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コンビジ! コンビニエンスストアのキャッシュレジスター周辺にて。店員とお客のやり取りを見ていたあなたは、二人から関心を寄せられ、二者択一を迫られる!

作者: 栗野庫舞

大と小による、どうでもいい戦いが深夜に始まります……。

 あなたは若者だ。深夜のコンビニで買い物中だった。


 青緑色の買い物カゴを持ちつつ商品を見ていた際、レジでのやり取りに目が向かった。お客も店員も、美人と言える容姿だったからだ。


 長い黒髪を後ろで(たば)ねた女性客と、茶髪をポニーテールにした店員。彼女達はどちらも二十歳(はたち)前後に見える。店員の胸部がやたらと大きいのも、印象に残った。


 レジカウンターには、女性客の買おうとしている商品が並ぶ。カゴは端に寄せられていた。


「お(はし)は二つ、おつけしますかぁ?」


 店員は女性客に訪ねた。購入品の中にカップ麺が二つ、あったからだろう。


「いえ、いいです」


 右手を小刻みに横に振って、お客は断った。


「えっ、本当によろしいんですかぁ? こうやって前に当てながら歩いてみれば、お胸が小さくてもみんなに見てもらえますよぉ~」


 店員は袋入りの割り箸を左右の手で一膳(いちぜん)ずつ持ち、豊満な胸部の前で突き出してみせた。彼女はおっきいだけに、すごく目立つ。


「はぁ? そんな馬鹿みたいなことするわけないじゃないッ!」


 侮辱されたお客は店員とは対照的に、胸部の平坦度が際立っていた。


「人よりちょっと大きいからって態度まで大きくなるなッ!」


 お客は箸を奪い取り、店員の巨乳の前で二膳(にぜん)の箸を交差させた。レジカウンター上で乗り出すようにして、そのバッテンで店員を押そうとする。


「お客様、暴力はやめて下さいっ! 私の胸部の弾力で跳ね返して、お怪我を負わせてしまいますっ!」

「そんなこと出来るならやってみなさいよっ!」


 お客が怒っている一方で、店員のほうはふざけているような笑い顔だった。


 二人の衝突をあなたが眺めていると、二人があなたの存在に気づく。女性客は恥ずかしいところを見られたと思ったのか、すぐに二膳(にぜん)の箸をレジカウンター上に置いた。


「そちらのお客様も、こちらにお()し下さいませ~」


 女性店員に手招(てまね)きされて、あなたはレジに近寄った。そこであなたの買い物カゴが彼女に取られ、(から)だった女性客の買い物カゴの上に重ね置きされる。


「お箸をどうぞ」


 店員が出した箸を、あなたは受け取らされた。


「お箸で私のをツンツンすることを許可します! ぜひやってみて下さいっ!」


 どうしてこうなった?


 あなたが困っていると、店員のほうから胸部を前に出して、箸の先端に当てた。


「きゃあっ! 結構すごいですねこれぇ~! お次は、こちらのお客様にもやってあげて下さいねっ!」


 店員は箸の先端をつまんで、女性客のほうに動かした。


 ひと目見て分かる彼女の平らな胸部を前にして、あなたは愕然(がくぜん)とする。何も言葉が出て来ない。


「あのっ! 失礼じゃないですかっ!」


 女性客は強い声であなたに抗議する。


「普通そーいう反応になりますよぉ~! だってぇ、バーコードリーダーで読み取りしやすそうなお胸なんですもん!」


 レジでは店員が笑うのを(こら)えながら喋る。


「むぅーっ!」


 女性は真っ赤になって、店員を(にら)んだ。


「それぐらいだと、メロンパンかあんパンを二つ買って、胸部に()せるしかないですよねぇ~! 追加でお買い求めになられますかぁ~?」


 さらに店員が(あお)る。


「くうぅぅぅッ!」


 ここまでは、女性客の負け(いくさ)だった。


 しかし、この女性客はレジカウンターのあなたの買い物カゴの中を見て、コンビニで売られている美少女キャラクターのグッズを発見した。それで彼女は察したようだ。


「……こうなったら、しかたがありません」


 小さくつぶやいた女性客は、横にいるあなたのほうへと体の向きを変えた。


 彼女はしゃがむような動作をしたのだが、実際は違っていた。膝を曲げたのは、ロングスカートの下のほうをつかむためだった。


 落ち着いたブラウンのスカートは、かなり大胆にたくし上げられる。


 女性はあなたに、赤い顔を向けた。


「ご覧下さい」


 驚きながらも、あなたはじっくりと見てしまう。


 白い下着。


 空色の線で書かれた小さな四角が、水玉模様のように散りばめられている。


 そんな模様の、かわいらしい白下着。


 健康的な太ももが、コンビニの照明よりも輝いて映った。


「どうです? デカい胸よりも、こっちのほうがいいでしょう?」


「あーっ! そんな色仕掛けで釣るのずるーい!」


「全然ずるくありませんよ? 胸はあくまでも私の一要素であって、全部じゃありません。胸で対抗出来ないのなら、他で勝負すればいいんです。いくら胸が大きくても、スカートたくし上げに(まさ)ることはないんですから」


 女性客はたくし上げしながら、ジーンズ姿の店員に語った。その間、ずっと下半身のかわいい下着をあなたに見せていた。


「そっ、そんなことないですよねぇっ! 私のほうがこんな変態さんよりもいいですよねっ!」


 焦る店員はあなたに答えを求めた。その際、胸部を上下に揺らす。彼女の場合、下から見たら胸部で顔が隠れそうなのが良い。


「いいえっ! 私のほうがこのデカ(ちち)女よりもいいですよねっ!」


 スカートから手を放した女性客も、あなたに答えを求めた。剣幕な表情を向けているが、これはこれでかわいい。


「「どっちがいいんですかっ!」」


 実は仲良しなんじゃないかと疑うほど、二人の女性の声がきれいに重なった。


 この状況では、どちらかの女性を選ばないと終わりにはならない。


 困ったあなたは、しばらく彼女達を見比べて、考えた後で、――片方の女性に答えを告げる。


 あなたが選んだ彼女には喜ばれたものの、選ばなかったほうの女性からは、白い目と冷たい言葉が向けられた。


 深夜のコンビニの言い争いに巻き込まれたあなたにとって、この時に選んだ彼女と親しくなれたのは、せめてもの朗報であった。


                    (終わり)

最後の選択肢の答えは、あなたにお任せします。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ! すごい作品ですね〜。(褒め言葉です!)
2023/10/14 17:41 退会済み
管理
[良い点] ∀・)う~ん、悩ましいですね(笑)建前の口実にはなりますが、コンビニで働いていた経験のある身としては、店員に真面目に働いて欲しいという事でお客さんの味方ですね(笑)はい、建前の口実です☆☆…
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