第102話:特殊性癖
「じゃあ寝るか」
そんなわけで。全員夕食を食べて。皿洗いもして。今日のオメガターカイトの動画も見て。全員風呂に入った。あとは寝るだけ。
「ワクワク……」
で、一人ワクワクしているアワセには悪いのだが。
「やらないからな?」
「えー。そこは『お前は見ながら自分を慰めてろ』……とか格好いい決め台詞を言ってくれるんじゃないですの?」
その前に格好いいか? そのセリフ……。かなり最悪な言葉だと思うんだが。
「おにーさん。準備はいいかにゃ~」
「蒸着はしたが、出来ればやらない方向が望ましいんだが」
「蒸着?」
クネリ、とアワセが首を傾げる。
「では、蒸着プロセスをもう一度見てみようにゃー」
出来るか。幸せ家族計画をつけるところを相手に見せたら連載が終わるわ。そもそも誰得だ。
「なわけで、俺がアレをソレするのは終わったので、後は眠るだけなんだが」
「やらないんですの?」
「ここではな」
そんなわけで、催眠成分を撒き散らして、快眠に持っていく。リラックス効果を期待できるラベンダーの香りも同時に出して、より眠りを深くする。とはいえだ。
「むにゃ……」
「…………むに」
俺がどうのしなくても、コイツ等は普通に俺のベッドで寝る。俺に襲われることを夢にも思っていないというか……逆に夢見ているというか。それで襲ってめでたしなら俺も襲うんだが。
「なわけで寝ろ。あとは向こうで何とかする」
「向こう……ですの?」
そこはまぁ行けばわかるというか。
「は!」
で、俺がその場に出向くと、ラブホテル(誓って言うが、行ったことはない)めいたダークパープルを基調とした部屋に、ネオンが輝いて薄暗いながらに、色っぽい照明がなされている。そこで不自然に部屋を上下に貫いている柱にアワセは括りつけられていた。ロープでぐるぐる巻きにされて、柱に固定。その拘束された場所から見えるのはダブルベッドで、そこには俺とサヤカがいた。
「えへへぇ。おにーさんとニャンニャンするの一週間ぶりだにゃー」
あんまり付き合えんのは申し訳ないが、俺にも俺で限界は存在する。色っぽい下着を着たサヤカが俺に恥じらいながらしな垂れかかっている。その彼女の太ももに手を這わせると、
「ぁん♡」
敏感にサヤカが反応した。
「あのー。マアジ? ここは?」
「夢の中」
「そのー。サヤカは?」
「夢の中でお前が見ている現像」
「マアジは?」
「前に同じく」
「そのー、このラブホみたいな部屋で二人は何を?」
「バスケットをする」
「バスケを……」
ポカンとしつつ、そう言うアワセ。
サヤカは既にトロンとした目で俺を見て、その唇にキスをしてくる。
「おにぃぃぃさん♡」
俺の肉体に肢体を擦りつけて、色っぽいメスの口調で甘えてくる。
「バスケですよね?」
「そうだぞ。これから1オン1だ」
「おにーさん。攻めてぇ♡」
オーフェンス。オーフェンス。
「あ♡ あ♡ その切り込み方素敵だにゃー♡」
「お前のディフェンスも中々だ」
「お兄さんのオフェンスが♡ あ♡ 激しすぎて♡」
「ほらほら。ちゃんと守らないとシュートするぞ」
「3ポイントはやだぁ♡ ダンクして?」
「しっかり守れよ? 今からドライブするからな?」
「あ、無理。お兄さんのドリブル激しすぎ♡ これもうディフェンスがもたないよぅ」
「じゃあ切り込むぞ? しっかり受け止めろよ?」
「ぁん♡ んぅん♡ はげし……いいぃ♡」
「中々のディフェンスだな。これはシュートも難しい」
「シュートしてぇ。スラムダンク決めてぇ」
そうして俺とサヤカが1オン1をしていると。
「あ♡ あぁ♡ あへぇぇ♡」
柱に縛られて俺とサヤカのゲームプレイに、目をトロめかせてビクンビクンと痙攣しているアワセがいた。マジで俺が他の女とそういうことをしていると感じてしまうらしい。業が深いというか。まぁこのダブルベッドでバスケットをしている俺に言えた話でもないが。
「そろそろオフェンスも限界か。時間が」
「お兄さんならハーフタイム挟んで後半もいけるにゃーよ?」
「いけないことはないんだが」
それだけの体力が残っているのか。
「お♡ ほぉ♡ おほ……おほぉ……♡」
そして俺とスポーツをしているサヤカと、それを為すすべなく見せられているアワセが同じような嬌声を上げた。
「出すぞ。シュート。ダンクでいいんだな?」
「あん♡ ぅうん♡ スラムダンクでお願い♡」
言われて強力にシュートする。それはゴールリングに叩きつけられて、得点に加算される。俺のアレが果てて、多分だが今俺のアレはアレを放出しているだろう。もちろんバスケットをしているだけなので、ダンクを決めて点数が放出されているんだぞ?
「あぁ……へえぇぇ♡」
そうして俺とサヤカの1オン1を見て、ただ見学しているだけなのに疲れ果ててしまっているアワセは中々の因業と言える。
「そんなに俺とサヤカのプレイはよかったか」
「マアジがサヤカに寝取られていると思うとわたくし……♡」
「お前もするか」
「プレイするのは嬉しいんですけど、こうして見せられているだけで、わたくしの中の性欲が満たされますわ」
重ね重ね言うが、バスケットをしているんだぞ?
「ねえ。お兄さん……。もう一勝負……」
俺の首に腕を回して、甘えるようにそう言ってくるサヤカ。彼女の下着姿は起伏が無いのに、外見がロリ体形だからだろうか。タマモとは別の次元の魅力を持っている。まるで貴重なダイヤモンドを、無意味と知りつつ踏み砕くような快感。それによって得られるスポーツマンシップは、まさに酒に酔うような酩酊を覚える。酒飲んだことないけど。
「じゃあもう一勝負な。アワセも見ているか?」
「見せてください。出来れば手を自由にしてもらえると発電も捗るのですけど」
「できるか? サヤカ?」
「もちろんだよ。っていうか夢世界成立はサヤポンのオーバリズムだけど、おにーさんはクラッキングできるにゃーよ?」
まぁ否定も難しいのだが。