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63.(閑話)フリルエプロンの行方

 



「なんだこれは!? おい! すげぇぞ!」



 戦闘クラン『夕嵐の双翼』の執務室に、カストルの怒号にも似た大声が轟いた。



「どうしたんだ?」


 ポルックスも興味津々の様子だ。



「アカリさんからアイテム付きメッセージが来たから何かと思って開けたら、《コットンフリルエプロン》とかいう知らないアイテムが付いてたんだ。

 それがなんと★★★★だぞ!?

 信じられるか!?」



「★★★★アイテムだと? 一体幾らで買ったんだよ」



「いや、買ってねぇよ! えーと、本文には……『集中っていう新効果が付いたので、効果内容を調べて欲しいです。分かったら教えてくださいね』だとよ。

『集中』って何だ?」



「とりあえずアイテムを開けてくれよ」



「いや、ちょっと待て! 10個も付いてるぞ!?」



「……アカリさんのことを理解しようというのはやめよう。あの方は『英雄』だからな」



 使い切りでもない★★★★アイテムが10個も並ぶという、まともに生きていたら絶対に起こらない状況を見せつけられて、ポルックスは諦めたようにそう呟いた。



「とにかく、俺たちにするべきことは効果の確認だ」


 さすがは王国最大手の戦闘クランだけあって、そこからのアクションは速かった。


 迷宮(ダンジョン)に挑んでいる高レベルパーティーの中でも検証などの細かい分析が得意なメンバーを選びだし、ポジションや職業に偏りが出ないように振り分ける。



 送られてきた側は、今まで見たこともない★★★★アイテムに恐れおののきながらも装備して、その効果の素晴らしさを実感した。



「何だよ、この『集中』って効果は!

 クリティカルがめちゃくちゃ出るぞ!」


 剣士はそう叫んだ。

 いつもなら一日中戦って一度出るかどうか、というクリティカル判定が、これを装備するだけで一時間に一度ほど出るようになった。



「サブマス! あの《コットンフリルエプロン》っていうアイテムは一体何なんだ!?

 恐ろしいほど攻撃がよく当たるぞ!」



 いつもより早く帰還したパーティーのメンバーは口々に《コットンフリルエプロン》を絶賛した。



「さすがは★★★★アイテムだ! クリティカルを喰らわないだけで、被ダメージはとても少なくて済んだ!」



「俺の弓スキルはかなりレベルが上がっているが、それでも命中率は7割ってとこだ。

 それなのに、これを装備したただけでほとんど100%当たるようになったぞ!」



 カストルはメンバーの言うことを全て書きとってからアイテムを回収し、次に分析班に渡した。


 彼らは高難度迷宮(ダンジョン)を攻略する時などにどうすればより大きなダメージを与えられるかを研究するグループで、細かい数値などを割り出すことができる。


 アイテムの効果を調べたりといったことも得意な彼らは、見たこともない★★★★アイテムを研究できるとあって、嬉々として仕事に取り組んだようで、カストルが予想していたよりもずっと早くデータを上げてきた。



「この程度のデータでは全く釣り合っていないが、一旦これを渡しておこうか」



 有用すぎるアイテムをほとんど無料(タダ)で貰ったカストルは、大変ありがたいと思うと同時にどう恩を返して行こうかと考え始めた。



 しかし、アイテム自体を返すという選択肢は無い。

 こんなにも有用なアイテムを手放すことなど絶対に出来ないからだ。






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