表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/135

第128話:新年最初のライブ


「ルイちゃーん! タマモちゃーん!」


 歌うナンバーにサイリウムを合わせて。残光を残すビームサーベル改めサイリウムを振っている俺は、かなりのキモオタだったろう。


「君にチュッしちゃって♪ 君がキュンしちゃって♪」


「二人きりの放課後に♪ でも君の唇だけを見てる♪」


 オメガターカイトの新年ライブ。そんなイベントに俺がいかないわけもなく。箱ライブだが、熱気そのものは俺も最高潮。そうして。


「はい! はい! はいはいはい!」


 全力でオタ芸を打つ俺。ならびにオメガターカイトのファン会員。全員の熱気が混然一体となし、そうしてライブは最高で終わる。


「ありがとーございましたー!」


「またね! みんなー!」


「あけましておめでとうございますわ!」


「地獄への一里塚だがな……」


 オメガターカイトは全員可愛い。その彼女らに新年の挨拶をされると、超テンション上がる。そうしてウキウキで箱を出て、さてこれからどうしようと思っていると。


「待ってください!」


 俺に話しかけてくる女子が一人。俺のようにオメガターカイトファン会員の法被を着ているわけではないが、手にはファンの団扇。キラキラした瞳の女子だった。


「え……と」


 その女子は俺を呼び止めて、それから言葉を捜しているようだ。俺的にはもう帰るつもりだったのだが。


「何か?」


「感想戦をしませんか!?」


「いや……別に……」


「奢りますので!」


「そうかー。王室御用達のブランド紅茶が飲みたいんだが」


「せめてメイド喫茶で我慢してくれませんか?」


 ジョークのつもりだったのだが。とはいえ、この女子とお茶する理由もないのだが。


「よろしくオメガいします!」


 と頭を下げられると、俺としてもどうしたものか。


 中略。


「なんでやねん」


「何か言いましたか?」


 ルンルン気分でメイド喫茶のメニュー表を見ている女子の対面に座って、俺は自問自答していた。キャピキャピしたメイドさんが注文を受け付けて、俺はデザインカプチーノを、女子はケーキセットを頼む。


「あ、ご紹介がまだでした。私、桃野ヲヒメと申します」


「佐倉マアジ……」


 一瞬偽名を名乗ろうか悩んだが、あんまり意味はないだろうからボツにした。


「佐倉さんっていうんですね。素敵な名前です」


「ありがとうございます?」


 疑問形になってしまった。名前を褒められたのはあまり記憶にない。


「オメガターカイト素敵ですよね。皆さんキラキラしています」


「応援のし甲斐があるよな」


「はい! とっても素敵で。私もああなりたいです」


「オメガターカイトに入りたいってこと?」


「女の子なら誰でも入りたいと思いますよ」


「ほーん」


 俺的には応援できればそれでいいのだが、やっぱり女の子にとってアイドルって憧れなんだろうか? なれるならなりたいというか。俺は将来の夢が無いので、憧れることは基本的にオメガターカイト関連になるが。それでも男だからなりたいとはさすがに。


「佐倉さんは誰推しなんですか?」


「ルイとタマモ」


「二強ですかー。たしかに強いんですけどね」


「アレより可愛い女子ってそんなにいないんじゃないかと」


「もしかしてガチ恋勢?」


「間違ってはいない」


 ガチで恋はしている。その恋がどういう形態なのかはここで言う必要もないのだが。


「アイドルと恋愛できるとか本当に思っています?」


「思ってはいないが……」


 実際に、あの二人との関係って何だろな?


「ガチ恋勢なんて泣くだけですよ? どうせ熱愛発覚で引退宣言するんですから」


「そーですねー」


 まさか俺の状況を言うわけにもいかず。相槌だけを打つ。


「ちなみに佐倉さんって恋人とか………………いる感じで?」


「別に」


「そっかー……カッコいいからいるんじゃないかなって邪推したんですけど」


「邪推だったな」


「じゃあ私が立候補しちゃおうかな……なんて」


「お祈りしておくよ」


「えー、せっかくオメガターカイト推しなんですから。もっとこう同調する意思があるでしょう?」


「あんまり他のファンと交流なくて」


 あってたまるかって話だが。俺の立場で何を話せってんだ。


「でもガチ恋勢……」


「ああ、俺は恋をしている」


「あのー。例えばアイドルと恋愛できるなら……嬉しいですか?」


「涙を流して喜ぶね」


「そっかー」


 ケーキをフォークで崩しながら、考えるようにヲヒメさんは言う。


「実は私もアイドルだったりして」


「アイドルなのか?」


「桃野ヲヒメは芸名なんですよ」


 はー。もちろん俺は聞いたことない。ドルオタ失格かもしれないが、ぶっちゃけドルオタというよりオメガターカイトオタだからなぁ、俺。


「私と付き合ったらアイドルと恋愛が出来ちゃったりして……」


「小気味よいな」


「恋しちゃいません? 私はウェルカムなんで」


「あー、黒岩ルイガチ恋勢なんで」


 あと古内院タマモ。


「でも相手は何とも思っていないと思いますよ?」


「そこだよなー」


 ファンの辛いところだ。あくまで一般的なファンを想定すれば、だが。


「私ならアイドルやりながら佐倉さんと付き合って上げるんですけど」


「シングルアイドル?」


「いえ。グループです」


「名前教えて。検索するから」


「本当に知らないんですね。ディーヴァラージャって言うんですけど……」


 俺は早速検索をかける。ディーヴァラージャ。あっさりと検索結果は出たが、人気のほどは分からない。女子が可愛いとか歌が良いとかの情報は出るが。それでもそう言う風に語られるってことはそこそこ売れているのか。


「一応テレビにも出ているんですけど」


 すまん。俺の家のテレビ、オメガターカイトの動画とアニメしか映して無いから。


「佐倉さんが望むなら付き合ってもいいかなーって」


「事務所に迷惑かけるぞ」


 それが真理な気がするが。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ネジの外れたアイドルを引き寄せるフェロモン出してそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ