第五十三章+第五十四章 I Want To Be A Rich Guy+Trigger
私の声が小鳥を空へ運ぶ。靡いた服も踊り子みたいでさ。あなたの声が私を奮い立たせる。棘が刺さってしまったのなら。ほら、ほら、おいで。見たことない素晴らしい世界。
〜第五十三章 金持ちになりたい〜
「父ちゃんっ?!」
風梅さんが驚いたように後ろを振り返る。その様子だと風梅さんも海香さんがここに来たということは知らなかったんだろう。
「風梅、ここはわしに任せて帰りなっせ。竹鬼と話ばつけるけん。」
「は、はい…」
イルカさんが風梅さんにコートを手渡して帰るように言うと、風梅さんはこちらを気にしながら盤風家へ帰っていった。
「竹鬼。こっちに来なっせ。そんなとこばおったら床が濡れるじゃろ。」
「…うん…」
竹鬼は流石におじいさんには逆らえないのか、素直に縁側に出た。竹鬼が下駄を雪に落とした音が聞こえる。
「…カレン。」
海香さんは竹鬼が下駄を履くのを見ていたが、不意にボクに声をかけた。
「は、はい。」
ボクはすぐに…というか、反射と言うべきか、返事をした。海香さんの声は特殊で、その落ち着いた雰囲気も相まってなんだか神秘的だ。
「キミは…このままでは飛翠には勝てんよ。どうしたってでけん。」
海香さんはそう言い残すと竹鬼を連れて盤風の屋敷に帰っていった。
「…」
ボクはただ雪の中を歩く二人の後ろ姿を見ていただけだった。
〜第五十四章 きっかけ〜
竹鬼がボクの家に無断で来てから三ヶ月が過ぎた。外はもう雪は降っておらず、花が芽を出し始めた。竹鬼があの夜入ってきた庭には桜の花びらが舞っている。
「カレン、今日の晩はあなたの好きな素麺にしようと思ってるけど…」
「うん。」
ボクが朝食をとっていると、いつもの様に誰もいない厨房から母さんが声をかけてきた。ボクはうなずくとそのまま食事を続けた。
「…お祖父様がね…」
ービクッ
ボクはお祖父様という言葉に反射的に身構えてしまった。
「な、なに…?」
ボクは顔を上げると母さんのボクと同じ青い目を見た。
「あ、あの、竹鬼くんを…ここに招くって仰って…」
母さんは急に詰め寄ってきたボクに驚いたのか、少し怯えたようにそう言った。
ーえ…?竹鬼をここに…?なんで…?
「あ、ごめんなさい。その、正確には、盤風の方々みんなを食事に招くそうよ。」
母さんはボクの表情を見て言葉足らずだったことに気づいたのか、そう続けた。
「ああ、うん。」
ボクはうつむいたまま食堂を出ていこうとした。
「また、修行…?」
母さんがボクの背中に聞く。
「ううん。身支度をちゃんとしなきゃ。」
ボクがそう言って食堂を出ると、窓に写った母さんの口が驚いたようにポカンと開いていた。
この次も、ヤバい話です。また山田後輩アロマが暴れ出しました。あはははは。




