74.人任せ
「それで、本題なんだけど」
土竜の印象強すぎて忘れるところだつたよ。
「なんだ?」
「新しい仲間が増えたんだ。えーっと、どこ行ったかな……?」
当たりを見回すと、木の隙間からちらちらと影が見える。
「あ、いたいた!
ねーむちゃんー? ちょっとこっちおいで〜」
名前を呼ばれたのが分かったかのように、とてとてと近づいてくる。かわいい。
「こちら、《綿羊》のねーむちゃん。
今日から森の中をうろうろすると思うけどよろしく。
もし何かあったらすぐに対応するから言ってね」
「畑を荒らさなければ、それで良い」
「ありがとう。この子は★★のほうれん草が好きだから、たくさん作ってくれると嬉しいな」
「保管庫へ入ってるが、足りないか?」
種を渡したのは昨日なのに、もう大量に出来ているらしい。
アルマクさんの仕事の速さはやっぱりすごい。
チラッと見に行ったら、大量の野菜が増えていた。
朝にはあんなにたくさん無かったのに。
「あの、アルマクさん、あれくらいあったらもう当分は貰わなくても大丈夫だよ。ありがとう」
「ここには、魔物がいない。種を蒔けば、全てが収穫できる。良いことだ」
ふふふ〜ん、と調子外れな鼻歌を歌いながら、畑仕事に戻るアルマクさんの機嫌が良さそうでなによりだと思う。
その後、土妖精のみんなに好きな料理は何か聞いたら、みんな結構バラバラだった。
じゃがいも好きは共通だから好きな料理も似るかと思ってたけどそうじゃなかったのが意外だったかな。
空いた時間で料理を作ろうと冷蔵庫を開けて、ちょっとした絶望に見舞われた。
うずたかく積まれた野菜の山。
ベガさんは外を広げなかった分、家の中の収納空間を広くしたようで、場所にはまだまだ余裕がある。
けれど、ねーむちゃんの分を取り置いても、食べ物が大量にあるのは間違いないし、毎日増えるのも確実だ。
早急に、消費する方法を考えないといけないとは思うけど、私はこの世界の常識に疎すぎるんだよ。
★★アイテムは貴重だけど、それを料理に活用できる人は少ないらしいし。
とか言ってるうちにどんどん増えていくし。
アルマクさんは、作る量を減らしてくれそうにないし。
まとめて作れるとはいえ、全部使うほどの回数はさすがに料理したくないし。
……あれ、私がわざわざ作らなくっても、誰かに作り方を教えて、素材も渡して、代わりに作ってもらえば良いんじゃないの?
例えば、《夕嵐の双翼》は、あんなに欲しがってるんだから、自分たちで作って貰えば良いんだよね!
パーティーに行った時も、確かそんな話をしたような気がするし!
「スピカちゃん、かくかくしかじかで麻婆豆腐とかは自分で作って貰おうと思うんだけど、どうかな?」
「良いのではないでしょうか?
ただ、ここに招くのはいかがかと思いますので場所を提供してもらう方が良いかと」
「それくらい、どうにかしてくれるでしょ!」
そうと決まれば早速カストルさんに連絡してみようっと。