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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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第135話:ディーヴァラージャの人気


「…………」


 俺がルイとタマモのパンツを広げて、物干しハンガーにかけていると、ルイがテレビをつけた。俺的には俺がルイとタマモのパンツを扱っていることに物申してほしいのだが、既に日常になって久しい。杏子のパンツも取り扱うことがあるが、そっちは非日常だ。俺にとってはルイとタマモのパンツの方がまだしも現実といえる。


「ああ、使っていいよ。最終的に綺麗になっていれば過程は問わないから」


 とはルイからのお言葉。


「…………あたしはマアジのパンツでしてみたいですが」


 とはタマモ以下略。


 パンパンと広げて、だが生地が傷まないように部屋干しして、そのままエアコンを調整して湿度を抑える。その俺にツッコミの一つも入れず。ルイとタマモはテレビでネット番組を見ていた。


「えー。今からコスプレですか?」


「私は別にいいじゃん?」


「でもさー。番組の企画だからって」


 テレビに映っているのはディーヴァラージャだった。他のメンバーは知らないが、桃野さんだけは把握できる。


「何故に」


「いや、七馬身差も離しているとはいえ一応恋のライバルだし」


「お前にそういうフェアプレーはあったのな」


 そっちの方が驚きだ。


「ていうか『俺、悪魔の実食ったけどとりあえず伝説の宝目指して海に出たら海賊王になっていた件』の話題で盛り上がって。やっぱ週刊少年跳躍は王道だぞ」


「…………それで俺海の読者に悪い人はいないということになりまして」


「っていうかまだ桃野さんとのコミュニケーション続いていたのか」


 俺名義で好き勝手やってるなとは思っていたが。


「ブリリアントスパーク! ここに見参! っていう感じでいいんですか?」


 そんなわけで魔法聖女ブリリアントスパークのコスプレを番組企画で披露した桃野さんがテレビいっぱいに映っていた。ちょっと照れているところも萌えポイント。


「はー! ブリリアントスパーク! 推せるぞ!」


「…………むぅ。……可愛いですね」


 お前らがそれでいいなら俺から言うことは無いんだが。既に動画の再生数は二十万を超えている。ちょこちょこ入ってきている話では桃野さんが所属しているアイドルグループ……ディーヴァラージャは歌も上手くパフォーマンスも最高なアイドルで、さすが大手の事務所が運営しているアイドルらしい。とはいうものの、俺はオメガターカイトの箱推しなので、他のグループはあまり知らない。だがディーヴァラージャはドルオタにとっては無視しえない看板らしく、一般的なドルオタは知っていて当然。知らなければ割腹モノだとのこと。世間的な認知は然程でもないがドルオタ界隈では立派にやっているとのこと。


「ヲヒメちゃーん! 可愛いよぅ! ペロペロ~!」


「…………胸が大きいとこういう衣装が入りませんからね」


 タマモは自分のGカップを揉みながら、自己嫌悪している。おそらくだがそれが女性全般への皮肉だとは気づいていないらしい。別にいいけど。


「で、ディーヴァラージャを調べているのか」


 俺はパンツを干しながらそんなことを聞く。いっそこのまま頭から被ったら、ルイとタマモはどういう反応をするのか。見てみたくないというのは虚偽になる。


「…………」


「…………マアジ……そうマジマジとあたしのおパンツを見られると……ね?」


「ヒーローごっこしていいか」


「変〇仮面?」


「あるいはレ〇プマン」


 こんな時代こそ! レ〇プで物申す!


「あんまり社会に喧嘩は売らないで欲しいぞ」


「仮面の方はありかという議論もあるが」


「ボクにはお稲荷さんがついてないからなー」


 女子がやる遊びじゃねーだろ。


「マアジも使ったりするの?」


「黙秘」


「もー。そういうことならここでボクが……」


「で」


 パン、とパンツを広げて物干しハンガーにかけて。


「ディーヴァラージャはどうだ?」


 閑話休題。


「マアジって桃野さんをどう思う?」


「まぁ趣味が悪いなと」


「ボクとタマモへの挑戦状」


「その側面も無いでは無い」


「…………あたしはマアジが大好きですけど」


「ありがとな」


 洗濯干しを再開する。


「でもマジでヲヒメちゃん。マアジが好きっぽいよ」


「…………そこそこの頻度で予定を聞かれますね」


 それに対応しているのが俺じゃないってどういうこと?


「大好きなんて言っちゃったりして。キャ!」


 というコメントログが残っていた。


「まぁマアジが女の子にモテるのは今更だけど」


「…………あたしたち自身がそうですしね」


 地球人が地球にいるんだから、宇宙の何処かには宇宙人がいるだろう理論。自分たちの存在が逆説的に相手の存在を肯定する……という。


「俺が桃野さんに傾倒したらどうする?」


「刺す」


「俺を?」


「マアジは刺しても生き返りそうだし」


 実際刃物程度では死ににくいのは事実だが。エルフということをルイもタマモも知っていて。であれば俺と心中するのは苦労するだろう。


「にゃー。ただいまにゃー」


 で、そこにサヤカも帰ってきた。今日はモデル撮影で、ちょっと遅くなるとは聞いていた。


「飯食うか? 温めるだけだが」


「おねがいにゃー。お兄さんの料理は美味しいからにゃー」


 なわけでレンチン。


「最近ディーヴァラージャについてルイお姉ちゃんとタマモお姉ちゃんが見ているにゃ」


「人気アイドルはすべからく競合他社だぞ!」


 ある意味で真理だ。


「そういえば明日ディーヴァラージャのライブだにゃー」


「仕事もちゃんと空けたし!」


「…………一生懸命楽しみましょう」


 まさか桃野さんも俺に売ったチケットがルイとタマモに渡されているとは思うまい。


「楽しみだなぁライブ」


「…………動画を見るにヲヒメちゃんは歌が上手いですね。……きっとそれがディーヴァラージャの根幹」


 ディーヴァとは歌姫のことだ。オペラで使われる用語。で、インドにはデーヴァラージャという神々の王という意味の言葉があり、二つを合わせてディーヴァラージャ。


「実際に歌上手いなぁ。声楽とかやってるのかな?」


「…………可能性はありますね」


「ということはこの声の伸びは……」


 うんぬんかんぬん。ルイとタマモは真剣にディーヴァラージャの人気の秘訣を分析していた。やはり別の事務所の人気アイドルには思うところがあるのだろう。


 ……パンツを頭から被るか。


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