第二十五章+第二十六章 Kikuya's Lie+Hypnotic Magic
今回ちょっと長めなお話ですわ。いつも、すっごく短いけどね。へへへ。
〜第二十五章 菊夜の嘘〜
「…」
はぁはぁ…なんで降参しないんだこのっ…
アタシが灼熱地獄を発動させてから何分たった…?時間が永遠に感じられる…この暑さでなんで…
「なんで耐えていられるのか…か?」
「!!アンタ…!?」
炎の中に菊夜・フローリストと思われる人影が見えた。
「またかかったな。催眠魔法。」
「!?…催眠魔法…」
「そうさ。今お前は何をしてるんだ?本当に今のお前は本物か?俺の作った幻想の世界に閉じ込められてるんじゃないか?」
「…!?」
嘘だ…この喋っているのが幻覚で今の状況は夢じゃない…アタシは確実に菊夜を追い詰めている…
ほんとに…?これは現実…?それとも菊夜が作り出した…
この暑さでまだそんなことをする余裕がある...?とっくにくたばってても良いはずなのに…
!!さっきから周りの声が一切聞こえない…?!それにこの炎…焦げ臭い匂いが一切しない…とても暑いのに…!?これは本当に菊夜の…
リリィ?!菊夜を押していたはずのリリィが急に魔法を解いた。
リリィはなんだかおぼろげな顔をしている。
煙の中から菊夜が姿を現した。服のあちこちが焦げていて、激しく咳込んでいる。
「ゴホッ!ゴホッゴホッ!!て…天候魔法、レイン…ゴホッ、氷結魔法、あられ…ゴホゴホッ!!」
菊夜が苦しそうに呪文を唱えると、大粒の雨がコートに降ってきた。
「…雨?そうか、火を消すために!」
「!!ミドリ、リリィさんのいるところだけっ!!」
もみじは私の制服の袖を引きながら青い顔で言ってきた。
もみじに言われリリィの方を見ると、ぼーっとつっ立っているリリィの頭上だけあられが降っていた。あられがリリィの制服を裂き、肌を傷つけていく。
「何あれ?!ひどい…見てられない…」
私が言うと、みんなも悲しそうな顔をした。
「なんてやっちゃ…たとえこれが試合でも、惨いやり方で人を痛めつけるなんて…」
「これは流石に行き過ぎだよ。ミス・サクラが止めてくれると思う。」
「あっ!!リリィさんから血がっ!!」
もみじが叫んだ。
〜第二十六章 催眠魔法〜
サクラ姉が試合終了の合図をすると、リリィは保健室に緊急搬送された。担架にのって運ばれる姿は、とても痛々しいものだった。
「…リリィ、大丈夫かな?付き人の人たちが家に連れて帰るって言ってたけど…」
「血も…」
もみじが心配そうに言う。
「あれは重症だろうね…」
「菊夜は菊夜で必死だったんやろうけどなぁ。でも流石にあれはなぁ…」
カレンと竹鬼もお互いに目をちらりと合わせて言う。
「…ああでもしなきゃアイツはまた立ち向かって来るだろ。」
「!!菊!!夜!!」
いつの間にかカレンと竹鬼の後ろに菊夜が立っていた。
「…俺の名前は菊!!夜!!じゃない。菊夜、だ。」
「いやいや。そんな事どうでも良いでしょ!なんでここにいるの?!」
「なんでってここは待機場。受験者なら誰でも入れるだろ。」
…あ。そっか…なんか流れ的に聞いちゃったわ!
「立ち向かう……リリィさん、よくやってたもんね。」
「まぁ、あれは菊夜ヤバかったもんな。ハハハ。」
「…五月蝿え…あんなのよゆーだったっつーの。相手すんのがめんどくさかっただけだ。」
カレンと竹鬼が菊夜に絡むと、菊夜はうざったそうに言った。
…菊夜も…リリィのこと、認めてくれてたのかな…
「そういえば、最後リリィ、なんだかぼーっとしてたよね?心ここにあらず。みたいな。どうなってたの?」
「…催眠魔法だ。」
「菊夜は得意やもんなぁ。催眠魔法。」
竹鬼が菊夜の肩に手を回して言う。
「さっき使ってたのは、催眠魔法の感覚遮断でしょ?あれはいざやられるとなると怖いよね。」
カレンが眉をひそめて言う。
「感覚遮断?」
私が聞くと、
「五感を奪う魔法だよ。どの感覚を選ぶかは実力次第で自由に変えられるけど…難しいから…」
もみじが応えた。すると菊夜が驚いたような顔をして、
「…お前もやったことあるのか?」
「…まぁ……」
「学校じゃ習わないよね?ボク達も本で読んだだけだし。そんなに詳しいわけじゃないよ。」
カレンが興味がありそうにもみじに詰め寄ると、もみじは一歩後ろに下がった。
「よしや。もみじが怖がっとるやろ。」
「……うん。ごめん、悪気は無かったんだよ。」
竹鬼がカレンに止めるように言うと、カレンは素直にもみじにあやまった。
「は、はい。気にしないで…さ、さっき奪ってたのは、嗅覚、聴覚ですよね?それに加えて超感覚で皮膚感覚を異常に強くして…」
「…お前、凄いな。」
菊夜が更に驚いたようにもみじに顔を近づける。
「ひゃっ!」
もみじは後ろにバッっと下がると私の後ろにまわった。
「…菊夜ウザいよ。イケメンとか騒がれてるから距離感分かんないんでしょ。」
私が蔑む様な顔で言うと、竹鬼も、
「そうだぞ。お前、顔が良いからって誰でもオトシて良いと思うなよ。」
「いや。落ち着いて竹鬼。なまり消えてるし。もみじさんは面食いじゃ無いから大丈夫だよ。」
カレンが風の国なまりが消えた竹鬼をなだめにかかる。
「…カレン…なんで分かるんだよ?もみじが面食いじゃ無いって。」
「だってきみそんなにかっこよくな…」
「はいはーい!!そこまでぇぇえ!!」
私はカレンと竹鬼に割って入り、カレンに耳打ちした。
(カレン言い過ぎだって!!ばれちゃうじゃん!!もみじに何されるかわかんないよ?)
(ごめんごめん。大丈夫だよ。竹鬼は鈍すぎるところがあるから。)
「おいカレン、何言いかけて…」
竹鬼が近づいて来る。私がもみじに困った様な視線を向けると、もみじは意を決した様に叫んだ。
「わ、私、好きな人いるのでっ!!」
いぎゃああああ。もみじ、すっごいんだよね。うん。はっはは。君たちは、自分の好きな人が目の前にいる時、思いっきり『私・俺・僕・我輩・わし、好きな人いるので!!』 って言えますか?ははは。少なくとも僕は無理。恥ずすぎ。




