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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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第146話:株式ニュース


「佐倉コーポレーション!! エンタメプロを買収!?」


 センセーショナルな題字とともに、ニュースは今日の株式について話していた。とは言ってもエンタメプロは上場企業ではないので、あくまで増資による良心的な買収だ。だがそれでも佐倉コーポレーションのような大企業が、中堅企業のエンタメプロを二億円で買収したとなれば経済的にはニュースにもなる。


「え? じゃあマアジがボクたちのマネージャーに?」


「そういうことになる」


 まさかと言いたい気持ちはわかるが、俺としても押し付けられたんだよ。


「…………マアジがマネージャー……」


 ちなみに総括マネージャーで、基本的には学生だぞ。


「マアジはそれでいいの?」


「まぁ銃撃事件に対応できる社員となるとそんなにいないしな」


 俺は佐倉コーポレーションの社員ではないが。


「一応株式の譲渡も終わっているし、今からサヨリ姉はお前らの雇用主だ」


「…………サヨリさんが」


「サヨリお姉ちゃんなら安心できるニャ」


「デスね」


「わたくしはマアジにマネージメントしてもらえるのが嬉しいですわ」


「まさか。暗黒結社絶黒とは……佐倉コーポレーションの影の組織……」


 リンゴの厨二設定も極まってきたな。


 で、七人で飯を食って、そのままお持ち帰り。夜は色々して、俺は朝をゲッソリと迎える。もうちょっとこう俺に遠慮とかしてくれませんかね。


「聞いてください! 佐倉くん」


 で、俺が毎度で毎度のごとく。学食でスリランカカレーを食っていると、杏子が俺に突撃してきた。学校では相変わらず俺の評価は散々で、真実を知っているのは杏子と織部部長くらい。あともう一人いたような?


「ウチの事務所買収されちゃいました!」


「だな」


「知ってます? 佐倉コーポレーション。大企業なんですよ?」


「まぁ知っているが。俺も無関係じゃないし」


「え?」


 ポカンとする杏子。


「俺の名前は?」


「佐倉くん。佐倉マアジ……」


「エンタメプロを買収したのは?」


「佐倉コーポレーション……あれ?」


「ちなみに名前の偶然の一致とか、そういう話でもないからな」


「もしかして……佐倉くんって社長令嬢?」


 令嬢じゃねえ。


「親は関わってないぞ」


 社外取締役だから関わっていないは嘘だが。


「佐倉サヨリ社長って?」


「俺の姉」


「……………………」


 まぁそういう反応にもなるよな。


「え? もしかして佐倉くんって……超優良物件?」


「この前もお見合いしたしな」


 それが臼石アワセだということはもちろん黙秘だが。


「私のこと推してくれるよね?」


「態度が豹変するんだもんなぁ」


「これは最初から言っていたような気もするけど」


 違いない。スリランカカレーをアグリと食う。モグモグしつつ、対面に座った杏子に俺はジト目を向ける。


「で、超優良物件に何の用だ?」


「私を推してほしいです」


「能力的に無理」


「せめてルイとタマモを推さないで」


「推し変しろってこと?」


「まぁありていに言えば」


 さいですか。


「っていうか二億円で買収ってあったけど、そんなにお金持ってるの?」


「あくまで株式買ってるだけだから娯楽で消費する金とは違う。資産価値を分配しているだけだ。リスクヘッジ」


「何言ってるか分かんないんだけど」


「一つの銀行に金を全部預けるのも危険ってこと」


「じゃあこれから私は佐倉家のいいなりに」


「俺の言うことは何でも聞けよ」


「そんな。くっ。殺せ。みたいな?」


 それはリンゴと週一でやってる。


「えへー。もしかしたら佐倉くんがマネージャーになったりして?」


「なるぞ」


「へー………………へ?」


「正確にはマネージャーのマネージャー。総括マネージャーみたいな」


「……ガチで?」


「ガチガチのガチでございます」


 カチャカチャと食器を鳴らしてカレーを食う。


「ええと。話がついていけてないんだけど。私のせい? これ」


「別にいいんじゃね? 俺としても別に真面目にやる気ないし」


「そこは真面目にやってよ」


「なんで学生なのに働かなきゃいけねーんだよっていう」


「学校に説明してるの?」


「もち。学業と両立で認めてもらった」


 正確にはサヨリ姉が金積んで卒業資格を買おうとしたのだが、そこは俺が遠慮させた。学業と両立できないことを抱え込む気は俺には無い。


「まぁ佐倉くんって学内でも十位以内だし。勉強については今更か」


「理系脳だから、文系については結構不安要素あるんだがな。テスト前に詰め込んで、テストが終わったらすでに忘れる。そもそも歴史を知りたいなら歴史書を漁って読み解けばいいだろってのが俺の中での結論」


「そっかー。佐倉くんがマネージャー」


「一応顔合わせもあるから。その時はよろしくな」


「オメガターカイトの一番近いところで、私がメロメロにしてあげるからね」


「…………」


「今! 鼻で! 笑った!」


 これが笑わずにいられようか。


「佐倉くんだって私のダンスパートの練習とか見ればきっと惚れ直すって」


「ルイとタマモに目が行きそう」


「胸なんて飾りです! エロい人にはそれがわからんのです!」


「胸が……無いな」


「ギリギリCはあります!」


「それは普通にあるな」


 実際に制服越しにでも結構膨らんでいる。彼女が巨乳かと言われると首を傾げるが、揉んでも常時になる程度には存在する。もちろんオメガターカイトで一番無いのは片中サヤカだが、あれはあれでロリ枠という貴重な役職が存在する。


「ところでオメガターカイトが活動再開したのって」


「もち。うちの会社の意向」


 既にエンタメプロのマンパワーは確保しているし、仕事も営業も問題なし。大企業から出向というかたちでエンタメプロに在籍しているサラリーマンだ。仕事の能率はそこらの一般人とは格が違う。ぶっちゃけ前よりも能率的と言って過言ではない。


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