子が「こっちに興味無いですよ」みたいな面でスマホを弄っている。


「人と話しているのにスマホ弄らないでよ」


「いや、俺にとってはマナー守るほどの存在じゃないっていうか」


「そもそもあんたメッセージ打つような相手いるの?」


 まぁいないでもないでもないかもと思わないでもないなーということを否定する要素があるかどうかも分からないかもしれない。ちなみに前言の俺は肯定したのか否定したのか。自分でもちょっとわからない。


「あくまでボッチなのは学内で、だから」


「学外には友人がいるの?」


「まぁ」


 ガールフレンドもフレンドの内。


「私が相手してあげようか?」


「謹んでごめんなさい」


「はっきり言うのね」


「どうせ既読スルーするだけだから時間の無駄だ」


 そこはたしかにありうるわけで。


「毒島さんと何話してるの? 詳らかに言いなさい」


 瞳をキラリとさせるキャラのスタンプとともに、杏子からそんなメッセージが送られてくる。


「四方山話だ」


「じゃあ私とで良いじゃん」


「つまり杏子とじゃなくてもいいんだろ?」


「私が佐倉くんと話したいの!」


 さいですかー。


「生憎ね。私を前にスマホ弄るなんて」


 ギュッと足の荷重がさらに増える。痛いとは思うが、だから何程度。


「そもそも毒島さんを今の状況にしたのは俺だろ」


「あら、責任感じてるんだ?」


「いやまったく」


 いまさら罪悪感の湧きようもない。


「それはそれで腹立つけど」


 事実だろ。


「こらー! 返信は既読から三秒以内!」


 杏子、お前も少し黙れ。


「もしかして童貞?」


「女性との経験は無いな」


 どこまでのことを言っているのかは知らんが。俺はそのままスマホをポケットにしまった。チラリと杏子の方を見ると、恨めしそうにこっちを睨みやっている。そのまま滑るように指がスマホをタップ。俺のスマホがブルブル震えるが、全部無視。


「へー、じゃあ私が体験させてあげようか?」


「間に合っていますので」


「童貞なんでしょ?」


「間違いなく」


「したくないの?」


「勘弁してほしいね」


「責任取らなくていいって言っても?」


「俺の下に生まれてくる子供が不憫だろ」


 せめてもうちょっとマシな親の元に生まれて欲しい。


「じゃ、ヤりたくなったら言ってね。私は拒否しないから」


「性病に気をつけろよ」


「大丈夫よ。アンタだけだから」


 それもどうよ。ブルブルブルブルスマホが震える。ええい。こっちもウザってえ。そもそも俺にはルイとタマモという恋人がいるのに、なんでそれ以外の連中が俺を取り合っているんだ。俺というか、俺というものの所有権のマウントの取り合いだが。っていうか毒島さんって意外とチョロい?


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