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ピーターパンは帰れない  作者: 師走こなゆき
1.華のないルーチンワークのように毎日は過ぎる。
2/18

1-P.2

 セミの声が、うるさいくらいに響いている。


 放課後は家に帰らずに塾へ向かう。


 途中、コンビニで、調理パンをひとつ買い、その場で食べて、腹が減っては戦はできぬ。そんな状態を回避する。といっても、それから行くのは塾であって戦場ではない。


 まあ、受験生にとっての戦場といえば戦場なんだけど、直接的な命の奪い合いのない、健全的? な戦争だ。


 塾の教室に着くと、いつも通りの、できるだけ後ろの、かつ先生に目をつけられない程度に前の席へと向かう。


 講義が始まると、周りの人たちが真面目にやっているように見えるので、真面目なふりをする。というより、その雰囲気に流されて、流される。


 講義が終わると、塾にある自習室には立ち寄らず、家へと少し早足で向かう。どうにもその教室内に充満する、勉強をしなくてはいけないという空気が、わたしは息苦しくて、嫌いだった。


 塾に行かない。という手段もあるのだが、塾の熱心な講師の告げ口によってお母さんに説教されてからは出来なくなってしまった。


 すっかり日の落ちた夜の道は、暑さもだいぶおさまって、息苦しさもないから気持ちが良い。


 踊りたいくらいの気持ちを抑えながら、鼻唄混じりにスキップで家に向かう。途中、知らない人と目が合ってしまい、すごく恥ずかしかった。


 家に着くと、また息苦しい。


 夜は両親と会話することもなく、すぐに自分の部屋にこもる。毎日言われている、父親の「勉強しろ」という厳しい言葉を、母親の「勉強しなさい」という形だけの言葉を聞くのが、どうしようもなく嫌だからだ。そんなつまらない発言を繰り返されるくらいなら、話さない方がましだ。


 その後は、お風呂に入って寝るだけ。そしたら、また気だるく、朝がきて、制服を着て、退屈な一日が始まる。


 こうやって、わたしは毎日を繰り返している。


 作業と呼んでも過言ではない日々。それでも、子どもは自由だと言われ続ける。


 親に縛り付けられて、操り人形のように動かされるわたしの子ども時代。自由に何でもできるように見えるけど、大人が何もさせてくれない。それが子どもの自由。


こんなことを考えながら、華のないルーチンワークのように毎日は過ぎる。


ああ、つまんないなあ……。

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