表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/136

第119話:意味が不明にもほどがある


「えーと」


「どうかしましたか? お姉様」


 ベルサイユの百合を視聴しているイユリはこの際どうでもいいが。玄関の映像から見える下着姿のリンゴを見て、俺は言葉を選んでいたが、そんな事態ですらないことに気付く。既に今は十二月中旬。外の気温は一桁だ。パンツ一丁でいていい温度ではない。ましてオメガターカイトのリンゴが下着姿で外にいるとか、マズいという話ですらない。


「ちょおおおお!」


 バタンッと扉を開いて、マンションの通路に顔を出すと、そこには確かに下着姿のリンゴが。ブラジャーで辛うじて大きめのおっぱい隠れているが、まさかコレで乳輪が見えていれば事案だ。そうじゃなくても事案だが。


「な……何してんの?」


 行動というか、俺が聞いているのは正気だが、さらに頭のおかしい答えが返ってくる。


「抱いて?」


 ブラジャーとパンツだけの姿で、男の部屋に突撃。「抱いて」と言ってくるその度胸だけは表彰モノだが、俺にとっては意味不明で。


「えーと。何を」


「俺を」


「誰が?」


「佐倉マアジが」


 御法度リリンと戦ってから少し経って。その間に何があったのか。聞くのも怖いが、それより確認が一つ。


「寒くないか?」


「寒い。ッッくちゅ!」


 可愛らしいくしゃみだと思うが、ツッコミどころはそこではなく。


「中に入れてくれない?」


「その恰好で?」


「抱いてくれていいから」


 その前にリンゴのオーバリズムで股間を切り取られそうだ。何をどうすれば、リンゴが俺に抱かれるという展開になるのか。もうちょっとエロゲーでも展開は親切だぞ。


「まぁ上がるのはいいんだが」


 隣のルイに頼むべきかとも思ったが、気温と時間を考えて、とりあえず中に招き入れる。


「暖かい……」


「コーヒーでも淹れるか」


 さすがに下着姿で冬空の下は死ねる。リンゴに死なれても困るので、温まるものを……と思っていると。


「リンゴデス?」


「イユリ……」


 二人が遭遇するのも当たり前の話で。ガンッッッとリンゴが俺の脛を蹴った。


「いッッッ!」


 その脛を抱えて片足ジャンプする俺。かなり痛かった。痛覚を通常モードにしていたのが悪いのだが。


「何しやがる!」


「こっちのセリフだ! なんでイユリがここにいる!」


 何と申すべきか悩んでいると。


「マアジお姉様。リンゴちゃんまで誑し込んだの?」


 こっちはこっちでジトーッと俺を見るイユリ。まさに誤解だ。


「そもそも共通点ねえよ……」


 あえて言うなら御法度リリンと戦ったくらいだが、それは言わなくていい。


「イユリは何でここに?」


「お姉様とアニメを見てたのデス」


「お姉様?」


 説明を要求するように俺を見るリンゴだが、口にするのも怠い。


「とにかく健全にアニメ視聴をしていたわけだ」


「誰に対する言い訳?」


「まぁ俺にだな」


 ヒュンと糸が走った。さすがに神経は出してなかったので後手に回る。細い繊維が俺の首に纏わりつき、キュイィと音を立てる。そのまま力を込めれば首から頭が離れるだろう。


「殺されたいの」


「生憎とまだ寿命には執着が」


「イユリも誑し込んだの?」


「そもそもそう言う関係じゃねえし」


 首の皮膚からヒトキリススキを具現して、糸を切る。この程度はエピソードを出すまでもない。


「絶黒の影救世躯体エグゼクターがそれを言うの?」


 どうしよう。リンゴちゃん、ガチでその設定信じているので?


「お姉様。リンゴとはどういう関係で?」


「無関係」


 他に言いようもなく。


「リンゴは?」


「敵」


 冗談とか言ったら殺されるのか。やっぱ。


「とにかく」


 ここで話が巻き戻る。


「佐倉マアジ。俺を抱け」


「イユリの目の前で?」


「この際見せつけろ」


 そこまで上級者だと思われているのは褒められているのか?


「ああ、それで下着姿なんデスね?」


「今から俺とマアジは寝る」


「いや、寝ない」


 俺は肩の高さに置いた手を左右に振る。そもそも何で俺とリンゴが寝ることになっている。ジョークでも有り得んぞ。


「俺じゃ不満か?」


「超不満」


「むぅ」


 ここで拒絶されるとは思っていなかったらしい。俺もやれるならやりたいが、状況的に無理だろう。やはし。


「それは恋人がいるからか?」


「それも一因ではある」


 あくまで一因だが。


「絶黒の命令で篭絡しているだけだろう?」


「何でそれをお前が知っている?」


 質問の形式であるが、問答するまでもない。答え。御法度リリンの正体がリンゴだから。


「は、服部リンゴには全てのことはお見通しなのだ!」


 そーですかー。仕方ない。議論は後にしてコーヒー淹れるか。そう思って、俺がキッチンへと歩き出すと、その服の襟を引っ張って、グイと自分へと引き寄せるリンゴ。


「ッッッ!」

「ッ!」

「わお!」


 そして俺が言葉を失い、リンゴが言語を放棄。イユリがスキャンダルに赤面する。俺とリンゴがキスをしていた。相手からの一方的な、と注釈は付くが。


「俺と寝ろ。マアジ。お前のやりたいプレイで応えてやる」


「何でもいいのか?」


「なん……でも…………いい………………ぞ?」


 覚悟が無いことは伝わった。


「じゃあイユリとニャンニャンしてくれ」


「マジデスか! お姉様! リンゴちゃんと寝ていいんですか!」


「ああ、快楽を教えてやれ」


 ニコリと爽やかスマイルで、俺はイユリにサムズアップをした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ