こんなはずでは
執務室の机に載っている物は少なかった。多くが床下に散らばっている。呼び出された者はビクビクしている。
「同志書記長。落ち着いてください」
「これが怒らずににいられるか!」
「それでも冷静になってください」
「クソ!!」
ポーランドの半分を取ってもだんまりだった英仏が、ポーランドからの全面撤退と謝罪と賠償まで要求してきた。
さらに昨日まで敵だったドイツの後押しをして、ポーランドから我が国を押し出そうとしている。ポーランドは自国の現状を考えてか英仏の言いなりだ。
「アジアのマカーキー共もドイツと手を切った。こちらの工作員も大勢検挙され、一部は行方不明だ。アメリカも同じだ」
「それにつきまして、一部活動員から撤収を望む声が出ております」
「撤収だ?許す訳ないだろう」
「しかし、これ以上捕まってしまうと活動に支障が出ます」
「むう。仕方が無いか。休眠しておくようにしろ。日本からはロシア人を引き揚げだ。分かっているな。マカーキ-の工作員だけ残しておけ。機会を見て活動を再開させる」
「了解しました」
「フランスの協力者はどうなっている。サボタージュは」
「イギリスからの情報や、アメリカ・日本の現状を見てフランス当局の監視が厳しくなっているそうです」
「当局にも協力者はいただろう」
「閑職に回される例が多く、おおっぴらに活動出来ないそうです」
「活動すると、日本やアメリカのようになってしまうか」
「はい。自制しているそうです」
「ポーランドは初期の半分まで維持をする。英仏はこれ以上戦争はしない」
「よろしいのですか」
「ドイツだけなら、撃退出来る。ポーランドなど問題外だ」
「そのように取り計らいます」
「うむ。よろしい。では、フィンランドだ。元々ロシアだったことを忘れて独立国気取りしているが、我が国に戻らせてやろうではないか」
「またやるのですか」
「問題か?」
「今からだと、また冬です」
「前回の戦訓を元に改善されているのだろう?ならば、問題は無い。違うかな。同志」
「全く問題ありません」
「よろしい」
この時、「・・日本からロシア人を引き揚げだ・・・」と言ってしまった。正しくは「ロシア人工作員を」なのだが、イライラしていて言い間違えた。
間違いに気づいたときには、本国命令だと言って、多くのロシア人が日本から帰ってきた時だった。
責任を取らそうとしても、議事録でそうなっている。
再び執務室は酷い状態になった。
英仏が引くだろうと、強気で望んでいたソ連だったが。
ドイツに宣戦布告された。英仏にも。
そしてフィンランドには、義勇軍が向かっていた。