第134話:ドリームキャッチャー
「おほぉ♡ お♡ お♡ おぉぉ♡」
俺のアレで突かれるたびに、声をあげてプリンセス・ルイは感じ入る。もちろん俺たちがやっているのは腕相撲だ。俺の腕で細いルイの手の甲をテーブルに突くたびに、苦悶の声を上げている、というだけにすぎない。それ以上の意味は何もない。何か別のことをしているように聞こえるって? 気のせいだろ。
「ほらほら。ここがいいのか? 全くだらしないお姫様だぜ」
「おぉお♡」
だから腕相撲をしているんだって。
「くっ! この国の宰相風情が姫様に手を出すな!」
俺に向かって抜剣したロイヤルナイト・リンゴが睨むように見てくる。
「姫様を蹂躙した罪! この剣の錆にしてくれる!」
「お、お、おぉ、ダメェ♡ ボクはもう戻れないぞ♡ 宰相のたくましい筋肉♡」
「…………マアジ宰相閣下♡ ……あたしにもそのたくましい筋肉で腕相撲をしてください♡」
プリンセス・タマモも俺のアレに夢中だ。もちろん筋肉のことね。
「…………たくましい筋肉で腕相撲されるルイ姉様が羨ましいですわ」
「可愛い奴め。コイツが終わったらお前にも相手してやるよ」
「…………あはぁ♡ ……涎が止まりません」
「タマモ姫! 正気に戻ってください!」
「…………でももうあたしたちは腕相撲されてしまったの。……今更もとには戻れない」
「んひぃぃ♡ マアジ閣下♡ すごいぃぃ♡」
「くそっ! 宰相の分際で姫様たちの手を出すなど!」
「何なら止めてもいいんだぞ?」
「……何が条件だ?」
王属騎士リンゴが問う。
「ナニ。簡単な話だ。お前が誠意を見せればいい」
「誠意……だと?」
「オネダリでもしてみせろ。俺がその気になったら、姫様よりも優先的にお前を相手してやってもいい」
「くっ! 貴様! この俺に屈辱を与えようというのか!」
「別にいいんだぜぇ? 俺はこのままプリンセス・ルイとだけやっていても」
何度でも言うが腕相撲な。
「ご主人様ぁ♡ 今はボクだけを見ていてぇ♡ 他の女は後でぇ♡」
「可愛い奴だ。負けることを何とも思っていないらしい」
「全面敗北でぇす♡ お姫様でも腕相撲では男には敵わないぃぃ♡ 素敵な男性を前にすると女は全面敗北するしかないのぉぉ♡」
「オラ! オラ! これでもか!」
「お、お、お♡ しゅてきぃ……マアジ様ぁ♡」
「止めろ! 止めろぉ! マアジ! これ以上姫様を穢すなぁ!」
頭を抱えて、悲鳴を上げるリンゴ。俺はそのリンゴにニタニタと腐臭のする笑顔を向ける。
「じゃあどうすればいいかわかるよな?」
「くぅぅ! 何をすればいい」
「まずは邪魔なものを取っ払ってもらおうか。ほら。俺が相手をするのにソレは邪魔だろう?」
言われて、武装を解除していく王属騎士リンゴ。鎧を脱いで、アレを脱いで、ソレを脱いで、コレを脱ぐ。そのまま色々なものを解除して、キャストオフしたリンゴは羞恥に震えていた。
「これでいいか……外道め……」
「じゃあオネダリしてみろ」
俺と腕相撲がしたいですってな。
「お……俺と……」
「リピートアフタミー。嫌らしく汗を流している俺と、だ」
「く! どこまで俺を辱めて……ッッ。嫌らしく汗を流している俺と……ッ」
キャストオフしたリンゴは屈辱に震えながらオネダリをする。負けると分かっていて腕相撲を俺とするために。
「俺と……汗を流してくんずほぐれつやってくれ!」
「やってくださいませご主人様……だ」
「お前ぇ!」
あまりの屈辱に反抗的になろうとしたリンゴを。
「おほぉぉぉぉ♡」
ルイ姫様の声がかき消す。このままではルイ姫は俺の支配下に落ちる。それを阻止するためには、リンゴは自分を差し出すしかない。
「ぐ……う……俺を慰めてくださいませ……ご主人様……」
「じゃあまずは俺のアレを舐めろ」
もちろん筋肉のことです。
「くっ! お前は! 恥ずかしくないのか!」
「屈辱に震えながら、俺に従うしかないお前を見るのは痛快だぞ」
「このままで済むと……」
「おいおい。反抗的だな。とてもではないが、これから俺と腕相撲をしようとしている女の目じゃねえ」
「分かっていて言うな!」
「雰囲気くらい出せよ。それからプリンセス・アワセ。その扉の隙間から見ているだけでいいのか?」
「は……?」
呆然として、宰相執務室の扉の方を見る騎士リンゴ。その扉がキィイと開いて、そこには艶めかしい汗をかいているアワセ姫がいた。俺とルイの腕相撲で興奮したのだろう。すでに顔が蕩けている。
「アワセ姫……何を……」
「あはぁぁぁ♡ ルイ姉様の負けるサマがとても興奮してしまいますわ♡」
「マアジ宰相! 貴様!」
「おいおい。俺は何もしていない。そうだろう? あくまでアワセ姫が艶めかしい汗をかいているのは彼女自身の問題だ。あとな」
「ッッッ……!?」
ズンッ! と俺のアレがリボリングバンカーでエターナリー・ダーニング・ネイラーしていた。何かって言うとミリ秒で腕相撲に負けていた。
「お! ほぉぉぉぉぉぉ♡」
その一撃を受けて、自分が女子だと思い知ったのだろう。彼女は俺に負けるしかないことを思い知っていた。
「ああ♡ ナイト・リンゴがあんなにも激しく♡ それを見るだけでわたくしはもう♡」
俺が他の女の相手をするだけで、アワセ姫はハァハァと息を荒くし。
「マアジ様ぁ♡ ボクの相手も……」
「…………マアジ閣下……あたしも」
その完敗しているリンゴの醜態を気にもしていないのか。ルイ姫とタマモ姫はすり寄ってきて。そのまま運命がステイナイトしていた。問おう。お前らが俺の『※自主規制』か。
「はい♡ はいぃぃぃ♡」
「…………そうですとも♡」
「ああ、騎士リンゴ……羨ましいですわ……」
「おっおっおっこれっしゅごいいぃぃぃ♡ 負けりゅぅぅぅ♡」
そうしてオールナイトジャパンにせっせと腕相撲をしていると。
「…………」
その最後のファイナルフュージョンのアレがコレでソレだった。そうしていつものように朝五時に目を覚まして、自分の置かれた状況を確認すると、そのまま自己嫌悪。リンゴの望むシチュエーションをシミュレーションすると毎度こうだ。どうしても屈辱を味わいたいらしい。ルイのように服従することは結果でしかなく、その間にある羞恥と屈辱がリンゴにとっての最も大切な過程ということだ。
「アホな夢見た」
であれば、俺に他に言うことはなく。
味噌汁は……インスタントでいいか。