55.昔話
むかーし昔。
この世界は、神様が作った楽園でした。
いつでも望めば望んだものがすぐに現れるので、食べ物や衣服には全く困らず、人々は穏やかにいきていました。
時々は神様もやって来て一緒に遊ぶので、みんなが楽しく過ごせる天国のような場所だったのです。
しかし、そんな幸せな日々は長くは続きませんでした。
この世界を守っている神様の元へ、悪い魔王がやって来て、神様の力を吸い取ってしまったのです。
その上、神様の楽園に自分の手下を放って悪さをさせるようになりました。
もちろん神様は対抗しようと必死になりましたが、魔王を追い出すことは出来ません。
それに困ったのは楽園に住んでいた人々です。
これまでは望むだけで手に入っていた食べ物を、自分で手に入れなければならなくなったのですから。
その上、今まで居なかった魔物に襲われるようになってしまいました。
魔物とは、悪魔の力を使って人間たちに襲いかかってくる獣のことです。
あるモノは炎を吐き、あるモノは地割れを起こし、普通に生きる生き物には不可能な能力で攻撃してきます。
非力な人間では到底太刀打ち出来ず、襲われれば逃げ惑うしかできませんでした。
しかし、神様はそんな人々を助けて自分の世界を守るために、人間にも強い力を渡してくれました。
それは『スキル』です。
魔物と戦う人、物を創り出す人。
それぞれに必要な力をスキルとして与えてくれました。
剣を持つ者には攻撃の力を。
盾を持つ者には防御の力を。
弓を持つ者には命中の力を。
戦う者たちは強い力を得て上手く使いこなし、人々は自分の身を守れるようになりました。
そして、生きるのに必要な物を作る人には、
『一瞬で物を作れる力』を授けました。
しかし、人々は生産の力を上手く使うことが出来ませんでした。
それもそうです。
今までは完成したものが現れるだけだったので、何かほしいと思ってもどうやって作れば良いのか、神様は教えてくれなかったからです。
どうすれば良いのか全く分からず、途方に暮れました。
せっかくの力を使えずに悩む人々を見かねて、この世界を見守るケサランパサランはアドバイスを贈りました。
『2つの素材を同じ量』
と。
ケサランパサランはただ見守る存在。
人々に声を届けることなど本来は出来ないのですが、力を振り絞って教えくれたのです。
それから、生産を行う人たちは頑張りました。
《ゴミ》にならない組み合わせを探し、やっとスキルを使いこなせるようになったのです。
こうして、神様に『スキル』の力を貰った人間たちは魔物に対抗できるようになったのです。
おしまい。