新兵器現る
ポーランド・ポールを上げましたが、架空戦記創作大会のお題を勘違いしていたために訂正加筆しています。
架空戦記創作大会2022秋に改めて参加。
時折思い出したように誤字訂正をしています。
その騎士の目は、愛する祖国に侵攻してくるハーケンクロイツを見据えている。
許せん。今すぐ突進したい。だが、あまりにも多勢に無勢だ。その内、我らポーランド騎士団の力を見せてやる。タンネンベルクは再現されるのだ。
ポーランド軍の編成表に騎士団は存在しない。陸軍騎馬部隊で存続していた。だが、彼の精神は騎士で有った。
彼は馬首を東へと向け走り出す。悔しさを胸に秘めながら。
かつて、ポーランドはヨーロッパ中央に覇を称える国でもあった。時代の流れに移ろい、強力な国家とは言えない立場になっていた。今では、何考えているのか分からない西と機会を狙っている強欲な東に挟まれ苦しい立場だ。
そんな中、軍の技術研究所で、ある理論に基づいた新兵器が完成した。モンロー/ノイマン効果を利用した兵器である。
個人が携行可能で、装甲車両が撃破出来る兵器。しかも、安価で有る。
問題は個人で携行可能と言っても、弾薬込みで14kgは重い。砲手と弾薬手が必要だった。しかも射程が100メートル無い。
当初ロケット弾で射程200メートルとする予定が、上手くいかず半無反動砲みたいな作動になっている。ロケットモーターは発射筒内で燃え尽きるが推力が足りず、若干の装薬で推進力の後押しをする。射手の保護を考えすぎて、ロケットモーターの燃焼時間を短くしたからだった。
発射ブラストや後方に飛散するカウンターマスで後方10メートル以内は生命に関わる危険範囲だ。安全距離は20メートル以上とされていた。
発射される弾頭の直径は10センチで設計上では70ミリの装甲を抜くことが出来る。テスト時も垂直70ミリの装甲板を貫通出来た。着弾時、穿孔と同時に撒き散らされる衝撃波や高速で撒き散らされる装甲板の破片が内部の人員を傷つける効果も期待出来た。
欠点も有る。
浅い角度で命中すると、ほぼ威力が無い。
これは、当時の戦車の装甲は角度が立っており、上面にでも命中しない限り問題無いとされた。薄い装甲しか持たない装甲車なら、何処でも致命傷になると思われた。
ロケットの発射煙とカウンターマスの水蒸気が盛大に発生。位置がすぐに分かる。
すぐに逃げろと言うしかない。
だが、侵攻に間に合ったのは200基だった。弾頭に至っては2000個しかない。そこで、歩兵部隊に100基、騎馬部隊に100基配備された。
開戦後に製造された数は、発射機50基。弾頭600個だった。
弾頭が少なく訓練未了のまま運用が開始される。歩兵部隊は待ち伏せで、騎馬部隊は待ち伏せと奇襲で運用した。
この兵器は、ドイツとソ連の装甲車両合わせて500両以上を撃破。
撃破された戦車の中には、虎の子である3号戦車や4号戦車もかなり有った。
ポーランド軍の奮闘の中で、騎兵の突進からの行進射は、名人芸と言える乗馬技術と相まって威力を発揮した。特に赤い軍服を着た騎兵は「赤い悪夢」と呼ばれた。
この時に持っている発射筒がポールに見え「ポーランド・ポール」と言われるようになった。
しかし、彼らが如何に奮闘しようとも圧倒的な兵力差と東西からの同時侵攻にポーランドは滅びた。
この兵器のコピー品や改良型が、後の世界大戦で参加国ほとんどが使うという事態になった。
参考にした兵器も多数登場した。
赤い軍服は、正規の軍服では無く自前。軍規違反であるが、見逃された形。彼の名前はアントニ・カノー中尉。
「今に見ておれ」と言葉を残し、対独ソ抵抗活動を行うため地下に潜った。地下に潜った仲間は多い。
通称、ポーランド・ポール
制式名称は無い。試作兵器であり、開発番号しかなかった。
開発番号 atr013 が、この兵器の名前だった。