その頃ソ連と他の国は
ソ連はフィンランドに夢中だった。
1939年の冬戦争だ。
二戦級の部隊で十分だったはずなのに大損害を受け、数によるごり押しで勝った形だ。
赤軍を粛正しすぎたツケが大きい。
この時の戦訓は後に生かされる。
フィンランド
ソ連は憎いが戦力差がありすぎる。無念としか言い様がない。
アメリカ合衆国 といってもルーズベルト周辺
対日圧力を掛けて日本を屈服させるべく努力しているが、イギリスが対ドイツ戦略で日本をドイツの仲間から抜いたので機嫌が悪い。
新中立法は議会の反対もあり流れた。大統領と軍需産業はがっかりしている。このままでは3選に差し障る。なんとかしなければ。
中華民国
ドイツとの協力関係が独対英仏の戦争によって微妙になっている。海上封鎖により交易も滞るようになり、先行きは不明瞭だ。
日本を撃退すべく頑張っているが、共産党が騒がしい。内憂外患とは中華民国の現状を表す言葉だろう。
日本
まるで夢から覚めたように、一般大衆のドイツ贔屓は消えた。軍でも浮かれていた人間が現実を見つめるようになる。
コミンテルンや共産党武闘派が次々と検挙され、悪事が明るみに出る。ソ連はやはり敵だという声が大きい。
支那戦線に疑問の声が大きく上がるようになってきている。
国内ではノモンハン事件の後処理が始まる。敵であるソ連と戦った軍人をかばう声も有るが、その前に軍律違反が数え切れないくらい有った。参謀本部の指導も甘く、関東軍の暴走を許していた。
「フィンランドを完全に屈服させることが出来なかった。この責任は誰にあるのだろうか」
「軍の責任でしょう。2戦級とは言え、弱すぎます」
「軍を弱体化した責任は私にあるというのか」
「そのようなことは」
「では、何故だ」
「……」
「答えられないのか」
……………
「まあいい。少しやり過ぎたのだろうか。反省の見られる軍人や技術者を戻そうではないか」
「全員ではないのですか」
「何を言うのかね。反抗的な危険分子を軍に戻せる訳がないだろう。技術者もサボタージュされるといけない」
「そのとおりです」
「では、次の議題に入る。ドイツだ」
「国境線は維持出来ているようですが」
「そうだな。英仏が甘いと思わないか」
「戦線が限られていますので、ドイツも集中出来ます」
「フム。戦線を拡げてやろうではないか」
「まさか」
「いけないかね。英仏に恩を売るのだよ」
「それは、問題が出ると思われます」
「ほう。何の問題が出るのだ」
「ポーランドです。ポーランド全土を掌握すると、英仏が文句言ってくると考えられます」
「全土ではないぞ」
「「「え?」」」
「ちょっとドイツ軍が発砲してきただけだ。どうだね」
「ドイツ軍を追って少し西へですか」
「圧力にはなるだろう。我が方の損害も少ない」
「少しなら、いいかもしれません」
ポーランド中間点で、ドイツ兵を攻撃した反独活動家がソ連側に走ってきた。そしてドイツ兵は発砲した。何故かソ連軍側で犠牲者が出た。
「日本の奴等が落ち着いてきている。何故だ」
「プレジデント。イギリスのせいです。奴等がドイツとコミンテルンの活動員を日本から閉め出しました」
「それ程影響を受けていたというのかね」
「ドイツが好きな軍人が多いのです。影響は大きいでしょう」
「ドイツ軍がね。負けたのに?」
「それでも戦術や兵器には見るべき物が有ります。ソ連を仮想的としているところも共感を持つのでしょう」
「それで、独ソ不可侵条約の締結と…なんだ。あのあれだ。ヒトラーのどうしようもない本で差別されるのがわかったらしいな。これもイギリスの手引きかな」
「可能性はあります」
「とにかく、その2点でドイツを公然と褒めそやせなくなったようです」
「コミンテルンは、サボタージュと諜報か」
「そうです。軍や政府高官にも食いついていました。それで気になって調べたところ、我が政府内部にもコミンテルンやドイツの手が入っていることが判明しました。いかがいたしましょうか」
「我が国でもか」
「そうです」
「許せんな」
「掃除しますか」
「驚異の芽は摘み取っておこう」
赤狩りが始まった。ついでに隠れるようにドイツ工作員と協力者も狩られた。
鉄の男と3選を目指した男、イメージ的にはこうです。