73.お名前
それから王都までカストルさんに送って貰って、ひつじちゃんと一緒に家に帰ってきた。
ワープの途中で羊ちゃんが弾かれそうになって、慌てて登録する羽目になったけど、魔物も入って来れないって分かったから結果オーライ。
「それじゃあまずは、お名前を決めないとだね!」
リビングのソファに座ってふあふあの毛皮をなでなでしてるとそれだけで眠たくなっちゃうほど気持ちいい。
「ねーむちゃん、とかどうかな?
眠れないときは羊を数えたりもするし、なにより可愛いし!」
「良いのではありませんか?」
スピカちゃんも賛成してくれてるし、お名前は「ねーむちゃん」に決定。
住処はどこにしようかな、と考えていたら勝手に外へ出て家と庭を取り囲む森の中へ入っていった。
「ねぇねぇ、スピカちゃん。
この森ってどこまで続いてるの?」
「見かけではずっと続いているように見えますが、実際に立ち入れるのは森の淵から30mほどだけです」
「30mもあるのなら、ねーむちゃんひとりくらい入っても全然大丈夫だね」
「ベガさまはあまり外へ出る方では無かったので狭いですが、素材さえあればいくらでも広げることができますよ」
「そうなんだ!
アルマクさんたちにも聞いて、要る分は広げてみようかな」
「ああ、言い忘れていましたが、錬成スキルで制作しますので、まだレベルが足りませんね」
「あらら、そうなの。
じゃあ近いうちに、錬成のレベル上げもしないとねぇ……」
やることいっぱいで大変だし先は長いけど、焦らずぼちぼち頑張ろう。
「そうだ、外に居るならアルマクさんにも言っとかないと」
いつものように庭に出ると、でっかい竜がいた。
西洋系の、ドラゴン。
……なんで?
「ん? もぐら、連れてきた。
良い土に、なる。いつか。」
「土竜……?」
確かに許可は出したけど、知らないうちに凶暴そうな見た目の隣人が増えてるのはだいぶ怖いよ?
しかし、最初こそ驚いたものの、眺めてると何とものんびりした性格のようで、草食動物のようにもしゃもしゃと土を食んでいる。
「こいつ、土、食う。その土、良くなる」
「えーっと……まあいいや。
もぐらさんとも仲良くしたいし、好きなものとか欲しいものあったらどんどん言ってね」
私の予想とはかけ離れていたけど、とりあえず困ったことにはなりそうにないから良しとしよう。
お野菜が美味しくなったりレア度上がったりしたらお得だしね。