98.お願いしちゃお
「依頼、って?」
この面倒くさ作業を代わって貰えるかも、と言うことならスピカちゃんにしっかり聞いちゃうよ。
「最近の依頼状況がどうなっているのかは知りませんが、ベガさまは護衛や素材集めをクランに依頼として出していたようです。
というか、それは既にアカリさまもしていますよね?」
「たしかに。ねーむちゃんと会う時には護衛して貰ったし、空間を広げるための素材集めもお願いしたね」
「そういう風に、やってくれませんか? とお願いすれば良いのでは?
特に、ミンタカさまやアルニラムさまなどの生産に興味のある方は積極的にしてくれそうですが」
「そうだね! 誰に連絡しようかな……。
ベテルギウスでも良いけど、カストルさんに一旦言っておこうか」
いつものごとく、適当メッセージを打ったら。
「やってくれるってさ。でも、ベテルギウスからはやり方が良く分からないから教えに来て欲しい、って言われた。
それくらいならお易い御用だし、今から行こっか?」
「そうですね。メッセージで伝えようと頑張るよりも、直接行った方が確実でしょう。
この世の誰もしたことのないことを頼むのですから」
ついこの前も来た、夕嵐の双翼クランホームのキッチンで、ベテルギウスに切り方を教えることになった。
「やほー、あーちゃん。また何か面白いこと考えたんだって?」
相変わらずの軽ーい挨拶に、こちらも軽ーく返す。
「やほー。ちょっとお願いしたいことがあってねぇ〜」
やって見せた方が早いからさっさと作業を始める。
包丁とまな板は料理スキルが上がってかなりレア度の高いアイテムを扱う時にしか使わないツールだから、ここには置いてなかった。
包丁まな板のセットをマーケットで買って、ついでにアパー草も買う。
やって見せたんだけどベテルギウスは微妙な顔つきだった。
「うーん、なるほどね。あーちゃんがして欲しいことは分かったけど、出来る奴が居るかなぁ。
ミンタカ達には麻婆豆腐を作って貰いたいからこれもやらせる訳にはいかないし……」
「難しいかな?」
「スキル無しで、同じ大きさにするのが難しいね」
そう言うベテルギウスにやって貰ったら、小学生のお手伝いでももうちょいマシ、というくらいバラバラな大きさ。
「うーん、目安があれば切りやすいかな……?」
昔見たことがある、子どものお手伝い用まな板を思い出した。
それにはまな板の上に定規のような目盛りが付いていて、それの通りに切れば大きさが揃う、というもの。
ペンでまな板に目盛りを書いてからやって貰うと、さっきはバラバラすぎだったけど、今度はまあまあ揃った。
「あーちゃんはこうやって、スキル以外の部分も工夫してるんだね。本当にすごいと思うよ。
これなら他のメンバーにも頼めるんじゃないかな」
ちょっとした工夫で解決したようなので、あとはベテルギウスにお任せすることにした。
本日、新作短編「コンプレックスを愛で溶かしてくれたひと。」を投稿致しました。ぜひお読みいただけますようお願い致します。