72.情報の価値
「お前は、自分の価値を分かって無さすぎるぞ!
魔物を攻撃することなく手なずけて、さらに言うことを聞かせられるなど、今まで聞いた事がない!
色々な条件はあるかもしれないが、一度の成功例があるということがどれだけ大切なことか!」
またカストルさんが熱血モードでお説教してくれるけど、私には全く実感がないんだよね。
だって、かわいい動物と仲良くしたいのは普通じゃない?
仲良くなろうと思ったら、エサをあげるのって一番最初に思いつくよね?
そうでも無いのかな?
「うーん……要するに、カストルさんもひつじちゃんと仲良くなりたいってことですよね?
それなら、なんとなくのやり方は分かったでしょうし、自分たちでしたらいいんじゃないですか?」
「魔物を手に入れたいが方法を見つけたのはお前だろう、だから情報料を払うと言っているんだ」
「別にお金とか要らないんですけど……」
「そういう訳にはいかない。
これでも俺らは大手ギルドだからな」
「どうしてもと言うなら、また他の魔物に会いに連れて行ってくれる、ということでどうですか?」
「どう考えても安すぎるだろう!
この辺りなんか、子どもでも来れるような所だぞ。護衛料としても絶対に釣り合わない」
「そうかなぁ……? じゃあ、カストルさんたちが《綿羊》を捕まえた後でわかったことを色々教えてね、ってことでどうですか?」
「情報交換ってことか……俺らが価値のある情報を手に入れられるかどうか分からんが、それでも良いのか?」
「もちろんです!
私一人で出来ることには限界がありますからね。
《夕嵐の双翼》にはたくさんの人が居ますから、ぜひひつじちゃんたちを可愛がってあげて欲しいです」
そしてあわよくば、《夕嵐の双翼》のギルド内をもふもふパラダイスにして、そこに遊びに行けたらもっと良いよね!
そのついでに面白い情報も貰えたらラッキーだし。
「これで契約成立にするか。
この情報はギルド内でも極秘扱いにするから安心してくれ。
何なら誓約スキルを使っても良い」
「誓約スキルって何ですか?」
「その契約を絶対に違えることが出来ないように神の力で縛ることだ」
「そんなことしなくても大丈夫ですよ。
それに、カストルさんが良いと思う人には教えてもらってもいいですし。
動物虐待とかするような人は困りますけど、良い情報なんだったら知ってる人が多い方が良いですよね?」
「……お前は本当に欲がないというか……
情報料を取れば、それだけでもひと財産だぞ?」
「今のところ、皆さんが麻婆豆腐を買ってくれてるのであんまりお金には困ってないんですよね。
それよりも、皆がかわいい羊ちゃんと暮らせる方が良いと思いますよ?」
「お前がそれで良いならいいが……」
カストルさんは呆れ返った苦笑いだけど、そんなに変なこと言ってるかなあ?
他の人も信じられないって感じだし、価値観が違うのかも。
「それじゃあ、私は一旦ひつじちゃんを連れて帰りますね!」
「俺が王都まで送って行こう。
あとのメンバーはこのままここで調査を続けて欲しい」
「それなら、ほうれん草渡しといた方が良いですね、これは★と★★、それ以外の野菜も要るかもしれないのでそれぞれのレア度のやつをお渡しします」
「いや、★★素材をタダで貰うのはちょっと……」
「タダじゃないですよ!
これが無かったら検証出来ないじゃないですか。
だから、情報を貰うための投資です」
「それなら、有難く貰ってとくな」
「いえいえ、こちらこそ新しい情報待ってますからね。
何かあったらまた連絡してください〜」