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第105話:そうしてたまには一人になって


 今日はオメガターカイトのグループ会議があるらしい。そのためレッスンも含めて、全員遅めの解散になるので、メンバーで夜ご飯を共有するとのこと。何で知っているかって? ルイから聞いたんだよ。杏子も俺にパンツを渡して、そのまま仕事の案件で早退したらしい。俺は家に帰って飯を食うのも侘しいので、そのまま外食にした。電車に乗って、家に帰る前に途中で降りて、スマホでオススメの店を検索。そうして串カツ屋に入る。生憎と金は持っている。必要最低限の金は家から預かっている。カードを使えばレストランにもいけるだろうが、あまり胃に負担をかける飯屋には行きたくない。料亭とかな。


「あ、私にも串カツ」


 で、ちょうどいいだろうしサヨリ姉を呼んでいた。たまには親族でコミュニケーションを取るのもいいだろう。死人が出る可能性はあるが、んなことは百も承知で。


「やはり肉は美味しいだよー」


「否定はしない」


 衣のついた肉を齧って、俺は肯定する。


「で、お姉ちゃんを呼び出してマアジちゃんはなんのお願いかなー?」


「お願いと言うか。顔が見たかった」


「おや、珍しい。お姉ちゃんにはツンデレなマアジちゃんが」


「八裂組はどうなった?」


「原因不明のまま若頭が死んじゃった。不幸な事件だったねー」


 そこにどんな力学が働いているのかは、俺もここでツッコむべきでないのは理解していて。


「多分次期若頭のポストを狙って内紛が起こるんじゃない?」


 サヨリ姉にとってはまさに他人事らしい。毒を持っているのは体質だけではないと知っていたが、それはそれとしてサヨリ姉の策謀と言う毒は、ある意味でオーバリズム以上だ。


「俺は気にしていないんだがなぁ」


「うん。知ってる。マアジちゃんは何も気にしなくていいの。マアジちゃんの周りで誰が不幸になろうとも。そんなことに責任を感じる必要はないよ」


 お前がそれを言うか、って話で。


「ところでお見合いしたらしいね」


「したぞー」


「風間の御家の御令嬢って聞いたけど」


「間違ってねーよ」


「可愛かった?」


「超可愛かった」


「婚約するの?」


「いや? 既に恋人いるし。俺的には自由恋愛を所望」


「ルイちゃんとタマモちゃん?」


「なんで日本って重婚できないんだろうな?」


「だから浮気がドラマになるんじゃない」


 それもしたりだが。串カツをアグリ。


「ピーマンとエノキとアスパラガスと……」


 さらに店員に追加注文。


「マアジちゃん。本当にアイドルと結婚するんだねー」


「俺はそのつもりだが、認めないとか言うなよ」


「言っていいなら言うんだけどね」


「ダメ」


「むー。昔はお姉ちゃんお姉ちゃんって可愛かったのに」


「国語と算数を教えてくれたことには感謝しているよ」


「勉強は付いていけてる?」


「学年十位は今のところキープ」


「別に大学受験を重くとらえる必要も無いよ? どうせコネで関連会社の社長になるんだし」


「ニートはダメか?」


「まぁ悪いとは言わないけど。働いた方が人間関係構築できるから、結果的に楽しいよ?」


 さすが佐倉コーポレーションの社長は言うことが違う。


「まだマダイ父者が現役だけど、いずれ佐倉財閥も、後継者を選ぶ日が来るんだろうなー」


「俺は参加せんぞ」


「デミオーバリストだから?」


「それも否定はしないが、それはそれとして重き似を背負って遠き道を行くがごとく真似はちょっとな。それにサヨリ姉は筆頭候補だろ」


「こんな大きな財閥なのに、親族には野心的な人間が少ないのよね。大丈夫かしら。佐倉財閥」


「サヨリ姉が全部引き継げばいいんだよ。帝王学は俺も学んだが、たしか子孫に財産を均等に渡すと没落するんだろ?」


「そ。後継者を一人決めて、その人に八割くらい独占させて一強他弱にした方が血の没落は防げる」


「財産継いだら俺にもお小遣いくれ」


「それはいいけど。マアジちゃんは消費欲が無いからなぁ」


「リーズナブルでいい感じだろ?」


「お姉ちゃんとしてはもっと我儘になってもらいたいんだけど」


「我儘……ね」


「やだやだー! 絶対お姉ちゃんと結婚するんだい! とか」


 どこに需要があるんだよ。


「じゃあ甘やかしてあげるから。お姉ちゃんと結婚しようね」


「恋人いるって言ってるだろ」


「風間の御令嬢とはお見合いしたのに?」


「あれだってお許し貰ったんだよ」


「可愛かったんだよね?」


「何せオメガターカイトの臼石アワセだったからな。可愛くないはずがない」


「…………」


 まぁそう言う反応にもなるわな。すでにルイとタマモと付き合っていて、ついでにサヤカとイユリが愛人。その上で臼石アワセだ。


「そのー。わざと……じゃないんだよね?」


「完全に偶然の産物」


「風間の御令嬢が……ね」


「実際どうなんだ? 風間って苦しいのか?」


「旧家だから金は持ってるよ。ただ旧家のプライド相応に贅沢な暮らしができないって意味では資金不足かな」


「で、その貴族らしい贅沢な暮らしをするために、佐倉財閥を狙ったと」


「だから前向きになれないはずのマアジちゃんを選んだんじゃない?」


「そこで現れたのがアワセって言うのがなぁ」


「後二人かぁ」


 実はあと一人だったりするのだが。今俺の学生カバンには杏子のパンツが入っている。これを使って返却する任務があるのだが、よく考えると必要か?


「ルイちゃん達とは……してないんだよね?」


「狭義的な意味では」


「サヤカちゃんのオーバリズムね」


「実際迎えるのか? サヤカを佐倉に」


「さぁ。どうだろ。オーバリストって基本的に家族関係から孤立するケースが多いから、自然と佐倉財閥が引き取る形になるんだけど。サヤカちゃんは家族に愛されているしね」


「研究協力だけ……とか?」


「ま、本人が前向きじゃないのに戸籍改竄なんてしなくてもいいんじゃない?」


「マダイ父者もつくづく甘いよな」


「だから舐められないように混カシミアのスーツとか着てるんじゃない」


 全くだ。串カツをアグアグと食べながら、俺も苦笑する。なんか最近オメガターカイトとの距離が近すぎる気がする。とはいえ推しを変えるつもりもなく。俺は解散するまでオメガターカイトを推す所存。ところで晩秋のライブのチケットはどうしよう。買ってもいいんだが、どうせルイから渡される。握手券は五人分確保。全員を巡るのはジャスティス。


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